被告人が原略式命令確定後に本邦を出国し非常上告申立て時において再入国していない場合においても,検事総長は最高裁判所に非常上告をすることができる。
被告人が原略式命令確定後に本邦を出国し非常上告申立て時において再入国していない場合における非常上告の可否
刑訴法454条
判旨
道路交通法上の反則行為に該当する事件について、反則金納付の通告等の所定の手続を経ずに公訴を提起することは刑事訴訟法338条4号の公訴棄却事由に該当する。また、被告人が出国し再入国していない状況であっても、非常上告の提起は妨げられない。
問題の所在(論点)
道路交通法上の反則行為について、交通反則通告制度の手続を経ずに公訴を提起することの適否、および被告人が出国中の場合における非常上告の可否が問題となる。
規範
道路交通法上の「反則行為」に該当する事件については、同法130条に基づき、同法127条の通告及び128条の納付期間の経過を経なければ公訴を提起することができない。この手続を経ずに提起された公訴は、刑事訴訟法338条4号の「公訴の提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」に該当し、判決で公訴を棄却すべきである。また、非常上告は、被告人が日本国外に居住し再入国の見込みがない場合であっても、法令適用の誤りを是正する制度趣旨に鑑み、その申立てを妨げない。
重要事実
被告人は、指定最高速度を30km/h超過する90km/hで普通乗用車を運転した。これに対し、簡易裁判所は罰金6万円の略式命令を発し、確定した。しかし、本件違反場所は自動車専用道路の指定区間内であり、当該速度超過は道路交通法125条1項の「反則行為」に該当するものであった。検察官は、本来必要とされる反則行為に関する処理手続(通告・納付期間の経過)を経ないまま公訴を提起していた。なお、被告人は略式命令確定後に出国し、非常上告申立て時において再入国していなかった。
事件番号: 平成22(さ)7 / 裁判年月日: 平成22年3月29日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の反則行為に該当する事実について、反則金納付等の通告手続を経ないまま提起された公訴は、受理の条件を欠くものとして刑訴法338条4号により棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度を30km/h超える速度で普通乗用自動車を運転した。本件違反場所は自動車専用道路の指定…
あてはめ
本件被告人の速度超過行為は、自動車専用道路上のものであり、道交法125条1項により反則行為となる。それにもかかわらず、検察官は同法130条が定める通告等の処理手続を一切経ずに公訴を提起した。これは公訴提起の手続的要件を欠くものであり、憲法・刑訴法が保障する適正手続に反する。簡易裁判所がこれを見過ごして有罪の略式命令を発したことは、法令に違反し、被告人に不利益な結果をもたらしたといえる。また、非常上告制度は法令の解釈適用の統一を図る目的を有するため、被告人の所在いかんにかかわらず、法令違反を是正する必要がある。
結論
本件公訴は提起の手続が規定に違反し無効であるため、刑訴法463条1項、338条4号により棄却されるべきである。原略式命令を破棄し、公訴棄却を言い渡す。
実務上の射程
交通反則通告制度の適用対象となる事件において、手続の履践が公訴提起の有効要件であることを明示した。答案上は、公訴提起の適法性(公訴棄却事由)の問題として構成する。また、非常上告の適格性において、被告人の不在が障害とならない点も実務上重要である。
事件番号: 平成22(さ)250 / 裁判年月日: 平成22年7月22日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の反則行為に該当する事実について、通告及び納付期間の経過という適法な手続を経ずに提起された公訴は、追起訴の制限に違反し無効である。 第1 事案の概要:被告人は道路において法定最高速度を37km/h超える速度で普通乗用自動車を運転した。当該場所は自動車専用道路の指定を受けていたため、この…
事件番号: 平成16(さ)2 / 裁判年月日: 平成16年11月2日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告制度の対象となる反則行為について、同制度に基づく所定の通告・納付期間の経過という手続を経ずに提起された公訴は、その提起の手続が規定に違反するため、刑訴法338条4号に基づき棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、最高速度60km/hの道路において93km/hで走行し(33k…
事件番号: 平成25(さ)5 / 裁判年月日: 平成26年4月15日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告制度の対象となる反則行為について、同制度に基づく通告及び納付期間の経過という適法な手続を経ずに提起された公訴は、その手続規定に違反した無効なものとして棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度30km/hの道路を74km/hで走行した(44km/h超過)として略式…
事件番号: 昭和56(さ)4 / 裁判年月日: 昭和57年9月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】交通反則者に対し、反則金の納付通告等を経ることなく提起された公訴は、公訴提起の手続が規定に違反したため無効であるとして、刑訴法338条4号に基づき棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度を17キロメートル超過して普通乗用自動車を運転した。当初、交通事件原票の誤記により、被告人に…