既にした執行処分の取消し等により強制執行が目的を達せずに終了した場合における執行費用の負担は,執行裁判所が,民事執行法20条において準用する民訴法73条の規定に基づいて定めるべきである。
既にした執行処分の取消し等により強制執行が目的を達せずに終了した場合における執行費用の負担
民事執行法20条,民事執行法42条1項,民訴法62条,民訴法73条
判旨
強制執行が目的を達せずに終了した場合の執行費用負担は、民事執行法42条1項の適用はなく、同法20条が準用する民事訴訟法73条の規定に基づき、終了の事情を考慮して決定すべきである。
問題の所在(論点)
執行処分の取消し等により強制執行が目的を達せずに終了した場合の執行費用の負担について、民事執行法42条1項の「特別の定め」があるといえるか、あるいは民事訴訟法の規定が準用されるかが問題となる。
規範
民事執行法42条1項は強制執行が目的を達して終了した場合の費用負担を定めたものであり、目的を達せずに終了した場合の「特別の定め」ではない。したがって、執行処分の取消し等により強制執行が目的を達せずに終了した際の費用負担は、同法20条を介して民事訴訟法73条を準用し、同法62条等の規定に基づき、執行裁判所が当該強制執行が終了するに至った事情を考慮して定めるべきである。
重要事実
債権者(相手方)の申立てにより不動産強制競売が開始されたが、開始決定後に債務者(抗告人)が弁済供託を行った。これにより、債務者が提起した請求異議の訴えにおいて請求を認容する判決が確定し、同判決の正本が提出されたことで執行処分が取り消され、強制執行は目的を達せず終了した。債権者は、執行費用の負担を求める申立てを行った。
事件番号: 平成19(許)7 / 裁判年月日: 平成19年12月4日 / 結論: 棄却
民事訴訟において,訴訟上の救助の決定を受けた者の全部敗訴が確定し,かつ,その者に訴訟費用を全部負担させる旨の裁判が確定した場合には,同決定は当然にその効力を失い,裁判所は,同決定を民訴法84条の規定に従って取り消すことなく,同決定を受けた者に対し,猶予した費用の支払を命ずることができる。
あてはめ
本件では、強制競売の手続は請求異議の訴えの認容判決により取り消されたが、その実質的理由は開始決定後の弁済供託による請求債権の消滅である。このように債務者側の事由で執行が終了した事情を考慮すれば、民訴法73条2項・62条に基づき、当該執行費用を債務者の負担とすることは衡平の見地から相当といえる。
結論
強制執行が目的を達せずに終了した場合の費用負担は、民訴法73条の規定に基づき執行裁判所が諸般の事情を考慮して決定できる。本件の事情下では抗告人の負担とする判断は適法である。
実務上の射程
執行費用について民執法42条1項が適用されるのは「目的を達して終了した」場合に限られることを明示した。答案上では、請求異議や執行抗告等により執行が取り消された場合の費用負担の根拠条文として、民執法20条・民訴法73条を指摘する際に活用する。
事件番号: 平成28(許)46 / 裁判年月日: 平成29年10月10日 / 結論: 破棄自判
債権差押命令の申立書に請求債権中の遅延損害金につき申立日までの確定金額を記載させる執行裁判所の取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者が当該債権差押命令に基づく差押債権の取立てとして第三債務者から金員の支払を受けた場合,申立日の翌日以降の遅延損害金も上記金員の充当の対象となる。
事件番号: 平成29(行フ)3 / 裁判年月日: 平成29年12月19日 / 結論: 破棄自判
村議会の議員である者につき地方自治法92条の2の規定に該当する旨の決定がされ,その補欠選挙が行われた場合において,同選挙は上記決定の効力が停止された後に行われたものであったが,同選挙及び当選の効力に関し公職選挙法所定の期間内に異議の申出がされなかったという事実関係の下では,上記の者は,上記決定の取消判決を得ても,上記議…
事件番号: 昭和56(す)63 / 裁判年月日: 昭和56年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法501条に基づく刑の執行に関する異議の申立ては、刑の言渡しをした確定裁判を対象とすべきであり、抗告棄却決定に対しては許されない。 第1 事案の概要:申立人が、抗告棄却決定を対象として刑訴法501条に基づく申立てを行った事案。 第2 問題の所在(論点):刑訴法501条に基づき、検察官の執行…
事件番号: 平成28(許)40 / 裁判年月日: 平成29年9月5日 / 結論: 破棄差戻
訴訟費用のうち一定割合を受救助者(訴訟上の救助の決定を受けた者)の負担とし,その余を相手方当事者の負担とする旨の裁判が確定した後,訴訟費用の負担の額を定める処分を求める申立てがされる前に,裁判所が受救助者に猶予した費用につき当該相手方当事者に対して民訴法85条前段の費用の取立てをすることができる額を定める場合において,…