不正競争防止法一条一項二号にいう広く認識された他人の営業の表示には、第三者の使用により特定の営業主体の営業の表示として広く認識されるに至ったものが含まれる。
第三者の使用により特定の営業主体の営業の表示として広く認識されるに至った表示と不正競争防止法一条一項二号
不正競争防止法1条1項2号
判旨
不正競争防止法上の「広く認識された他人の営業であることを示す表示」には、営業主体自身による使用・宣伝の結果のみならず、第三者による使用を通じて広く認識されるに至った表示も含まれる。
問題の所在(論点)
不正競争防止法上の「著名な商品等表示」または「周知な商品等表示」として保護されるためには、当該表示が営業主体自身の使用や宣伝活動によって周知・著名性を獲得している必要があるか、あるいは第三者による使用等によって周知となった場合も含まれるかが問題となった。
規範
不正競争防止法1条1項2号(現行法2条1項2号参照)にいう「広く認識された他人の営業であることを示す表示」とは、営業主体自身がこれを使用または宣伝した結果として広く認識されるに至ったものに限定されない。たとえ第三者による使用であっても、それを通じて特定の営業主体の営業を示す表示として我が国で広く認識されるに至ったものもこれに含まれる。
重要事実
上告人は、昭和55年1月9日以降、特定の表示(上告人表示)及び商号の使用を開始した。これに対し、被上告人は「アメックス」という略称に関連する営業を行っていたところ、上告人が使用を開始する前の昭和54年末までには、既に新聞記事等において「アメックス」の語が被上告人の略称として頻繁に使用されていた。その結果、同語は被上告人の営業を示す表示として、日本国内において広く認識されるに至っていた。
あてはめ
本件では、被上告人自身による宣伝活動の有無にかかわらず、新聞記事等の第三者による言及を通じて「アメックス」という表示が被上告人の略称として社会的に定着している。昭和54年末の時点で既に被上告人の営業表示として広く認識されていた事実に鑑みれば、これは同法にいう「他人の営業であることを示す表示」に該当する。また、上告人が後に使用を開始した表示および商号は「アメックス」と明らかに類似しており、他人の営業活動と混同を生じさせる行為にあたると評価される。
結論
第三者の使用により周知性を獲得した表示も法的な保護対象となり、上告人の行為は不正競争行為に該当する。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
表示の周知・著名性の獲得経路を問わないことを明示した重要判例である。答案上では、自ら広告宣伝を行っていない外資系企業や新興サービスの略称等が、マスメディアやSNS等の第三者の活動を通じて周知となった場合に、本判例を根拠として保護対象性を肯定する論理を展開できる。
事件番号: 昭和54(オ)145 / 裁判年月日: 昭和56年10月13日 / 結論: 棄却
一 不正競争防止法一条一項一号にいう他人の商品との混同の事実が認められる場合には、特段の事情がない限り、右他人は営業上の利益を害されるおそれがある者にあたるというべきである。 二 商標権者が登録商標に類似する標章を使用する行為は、不正競争防止法六条にいう「商標法ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為」に該当しない。