一 不正競争防止法一条一項一号にいう他人の商品との混同の事実が認められる場合には、特段の事情がない限り、右他人は営業上の利益を害されるおそれがある者にあたるというべきである。 二 商標権者が登録商標に類似する標章を使用する行為は、不正競争防止法六条にいう「商標法ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為」に該当しない。
一 不正競争防止法一条一項一号にいう商品の混同と同項柱書にいう「営業上ノ利益ヲ害セラルル虞アル者」 二 商標権者による登録商標に類似する標章の使用と不正競争防止法六条
不正競争防止法1条1項1号,不正競争防止法6条,商標法25条,商標法36条,商標法37条
判旨
不正競争防止法上の「混同」があれば特段の事情がない限り営業上の利益を害されるおそれが認められ、また商標権に類似する標章の使用は「権利の行使」に該当しない。
問題の所在(論点)
1. 不正競争防止法上の差止請求が認められるために、具体的・現実的な営業上の利益の侵害を別途立証する必要があるか。 2. 登録商標と類似する標章を使用する行為が、旧不正競争防止法6条(現19条1項)にいう「商標法により権利の行使と認められる行為」に該当するか。
規範
1. 不正競争防止法2条1項1号(旧1条1項1号)の「商品の混同」が認められる場合には、特段の事情がない限り、営業上の利益を害されるおそれがあるものと解する。 2. 同法19条1項(旧6条)にいう「商標法により権利の行使と認められる行為」とは、登録商標を指定商品に独占的に使用する行為(商標法25条)を指し、登録商標に類似する標章を使用する権能までは含まれない。
重要事実
被上告人(原告)は、わが国で広く認識され顕著な識別力を有する周知の標章(本件標章)を使用して営業活動を行っていた。一方、上告人(被告)らは、被上告人の本件標章が周知となった後に、これと類似する標章を自らの営業に使用し始めた。上告人らは、自己の行為が商標権の行使(旧不競法6条)に該当し、不正競争には当たらないと主張して争った。
事件番号: 平成27(受)1876 / 裁判年月日: 平成29年2月28日 / 結論: その他
1 商標法4条1項10号該当を理由とする商標登録の無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5年を経過した後においては,当該商標登録が不正競争の目的で受けたものである場合を除き,商標権侵害訴訟の相手方は,その登録商標が同号に該当することによる商標登録の無効理由の存在をもって,同法39条において準用する特許法10…
あてはめ
1. 本件において、被上告人の標章は周知かつ顕著な識別力を有しており、上告人らによる類似標章の使用は商品の混同を生じさせている。この場合、特段の事情(混同があっても利益侵害が生じ得ない例外的事由)は認められないため、営業上の利益を害されるおそれが肯定される。 2. 商標法25条は指定商品について登録商標を独占的に使用する権利を認めるにとどまり、類似標章の使用を積極的に許諾するものではない。したがって、類似標章の使用は「権利の行使」とはいえず、不競法の適用は排除されない。
結論
上告人らの行為は不正競争に該当し、営業上の利益を害するおそれも認められるため、差止等の請求は適法である。
実務上の射程
不競法2条1項1号・2号の要件充足時の「おそれ」の事実上の推定を認めた点、および商標権の効力範囲(専用権)を厳格に解して不競法の適用回避を制限した点に意義がある。答案では、商標権者による類似標章使用が他者の周知表示を冒用する場合の抗弁を封じる論理として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)1203 / 裁判年月日: 昭和42年4月11日 / 結論: 棄却
一 不正競争防止法第一条による行為の差止請求をするには、当該行為につき不正競争の目的または不正の目的があることを要しない。 二 不正競争防止法第一条による行為の差止請求として、特定商号の変更登記手続の請求等判示の請求をすることができる。