反則行為に当たる速度違反を非反則行為と誤認してされた略式命令に対する非常上告
刑訴法458条1号
判旨
道路交通法上の反則行為に該当する事実について、通告及び納付期間の経過という適法な手続を経ずに提起された公訴は、追起訴の制限に違反し無効である。
問題の所在(論点)
道路交通法上の反則行為に該当する事実について、反則金納付等の手続を経ずに公訴が提起された場合、その公訴提起の効力及び裁判所の措置はどうあるべきか。
規範
道路交通法125条1項に規定される反則行為については、同法130条に基づき、同法127条の通告及び同法128条の納付期間の経過を経た後でなければ公訴を提起することができない。この手続を経ない公訴提起は、刑事訴訟法338条4号の「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」に該当する。
重要事実
被告人は道路において法定最高速度を37km/h超える速度で普通乗用自動車を運転した。当該場所は自動車専用道路の指定を受けていたため、この速度超過は道路交通法125条1項(改正前)の反則行為に該当する事案であった。しかし、検察官事務官は、同法が定める反則行為に関する処理手続を経ないまま略式命令を請求し、簡易裁判所は罰金6万円の略式命令を発付し、確定した。
あてはめ
本件違反場所が自動車専用道路内である以上、被告人の速度超過行為は道路交通法上の「反則行為」に該当する。そのため、適法な公訴提起のためには通告及び納付期間の経過が必要であった。しかるに、これらの手続を一切経由せずに公訴が提起された本件においては、公訴提起の手続は法律の規定に違反して無効といえる。したがって、有罪の略式命令を発付した原審の判断は法令に違反する。
事件番号: 平成22(さ)7 / 裁判年月日: 平成22年3月29日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の反則行為に該当する事実について、反則金納付等の通告手続を経ないまま提起された公訴は、受理の条件を欠くものとして刑訴法338条4号により棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度を30km/h超える速度で普通乗用自動車を運転した。本件違反場所は自動車専用道路の指定…
結論
本件公訴提起は無効であるため、刑事訴訟法338条4号により公訴を棄却すべきである。
実務上の射程
道路交通法上の反則金制度(交通反則通告制度)が公訴提起の前提条件(訴訟条件)であることを確認した事例である。実務上、反則行為に該当するか否かの事実誤認に基づき直接起訴された場合には、公訴棄却判決を求める根拠となる。非常上告の事案であるが、通常第一審の答案作成においても訴訟条件の欠如を論じる際の規範として活用できる。
事件番号: 平成22(さ)243 / 裁判年月日: 平成22年7月22日 / 結論: 破棄自判
被告人が原略式命令確定後に本邦を出国し非常上告申立て時において再入国していない場合においても,検事総長は最高裁判所に非常上告をすることができる。
事件番号: 平成16(さ)2 / 裁判年月日: 平成16年11月2日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告制度の対象となる反則行為について、同制度に基づく所定の通告・納付期間の経過という手続を経ずに提起された公訴は、その提起の手続が規定に違反するため、刑訴法338条4号に基づき棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、最高速度60km/hの道路において93km/hで走行し(33k…
事件番号: 平成13(さ)1 / 裁判年月日: 平成13年12月13日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法違反事件において、当初の認定とは異なり実際の違反速度が法定最高速度の範囲内であり反則行為に該当する場合、通告手続を経ない公訴提起は無効であるため、公訴棄却の判決をすべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度50km/hの道路を85km/h(35km/h超過)で走行したとして、…
事件番号: 平成25(さ)1 / 裁判年月日: 平成25年9月17日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の反則行為に該当する事実について、法が定める通告・納付期間の経過という特例手続を経ずに提起された公訴は、その手続が規定に違反するため刑事訴訟法338条4号により棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度50km/hの道路において時速81km/h(31km/h超過)…