他人の商号の使用が、一定地域内に限られている場合には、その商号が当該地域内において「広ク認識セラルル」ものであるかどうかを判断すれば足りる
他人の商号の使用が一定地域内に限られている場合と当該商号の周知性の有無の判断の限界
不正競争防止法1条
判旨
不正競争防止法上の「広く認識されたる」商号か否かは、当該他人の営業活動が及ぶ一定地域内において周知性を獲得しているかどうかによって判断すべきである。
問題の所在(論点)
不正競争防止法(旧法1条1項1号)における「他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているもの(周知性)」の判断において、地理的な周知性の範囲をどのように解すべきか。特に、他人の営業活動が一定地域に限られている場合に、全国的な周知性が必要か、あるいは当該地域内での周知性で足りるかが問題となる。
規範
他人の商号の使用が一定地域内に限られている場合には、その商号が「広く認識されたる」もの(周知性)に該当するか否かは、当該地域内において周知であるかどうかを基準として判断するのが相当である。
重要事実
上告人は自身の商号について、被上告人が「B」なる表示を使用して営業活動を行っている地域において不正競争行為が成立すると主張した。原審は、被上告人の営業活動の及ぶ地域内における上告人の商号の周知性を検討したが、当該地域内において上告人の商号が広く認識されている事実は認められないと判断した。
事件番号: 昭和39(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和40年3月18日 / 結論: 棄却
一 「A」と「AB」の両商号は、その文字呼称において「A」が共通であり、後者はこれに「B」の文字を加えたものにすぎないから、右の両商号は類似商号に該当する。 二 「A」と「AB」とは、原審認定の事実関係のもとで、類似商号ということができる。
あてはめ
本件において、被上告人の営業活動は特定の一定地域内に限られていた。この場合、周知性の有無は、まさに被上告人が「B」なる表示を使用している地域内において、上告人の商号が広く認識されているかによって決せられる。原審の認定によれば、当該地域内において上告人の商号が広く認識されている事実は認められない。また、被上告人が商号を選択した当時において「不正競争の目的」や「不正の目的」があったと認めるに足りる証拠も存在しない。したがって、当該地域における周知性が欠ける以上、不正競争行為の成立要件を充足しないといえる。
結論
他人の営業活動が及ぶ一定地域内において周知性が認められない以上、不正競争行為は成立せず、請求は棄却される。
実務上の射程
不正競争防止法2条1項1号(周知表示混同惹起行為)の「周知性」の範囲を画定した判例である。全国的な著名性までは不要であり、侵害者の営業地域と重なる一定の範囲で周知であれば足りることを示している。答案上は、周知性の該当性を論じる際に、侵害者の営業活動地域における認知度に即してあてはめを行う根拠として活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)1188 / 裁判年月日: 昭和36年9月29日 / 結論: 棄却
わが国においてとくに市民の生活と関係のある有数の大会社で、世人にあまねく知られている甲会社が本店を移転する計画で建設した新社屋の所在地と同一行政区画内において、甲会社と同一の事業を営むに足りる能力および準備のない乙会社がその商号および目的を甲会社と同一のものに変更し、これを登記したこと、そのため、甲会社は新社屋所在地に…