一 不正競争防止法第五条第二号は憲法第二二条に違反しない。 二 同号にいう「不正ノ競争ノ目的」とは、公序良俗、信義衡平に反する手段によつて、他人の営業と同種または類似の行為をなし、その物の営業上の競争をする意図をいう。 三 同号の罪はその構成要件上、行為の一定期間内における反覆継続性を要素とするものではない。
一 不正競争防止法第五条第二号と憲法第二二条 二 同号にいう「不正ノ競争ノ目的」の意義 三 同号の罪は反覆継続性を要素とするか
憲法22条,不正競争防止法1条1号,不正競争防止法1条2号,不正競争防止法5条2号
判旨
不正競争防止法上の「不正の競争の目的」とは、公序良俗や信義衡平に反する手段により他人の営業と同種・類似の行為を行い、営業上の競争をする意図を指す。このような目的による行為の規制は、営業規模の大小に関わらず公共の福祉のために必要であり、憲法22条に違反しない。
問題の所在(論点)
不正競争防止法(旧法)における「不正の競争の目的」の意義、および同法による規制が営業規模に差異がある場合であっても憲法22条の公共の福祉による制限として許容されるか。
規範
「不正の競争の目的」とは、公序良俗、信義衡平に反する手段によつて、他人の営業と同種または類似の行為をなし、その者と営業上の競争をする意図をいうものと解する。不公正な競争の意図をもってなされる行為は、特定の被害者に対する不法行為に止まらず、業界の混乱や経済生活一般の不安を招くおそれがあるため、営業規模の大小を問わず規制の対象となる。
重要事実
被告人は、僅かな資本を他人から借り受け、他人の店先の狭い部分を共同賃借して営業する小商人であった。被告人は、被害者である有限会社Aの営業と同種または類似の行為を、不正競争防止法(当時の5条2号および1条1号)に該当する態様で行った。被告人側は、被害者との間に圧倒的な規模の差異があるため対立競争関係は生じ得ず、本法を適用して処罰することは憲法22条の営業の自由に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件被告人は、公序良俗・信義衡平に反する不公正な手段を用いて被害者の営業と類似の行為を行っており、「不正の競争の目的」が認められる。被告人の営業規模が被害者と比較して極めて小さいとしても、そのような不公正な競争行為を放置すれば、業界全体の秩序を乱し経済生活の安定を脅かす蓋然性がある。したがって、規模の大小にかかわらず本法を適用して規制することは、公共の福祉を維持するために必要な合理的制限といえる。
結論
被告人の行為に不正競争防止法を適用し処罰することは、憲法22条に違反しない。上告棄却。
実務上の射程
不正競争防止法の目的が単なる私益保護にとどまらず、経済秩序という公益保護にあることを示した。答案上、主観的要件である「目的」の定義として引用できるほか、営業規模の著しい格差を理由とする適用除外を否定する際の根拠となる。また、経済的自由権に対する合理的規制の具体例としても活用可能である。
事件番号: 昭和49(あ)2299 / 裁判年月日: 昭和50年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不正競争防止法にいう「不正の競争の目的」とは、単に他人と営業上の競争をする意図を指すものではなく、また一般消費者の利益を害する意図までをも要件とするものではない。 第1 事案の概要:本件は、不正競争防止法違反の罪に問われた被告人らが、同法にいう「不正の競争の目的」の解釈を巡り、原判決の判断が判例に…
事件番号: 昭和54(オ)145 / 裁判年月日: 昭和56年10月13日 / 結論: 棄却
一 不正競争防止法一条一項一号にいう他人の商品との混同の事実が認められる場合には、特段の事情がない限り、右他人は営業上の利益を害されるおそれがある者にあたるというべきである。 二 商標権者が登録商標に類似する標章を使用する行為は、不正競争防止法六条にいう「商標法ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為」に該当しない。