一 「A」と「AB」の両商号は、その文字呼称において「A」が共通であり、後者はこれに「B」の文字を加えたものにすぎないから、右の両商号は類似商号に該当する。 二 「A」と「AB」とは、原審認定の事実関係のもとで、類似商号ということができる。
一 「A」と「AB」との商号の類似性の有無。 二 類似商号であるとされた事例。
商法20条
判旨
商号の類似性は、文字呼称が共通し、かつその共通部分が商号の主要部分をなしている場合に認められる。また、不正の目的の有無は、商号変更の経緯や使用の態容等の事実関係に基づき総合的に判断される。
問題の所在(論点)
旧商法21条1項(現商法12条1項、会社法8条1項)における、他人の商号と誤認させる目的(不正の目的)をもって「類似する商号」を使用したといえるか。
規範
商号の類似性は、外観・呼称・観念を総合し、商号の主要部分(特徴的部分)が共通することで商号全体から受ける印象が類似しているか否か、及び取引の実情において営業の混同を生じさせるおそれがあるか否かにより判断する。
重要事実
上告人は当初「A」という商号を使用していたが、後に被上告人の商号「A」と酷似する「AB」という商号を使用するに至った。被上告人は「A」という商号を既に使用しており、上告人が「AB」を使用し始めたことで、実際の取引において両者の営業の混同誤認が実際に生じていた。
あてはめ
まず、商号「A」と「AB」は、共通の文字「A」が商号の主要部分をなしており、商号全体から受ける印象は極めて類似する。また、現実に営業の混同誤認が生じていることから、類似商号に該当する。次に、当初の商号「A」から「AB」へ変更した経緯やその使用態容に照らせば、被上告人の営業と誤認させる意図があったと認められ、不正の目的が肯定される。
結論
上告人が「AB」という商号を使用することは、不正の目的をもって他人の営業と誤認させる商号を使用するものとして、商号使用の差止等の対象となる。
実務上の射程
商号の類似性判断において、商号の一部を抽出して比較する「要部観察」の手法を肯定し、かつ現実に混同が生じていることを有力な考慮要素とした点に実務上の意義がある。答案では、商号の主要部分の共通性と取引実情(混同のおそれ)をリンクさせて論じるべきである。
事件番号: 昭和44(オ)912 / 裁判年月日: 昭和44年11月13日 / 結論: 棄却
上告会社と被上告会社の各商号の表示および両社の営業目的ならびに営業活動、両社の営業活動の混同された事例等原審の確定した諸般の事情のもとにおいては、上告会社の商号が被上告会社のそれと類似し、上告会社の営業活動が被上告会社のそれと混同を生ぜしめるおそれがある旨、および上告会社の商号使用によつて被上告会社が営業上の利益を害さ…