商法二〇条二項にいう同一の営業とは、社会的見地に立つて営業目的自体を対比し、一方の営業目的が他方のそれを包含し、その主要部分が同一であることをいう。
商法二〇条二項にいう同一の営業の意義
商法20条2項
判旨
商号の不正使用(商法20条)における「同一の営業」の判断は、現実に営む営業種目のみならず、社会的見地から営業目的を対比して決すべきである。一方の営業目的が他方を包含し、その主要部分において共通するならば、洋風と和風の差異があっても営業の同一性が認められる。
問題の所在(論点)
商法20条(不正目的による商号使用の禁止等)の適用要件である「同一の営業」の有無を判断するにあたり、具体的営業態様(洋風・和風等)の差異をどのように考慮すべきか。
規範
商法20条(現行商法12条等に関連)にいう「同一の営業」か否かは、双方が現実に営む営業種目のみを対比するのではなく、社会的見地に立ちその営業目的自体を対比して決すべきである。双方の営業目的が完全に一致しなくても、一方の営業目的が他方のそれを包含し、その主要部分において同一である限り、営業は同一であると解するのが相当である。
重要事実
上告人は「マルベニ」の商号で、遊技場、レストラン(洋食・パーラー)、麻雀クラブ等を経営し、その旨の商号登記をしていた。一方、被上告人は「有限会社中州まるべに」に商号変更し、同一市内で「まるべに」の看板を掲げて夜間営業の純和風割烹店(飲食店)を営み始めた。上告人は商号使用の差止め等を求めたが、原審は洋風レストランと和風割烹という現実に営む態様の差異を重視し、営業の同一性を否定した。
事件番号: 昭和39(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和40年3月18日 / 結論: 棄却
一 「A」と「AB」の両商号は、その文字呼称において「A」が共通であり、後者はこれに「B」の文字を加えたものにすぎないから、右の両商号は類似商号に該当する。 二 「A」と「AB」とは、原審認定の事実関係のもとで、類似商号ということができる。
あてはめ
上告人の営業目的は「遊技場及び飲食店の経営」であり、被上告人の営業目的も「飲食店業」である。両者は現実に営む形態において、一方が「洋風のレストラン・パーラー」、他方が「夜間営業の純和風割烹店」という差異がある。しかし、社会的見地からすれば、いずれも「料理店という飲食店業」を経営する点において主要部分が一致している。したがって、営業目的の主要部分において同一であるといえる。
結論
洋風・和風といった具体的態様に差異があっても、料理店という飲食店業としての主要部分が共通する以上、営業は同一であると解すべきである。原審の判断には解釈の誤りがあるため、破棄差し戻しを免れない。
実務上の射程
商号や商標の類似性・混同のおそれを論ずる際、具体的営業形態の細かな違い(和食か洋食か等)に捉われず、カテゴリーとしての「営業目的」の共通性を重視する規範として活用できる。ただし、現在の会社法・商法下では条文番号が異なる点(旧商法20条は現行商法12条や会社法8条に類する規定)に留意が必要である。
事件番号: 昭和44(オ)912 / 裁判年月日: 昭和44年11月13日 / 結論: 棄却
上告会社と被上告会社の各商号の表示および両社の営業目的ならびに営業活動、両社の営業活動の混同された事例等原審の確定した諸般の事情のもとにおいては、上告会社の商号が被上告会社のそれと類似し、上告会社の営業活動が被上告会社のそれと混同を生ぜしめるおそれがある旨、および上告会社の商号使用によつて被上告会社が営業上の利益を害さ…