一 不正競争防止法二条一項一号に規定する「混同を生じさせる行為」は、他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者と当該他人との間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させるいわゆる広義の混同を生じさせる行為をも包含する。 二 「スナックシャネル」及び「スナックシャレル」の表示を使用する者の営業が飲食業であり「シャネル」の表示を使用する企業グループの営業と異なっても、「シャネル」の表示の周知性が極めて高いこと、右企業グループの属するファッション関連業界の企業においてその経営が多角化する傾向にあることなど判示の事実関係の下においては、「スナックシャネル」及び「スナックシャレル」の表示の使用は、右企業グループに属する企業についていわゆる広義の混同を生じさせる行為に当たる。
一 不正競争防止法二条一項一号といわゆる広義の混同を生じさせる行為 二 「スナックシャネル」及び「スナックシャレル」の表示の使用が「シャネル」の表示を使用する企業グループに属する企業についていわゆる広義の混同を生じさせる行為に当たるとされた事例
不正競争防止法2条1項1号
判旨
不正競争防止法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」には、営業主体を誤信させる場合だけでなく、親会社・子会社等の緊密な営業上の関係や同一のグループに属する関係があると誤信させる「広義の混同」も含まれる。
問題の所在(論点)
著名な高級ブランドと類似する表示を、業種や規模が著しく異なるスナックの営業において使用する行為が、不正競争防止法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」に該当するか。
規範
不正競争防止法2条1項1号(旧法1条1項2号)にいう「混同を生じさせる行為」とは、他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と当該他人とを同一営業主体として誤信させる行為のみならず、両者間に親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為(広義の混同惹起行為)をも包含する。この際、両者間に競争関係があることは要しない。
事件番号: 平成7(オ)637 / 裁判年月日: 平成10年9月10日
【結論(判旨の要点)】著名表示の冒用行為は、商品等の混同が生じるか否かにかかわらず、その著名性による顧客吸引力を不当に利用し、自己の営業の出所を表示するものと認識させるおそれがある限り、不正競争防止法上禁止される。 第1 事案の概要:世界的有名ブランド「CHANEL」の商標・商号を有する原告が、被告による「スナックシャ…
重要事実
上告人は、世界的に著名な高級ブランド「シャネル」の知的財産権を管理するスイス法人である。被上告人は、千葉県内の小規模な店舗(面積約32平方メートル)において「スナックシャネル」及び「スナックシャレル」との表示を掲げて飲食店を経営していた。上告人は、被上告人によるこれら表示の使用が不正競争(混同惹起)に当たるとして、差止め及び損害賠償を求めた。
あてはめ
まず、被上告人使用の表示は「シャネル」と類似する。次に、被上告人の営業(スナック)は上告人グループの営業と種類・規模が異なるが、(1)「シャネル」の表示の周知性が極めて高いこと、(2)ファッション関連企業が飲食業へ進出するなど経営が多角化する傾向にあることを考慮すべきである。これらの事実からすれば、一般消費者が、被上告人と上告人グループとの間に緊密な営業上の関係や同一のグループに属する関係があると誤認するおそれ(広義の混同)があるといえる。したがって、被上告人の行為は「混同を生じさせる行為」に該当する。
結論
被上告人による表示の使用は「混同を生じさせる行為」に当たり、上告人の営業上の利益を侵害するため、差止請求及び(損害額の審理を要するが)損害賠償請求は認められる。
実務上の射程
著名表示の保護範囲を「広義の混同」まで広げ、業種が異なる場合でも2条1項1号の適用を認めた点に実務上の意義がある。答案上は、周知表示との業種間の距離がある事案において、ブランドの著名性や企業の多角化の実態を理由に、広義の混同を肯定するロジックとして活用すべきである。
事件番号: 平成5(オ)1507 / 裁判年月日: 平成5年12月16日 / 結論: 棄却
不正競争防止法一条一項二号にいう広く認識された他人の営業の表示には、第三者の使用により特定の営業主体の営業の表示として広く認識されるに至ったものが含まれる。
事件番号: 昭和54(オ)145 / 裁判年月日: 昭和56年10月13日 / 結論: 棄却
一 不正競争防止法一条一項一号にいう他人の商品との混同の事実が認められる場合には、特段の事情がない限り、右他人は営業上の利益を害されるおそれがある者にあたるというべきである。 二 商標権者が登録商標に類似する標章を使用する行為は、不正競争防止法六条にいう「商標法ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為」に該当しない。