反則行為にあたる速度違反を犯した被告人に過去一年以内の行政処分が存在するものと誤認して罰金刑を科した略式命令に対する非常上告が認容された事例
刑訴法454条,刑訴法458条,刑訴法460条
判旨
交通反則通告制度の対象となる「反則者」に対し、通告手続を経ずに公訴が提起された場合、その公訴提起の手続は法律の規定に違反するため、刑訴法338条4号により公訴を棄却すべきである。
問題の所在(論点)
道交法上の「反則者」に対し、行政処分歴の誤認により通告手続を経ずに公訴を提起した場合、当該公訴提起の効力はどうなるか。また、それに基づき発付された略式命令は有効か。
規範
道路交通法上の「反則者」に該当する者に対しては、同法130条、127条1項、128条1項に基づき、警察本部長が反則金の納付を通告し、かつ、所定の納付期間が経過した後でなければ、公訴を提起することができない。この適法な通告・納付期間の経過は、反則事件における公訴提起の「有効要件」であり、これを欠く公訴提起は無効となる。
重要事実
被告人は道路標識による最高速度を14キロメートル超過して走行した。この行為は道交法125条1項の「反則行為」に該当する。当初、警察は免許証の記載に基づき、被告人に過去1年以内の行政処分歴がある(道交法125条2項の除外事由に該当する)と判断し、反則通告手続を経ずに公訴を提起した。しかし、実際には免許証の記載は誤記であり、被告人は除外事由のない「反則者」に該当することが事後的に判明した。本件では通告手続が行われないまま略式命令が発付され、確定していた。
あてはめ
被告人の速度違反は「反則行為」であり、かつ行政処分歴の誤認(昭和56年とあるが実際は昭和55年)を是正すれば、道交法125条2項各号の除外事由には該当しない。したがって、被告人は同法にいう「反則者」にあたる。この場合、道交法130条等の規定に基づき、警察本部長による通告および納付期間の経過がなければ公訴提起は許されない。本件公訴は、この前提手続を欠いた状態でなされたものであり、刑訴法338条4号にいう「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」に該当する。それにもかかわらず、裁判所が有罪として略式命令を発付したことは、明らかな法令違反であるといえる。
事件番号: 昭和56(さ)4 / 裁判年月日: 昭和57年9月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】交通反則者に対し、反則金の納付通告等を経ることなく提起された公訴は、公訴提起の手続が規定に違反したため無効であるとして、刑訴法338条4号に基づき棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度を17キロメートル超過して普通乗用自動車を運転した。当初、交通事件原票の誤記により、被告人に…
結論
本件公訴提起は無効であり、刑訴法338条4号に基づき公訴を棄却すべきである。すでに確定した略式命令については、非常上告に基づき破棄されるべきである。
実務上の射程
交通反則通告制度(青切符制度)の適用対象者に対して通告手続を履践することは、刑事訴追の適法性を担保する必須の要件である。たとえ捜査段階の事実誤認があったとしても、客観的に反則者に該当する以上、手続欠缺は公訴棄却事由となる。司法試験上は、公訴提起の有効要件や訴訟条件の論点として引用可能である。
事件番号: 昭和62(さ)3 / 裁判年月日: 昭和63年4月1日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告制度の対象となる「反則者」に対し、通告手続を経ずに公訴を提起することは公訴提起の手続が規定に違反するため、裁判所は刑訴法338条4号により公訴棄却の判決をすべきである。 第1 事案の概要:被告人は最高速度を15キロメートル超える速度で大型貨物自動車を運転した。交通事件原票には、過去1年…
事件番号: 昭和60(さ)4 / 裁判年月日: 昭和61年5月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の「反則者」に該当する者に対し、交通反則告知・通告手続を経ることなく公訴を提起することは、公訴提起の手続が規定に違反し無効であるため、刑事訴訟法338条4号により公訴を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は指定最高速度を21キロメートル超過して運転し、道路交通法違反の事実で公訴…
事件番号: 平成28(さ)2 / 裁判年月日: 平成29年4月7日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の「反則者」に該当する場合、反則金納付の通告手続を経ないまま公訴を提起することは公訴提起の手続が規定に違反した(刑訴法338条4号)ものとして、公訴棄却の対象となる。 第1 事案の概要:被告人は平成28年3月14日、通行禁止道路を過失により原付自転車で通行した。検察事務官は、同年3月1…
事件番号: 平成22(さ)7 / 裁判年月日: 平成22年3月29日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の反則行為に該当する事実について、反則金納付等の通告手続を経ないまま提起された公訴は、受理の条件を欠くものとして刑訴法338条4号により棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度を30km/h超える速度で普通乗用自動車を運転した。本件違反場所は自動車専用道路の指定…