反則行為に当たる通行禁止場所通行を犯した被告人に対し運転免許が失効しているものと誤認してされた略式命令に対する非常上告
刑訴法338条4号,刑訴法458条1号
判旨
道路交通法上の「反則者」に該当する場合、反則金納付の通告手続を経ないまま公訴を提起することは公訴提起の手続が規定に違反した(刑訴法338条4号)ものとして、公訴棄却の対象となる。
問題の所在(論点)
道交法上の「反則者」に該当する者に対し、法定の反則金納付手続を経ずに公訴を提起した場合の適法性と、運転免許の有効期間に関する算定が問題となった。
規範
道路交通法上の「反則行為」に該当する罪を犯した者が「反則者」に当たる場合、道交法130条に基づき、同法127条の通告及び128条1項の納付期間の経過を経なければ、当該行為について公訴を提起することはできない。これに反した公訴提起は、刑事訴訟法338条4号の「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」に該当し、公訴棄却の判決をすべきである。
重要事実
被告人は平成28年3月14日、通行禁止道路を過失により原付自転車で通行した。検察事務官は、同年3月12日に被告人の運転免許証の有効期間が経過していたと判断し、被告人が道交法125条2項1号により「反則者」に当たらない(無免許の状態)として、反則金納付の手続を経ずに略式命令を請求した。しかし、有効期間の末日である3月12日は土曜日であったため、道交法施行令33条の8第1号により、週明けの同月14日が有効期間の末日とみなされていた。
あてはめ
被告人が道路を通行した平成28年3月14日は、免許証の有効期間の末日(3月12日)が土曜日であることに伴う特例により、依然として免許の有効期間内であった。したがって、被告人は道交法125条2項1号の除外事由(無免許等)に該当せず、同条1項の「反則者」に当たる。それにもかかわらず、道交法130条が定める通告・納付期間の経過という必要な処理手続を経ることなくなされた本件公訴提起は、その手続規定に違反し無効であるといえる。
事件番号: 昭和56(さ)4 / 裁判年月日: 昭和57年9月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】交通反則者に対し、反則金の納付通告等を経ることなく提起された公訴は、公訴提起の手続が規定に違反したため無効であるとして、刑訴法338条4号に基づき棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度を17キロメートル超過して普通乗用自動車を運転した。当初、交通事件原票の誤記により、被告人に…
結論
本件公訴提起は刑訴法338条4号に該当し無効である。よって、原略式命令を破棄し、公訴棄却の判決をすべきである。
実務上の射程
反則手続(交通反則通告制度)の履践が、反則者に対する公訴提起の「訴訟条件」であることを明示したものである。答案上は、公訴提起の有効性を論ずる際の前提として、特例法(道交法)による訴追制限の有無を判断する材料となる。
事件番号: 平成22(さ)7 / 裁判年月日: 平成22年3月29日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の反則行為に該当する事実について、反則金納付等の通告手続を経ないまま提起された公訴は、受理の条件を欠くものとして刑訴法338条4号により棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度を30km/h超える速度で普通乗用自動車を運転した。本件違反場所は自動車専用道路の指定…
事件番号: 昭和58(さ)2 / 裁判年月日: 昭和58年11月1日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告制度の対象となる「反則者」に対し、通告手続を経ずに公訴が提起された場合、その公訴提起の手続は法律の規定に違反するため、刑訴法338条4号により公訴を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は道路標識による最高速度を14キロメートル超過して走行した。この行為は道交法125条1項の「反…
事件番号: 令和5(さ)24 / 裁判年月日: 令和6年3月7日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の反則行為に該当する事実について、通告及び納付期間の経過という同法130条所定の手続を経ずに公訴を提起することは、刑事訴訟法338条4号の公訴提起の手続が規定に違反したときに該当し、公訴棄却の対象となる。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度50km/hの道路を34km/h超過の8…
事件番号: 平成22(さ)243 / 裁判年月日: 平成22年7月22日 / 結論: 破棄自判
被告人が原略式命令確定後に本邦を出国し非常上告申立て時において再入国していない場合においても,検事総長は最高裁判所に非常上告をすることができる。