「大森林」の楷書体の漢字から成る登録商標と「木林森」の行書体の漢字から成る商標は、全体的に観察し対比してみて、少なくとも外観、観念において紛らわしい関係にあり、取引の状況によっては、類似する関係にあるものと認める余地がある。
「大森林」という登録商標と「木林森」という商標との類否
商標法36条,商標法37条
判旨
商標の類否は、外観、称呼、観念を総合的に考察すべきであり、具体的な取引状況を勘案した結果、個別的には類似しない商標であっても全体として類似する場合がある。そのため、需要者の属性や商品の販売方法等の具体的実情を十分に審理せずに類否を判断することは許されない。
問題の所在(論点)
商標法2条5項、37条1号等における商標の類否判断において、外観・称呼・観念の形式的な比較だけでなく、具体的な取引状況をどの程度考慮すべきか。また、需要者の注意力の程度をいかに認定すべきか。
規範
商標の類否は、同一または類似の商品に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきである。その際、商品の取引の実情を明らかにし得る限り、具体的な取引状況に基づいて判断すべきである。たとえ外観、観念、称呼において個別的に類似しない商標であっても、具体的な取引状況いかんによっては類似する場合があり、総合的な類似性の有無は具体的な取引状況によって異なり得る。
重要事実
指定商品を化粧品等とする登録商標「大森林」(楷書体横書き)を有する上告人が、被上告人の育毛剤等に使用されている標章「木林森」(行書体縦書き・横書き)は本件商標に類似するとして、差止め等を求めた。原審は、外観・称呼・観念のいずれも類似せず、需要者(育毛を望む男性)は注意深く商品を選択するため混同の恐れもないとして請求を棄却したが、具体的な販売態様(訪問販売か店頭販売か等)の認定は行っていなかった。
事件番号: 平成3(オ)1805 / 裁判年月日: 平成4年9月22日
【結論(判旨の要点)】商標の類否判断は、外観、称呼、観念を総合的に考察すべきであり、取引の実情を考慮せずに特定の要素のみを重視して判断することは許されない。具体的な取引状況を十分に確定することなく、限定的な需要者層を前提として類似性を否定した原審の判断には、審理不尽または理由不備の違法がある。 第1 事案の概要:上告人…
あてはめ
本件商標と被上告人標章は「森」と「林」の二字が共通し、「大」と「木」も筆運びにより紛らわしくなり得る上、共に増毛を連想させる樹木を想起させるため、外観・観念において紛らわしい。需要者についても、育毛に関心がある者が常に注意深く選択するとは断定できず、通常使用権者による販売状況等の具体的実情を勘案する必要がある。原審が、訪問販売か店頭販売かといった具体的な展示・販売態様を認定しないまま類似性を否定した点には、法令の解釈適用の誤りまたは理由不備がある。
結論
商標の類否判断において具体的な取引実情の審理が不十分であるとして、原判決を破棄し、原審に差し戻した。
実務上の射程
氷山事件(最判昭43・2・27)の流れを汲み、商標の類否を単なる形式的比較ではなく、具体的・個別的状況の下で判断すべきことを強調する重要な判例である。答案上は、まず外観・称呼・観念の三要素を検討した上で、あてはめにおいて「取引の実情」(需要者の層、商品の価格帯、販売方法等)を指摘し、それらが類否判断を補強または修正する要素として機能する論理構成をとる際に引用する。
事件番号: 平成6(オ)1102 / 裁判年月日: 平成9年3月11日 / 結論: 棄却
一 フランチャイズ契約により結合し全体として組織化された企業グループ(フランチャイズチェーン)の名称は、商標法二六条一項一号にいう自己の名称に当たる。 二 「小僧寿し」が著名なフランチャイズチェーンの略称として需要者の間で広く認識されている場合において、右フランチャイズチェーンにより使用されている「小僧寿し」、「KOZ…
事件番号: 昭和54(オ)145 / 裁判年月日: 昭和56年10月13日 / 結論: 棄却
一 不正競争防止法一条一項一号にいう他人の商品との混同の事実が認められる場合には、特段の事情がない限り、右他人は営業上の利益を害されるおそれがある者にあたるというべきである。 二 商標権者が登録商標に類似する標章を使用する行為は、不正競争防止法六条にいう「商標法ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為」に該当しない。
事件番号: 昭和24(オ)133 / 裁判年月日: 昭和25年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の類否判断において、外観に相違がある場合であっても、構成部分から生ずる称呼及び観念が共通し、取引の実情に照らして商品の出所について混同を生ずるおそれがあるときは、類似の商標と解される。 第1 事案の概要:本件登録商標(「獅子印」等を含む図形商標。以下「本標章」)に対し、他者の商標(「クロライオ…
事件番号: 昭和39(行ツ)110 / 裁判年月日: 昭和43年2月27日 / 結論: 棄却
糸一般を指定商品とし「しようざん」の称呼をもつ商標と硝子繊維糸のみを指定商品とし「ひようざん」の称呼をもつ商標とでは、右両商標が外観および観念において著しく異なり、かつ、硝子繊維糸の取引では、商標の称呼のみによつて商標を識別しひいて商品の出所を知り品質を認識するようなことがほとんど行なわれないのが実情であるときは、両者…