不正競争防止法第一条第一号にいう「本法施行ノ地域内ニ於テ広ク認識セラルル」とは本邦全般にわたり広く知られていることを要するという趣旨ではなく、一地方(例えば中部地方というが如き)において広く知られている場合をも含むものと解するのが相当である。
不正競争防止法第一条第一号にいう「本法施行ノ地域内ニ於テ広ク認識セラルル」の意義。
不正競争防止法1条1号,不正競争防止法5条2号
判旨
不正競争防止法上の「広く認識されている」という要件(周知性)について、日本国内の全域にわたって知られている必要はなく、特定の地方において広く認識されていれば足りると判断した。
問題の所在(論点)
不正競争防止法における商品等表示の周知性(広く認識されていること)の要件について、全国的な認知度が必要か、あるいは特定の地方における認知で足りるか。
規範
旧不正競争防止法1条1号(現行法2条1項1号等)にいう「本法施行ノ地域内ニ於テ広ク認識セラルル」とは、必ずしも日本全国の至る所に普及し、全国的に知られていることを要せず、特定の地方において広く認識されている状態にあれば、当該地域内における不正競争行為を規制する上で十分であると解すべきである。
重要事実
被告人が、他人の商品表示(氏名、商号、商標等)と同一または類似のものを使用し、他人の商品と混同を生じさせる行為を行ったとして、不正競争防止法違反の罪に問われた事案。当該他人の表示が「広く認識されている」といえるか、その地理的範囲が争点となった。判決文からは具体的な商品名や地名は不明であるが、原審は特定の地方における周知性を認めて有罪としていた。
あてはめ
本件において、原審は当該表示が特定の地方で広く認識されていると認定した上で、法一条一号の要件を満たすと判断した。最高裁は、この原審の解釈を「正当である」と肯定した。特定の地方における周知性があれば、その地域内において他人の商品との混同を招くおそれがあり、不正競争を防止するという法の目的に照らして保護の対象となると評価される。
結論
不正競争防止法にいう周知性は、特定の地方において広く認識されていれば足りる。本件上告を棄却し、特定の地方での周知性を認めた原判決を維持した。
実務上の射程
商品等表示の周知性の地理的範囲に関するリーディングケースである。答案上は、現行法2条1項1号の「周知性」の解釈において、全国的知名度までは不要であり、一地方における周知性で足りると論じる際の根拠として活用できる。ただし、同項2号の「著名性」については全国的な知名度が要求されるため、これと混同しないよう注意が必要である。
事件番号: 昭和38(オ)781 / 裁判年月日: 昭和41年11月18日 / 結論: 棄却
他人の商号の使用が、一定地域内に限られている場合には、その商号が当該地域内において「広ク認識セラルル」ものであるかどうかを判断すれば足りる