1 商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後においては,当該商標登録が不正競争の目的で受けたものである場合を除き,商標権侵害訴訟の相手方は,その登録商標が同号に該当することによる商標登録の無効理由の存在をもって,同法39条において準用する特許法104条の3第1項の規定に係る抗弁を主張することが許されない。 2 商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後であっても,当該商標登録が不正競争の目的で受けたものであるか否かにかかわらず,商標権侵害訴訟の相手方は,その登録商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして当該商標登録の出願時において需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であるために同号に該当することを理由として,自己に対する商標権の行使が権利の濫用に当たることを抗弁として主張することが許される。
1 商標法4条1項10号該当を理由とする無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後に,商標権侵害訴訟の相手方が,同号該当による無効理由の存在をもって,同法39条において準用する特許法104条の3第1項の規定に係る抗弁を主張することの許否 2 商標法4条1項10号該当を理由とする無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後に,商標権侵害訴訟の相手方が,その登録商標が自己の業務に係る商品等を表示するものとして周知である商標との関係で同号に該当することを理由として,権利濫用の抗弁を主張することの許否
(1,2につき) 商標法4条1項10号,商標法47条1項 (1につき) 商標法39条,特許法104条の3第1項 (2につき) 民法1条3項,商標法25条
判旨
商標法4条1項10号違反の無効理由がある場合、除斥期間経過後であっても、当該周知商標の権利者に対する商標権行使は原則として権利濫用となる。一方、不正競争防止法2条1項1号の「周知性」認定には、販売地域、広告頻度、具体的販売数量等の諸事情を総合的かつ厳格に審理する必要がある。
問題の所在(論点)
①不競法2条1項1号の「周知性」を認定するための審理の程度。②商標法47条1項の除斥期間経過後に、4条1項10号違反を理由とする無効の抗弁(特許法104条の3第1項)を主張できるか。③同期間経過後に、権利濫用の抗弁を主張できるか。
規範
1.不競法2条1項1号の周知性は、商品の内容、取引実情、販売地域、広告宣伝の態様・費用、具体的販売台数等を総合考慮して判断すべきである。2.商標法4条1項10号違反の無効理由について、同法47条1項の除斥期間(5年)経過後は、特許法104条の3第1項による無効の抗弁を主張できない。3.もっとも、周知商標の権利者(4条1項10号の「他人」)に対する商標権行使は、客観的に公正な競争秩序の維持を害するものとして、特段の事情がない限り権利濫用(民法1条3項)となり、これは除斥期間経過後も援用し得る。
事件番号: 昭和56(オ)1166 / 裁判年月日: 昭和59年5月29日 / 結論: 棄却
一 ある商品表示が不正競争防止法一条一項一号にいう他人の商品表示と類似のものにあたるか否かについては、取引の実情のもとにおいて、取引者又は需要者が両表示の外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当である。 二 特定の商品表示又は営…
重要事実
米国法人の日本独占代理店である被上告人は、商標「エマックス」等を用いて電気湯沸器を販売していた。上告人は、被上告人との代理店契約解消前後、被上告人使用商標と類似の商標(本件各登録商標)を登録した。被上告人は上告人に対し不競法に基づく差止等を請求(本訴)し、上告人は商標権に基づき反訴。被上告人は、本件各登録商標には商標法4条1項10号の無効理由があるため、権利行使は許されないと抗弁した。なお、登録の一部については登録から5年を経過していた。
あてはめ
①被上告人の広告は19年間で2回、宣伝費も年額140万円程度であり、日本国内の広範囲な販売地域に照らせば多額とはいえない。具体的販売台数も不明であり、原審が「周知性」を認めたのは審理不十分である。②商標法47条1項の趣旨は登録の有効性を争い得なくする点にあるため、除斥期間経過後は104条の3第1項の抗弁は許されない。③しかし、自ら周知商標を使用する者に対する権利行使を許すことは、公正な競争秩序を害する。権利濫用の抗弁は、登録の有効性自体を争う無効の抗弁とは別個の論理であり、除斥期間経過後も主張可能である。
結論
不競法上の周知性認定、および商標法上の権利濫用該当性の判断において審理不十分な点があるため、原判決を破棄し、更なる審理のため差し戻す。
実務上の射程
商標法47条の除斥期間による「無効の抗弁」の封鎖を、民法上の「権利濫用」で補完する実務上極めて重要な法理を示した。答案上は、周知性のあてはめにおいて数値(広告回数・金額・台数)を厳格に評価する姿勢も参考になる。
事件番号: 昭和54(オ)145 / 裁判年月日: 昭和56年10月13日 / 結論: 棄却
一 不正競争防止法一条一項一号にいう他人の商品との混同の事実が認められる場合には、特段の事情がない限り、右他人は営業上の利益を害されるおそれがある者にあたるというべきである。 二 商標権者が登録商標に類似する標章を使用する行為は、不正競争防止法六条にいう「商標法ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為」に該当しない。
事件番号: 平成20(受)1427 / 裁判年月日: 平成21年10月23日 / 結論: その他
特別養護老人ホームの入所者に対して虐待行為が行われている旨の新聞記事が同施設の職員からの情報提供等を端緒として掲載されたことにつき,同施設を設置経営する法人が,虐待行為につき複数の目撃供述等が存在していたにもかかわらず,虐待行為はなく上記の情報は虚偽であるとして同職員に対し損害賠償請求訴訟を提起した場合であっても,(1…
事件番号: 平成10(受)332 / 裁判年月日: 平成12年9月7日 / 結論: 棄却
印刷用書体が著作権法二条一項一号にいう著作物に該当するためには、従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性及びそれ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えていなければならない。