個別信用購入あっせんにおいて,購入者が名義上の購入者となることを承諾してあっせん業者との間で立替払契約を締結した場合に,それが販売業者の依頼に基づくものであり,上記販売業者が,上記依頼の際,名義上の購入者となる者を必要とする高齢者等がいること,上記高齢者等との間の売買契約及び商品の引渡しがあること並びに上記高齢者等による支払がされない事態が生じた場合であっても上記販売業者において確実に上記購入者の上記あっせん業者に対する支払金相当額を支払う意思及び能力があることを上記購入者に対して告知したなど判示の事情の下においては,上記の告知の内容は,割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に当たる。 (反対意見がある。)
個別信用購入あっせんにおいて,購入者が名義上の購入者となることを承諾してあっせん業者との間で立替払契約を締結した場合に,販売業者が上記購入者に対してした告知の内容が,割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に当たるとされた事例
割賦販売法35条の3の13第1項6号
判旨
名義貸しによる架空の売買契約に基づく立替払契約であっても、販売業者が契約締結の動機に関する重要な事項について不実のことを告げたことにより購入者が誤認した場合には、割賦販売法35条の3の13第1項6号に基づき、購入者はあっせん業者に対する申込みの意思表示を取り消すことができる。
問題の所在(論点)
1. 改正後割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に、名義貸しの動機に関する事項が含まれるか。 2. 名義貸しに応じた購入者が、販売業者の不実告知を理由に立替払契約の申込みを取り消すことが許されるか。 3. 名義貸しの場合において、売買契約の無効をあっせん業者に対抗することが信義則に反するか。
規範
割賦販売法35条の3の13第1項6号は、加盟店による不当な勧誘から購入者を保護する趣旨である。同号の不実告知の対象となる「重要なもの」には、契約内容のみならず契約締結の動機も含まれる。立替払契約が「名義貸し」という不正な方法による場合であっても、契約締結を必要とする事情、購入者が実質的に負うリスクの有無、あっせん業者に実質的損害が生ずる可能性の有無など、契約締結の動機に関する重要な事項について不実告知があり、購入者がこれを利用されたと評価し得る場合には、同号による取消しが認められる。また、改正前契約については、上記不実告知による誤認の有無や経緯を考慮し、信義則(改正前割賦販売法30条の4第1項の対抗制限)の適否を判断すべきである。
重要事実
販売業者Aは、運転資金を得る目的で顧客である上告人らに「名義貸し」を依頼した。Aは勧誘の際、「ローンを組めない高齢者のための人助けである」「高齢者との売買や商品の引渡しは実在する」「支払はAが責任を持つので絶対に迷惑は掛けない」と告げた。上告人らはこれを信じ、架空の売買契約を前提とする立替払契約を被上告人(信販会社)と締結した。実際には人助け等の事実はなく、Aの営業停止により上告人らが支払を求められるに至ったため、改正後契約については不実告知を理由に取消しを、改正前契約については売買の無効(民法93条但書・94条1項)をあっせん業者に対抗した。
あてはめ
本件販売業者が告げた「高齢者の人助けである」「売買契約や商品の引渡しが実在する」「支払は販売業者が確実に行い、名義人にリスクはない」という内容は、名義貸しを必要とする事情や、購入者が実質的に負うリスクの有無、あっせん業者に損害を与える可能性に関する事項である。これらは契約締結の動機に関する重要な事項に該当するといえる。たとえ名義貸しという不正な形式であっても、購入者が上記不実告知により「あっせん業者に損害を与えず、自分もリスクを負わない」と誤認して利用された側面があるならば、保護に値しないとはいえない。したがって、原審がこれらの告知を「重要なもの」に当たらないとし、直ちに不実告知を否定した点、およびそれを前提に改正前契約につき信義則違反とした判断には法令の違反がある。
結論
原判決を破棄し、販売業者の告知内容による上告人らの誤認の有無、および名義貸しに応じた動機・経緯を更に審理させるため、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
訪問販売等の個別信用購入あっせんにおける名義貸し事案全般。特に、販売業者から「迷惑はかけない」等の甘言を受けて名義を貸してしまった消費者の救済範囲を確定する際に基準となる。
事件番号: 平成19(受)1128 / 裁判年月日: 平成21年9月11日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者が,借主に対し,元利金の支払を怠ったときは当然に期限の利益を喪失する旨の特約の下に3回にわたり金銭の貸付けを行い,各貸付けにつき借主が期限の利益を喪失した後に,一部弁済を受領する都度,弁済金を遅延損害金のみ又は遅延損害金と元金の一部に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を交付していた場合において,次の(1)〜(…
事件番号: 平成19(受)996 / 裁判年月日: 平成21年4月14日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者が,貸付けに係る債務につき,借主が期限の利益を喪失した後に,借主に対して残元利金の一括支払を請求せず,借主から長期間多数回にわたって分割弁済を受けていた場合において,貸金業者が,債務の弁済を受けるたびに受領した金員を利息ではなく損害金へ充当した旨記載した領収書兼利用明細書を交付していたから,期限の利益の喪失を宥…
事件番号: 令和2(受)205 / 裁判年月日: 令和3年6月29日 / 結論: 破棄差戻
宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,同法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものとして,公序良俗に反し,無効である。
事件番号: 昭和60(オ)356 / 裁判年月日: 昭和61年11月20日 / 結論: 棄却
クラブのホステスが顧客の当該クラブに対する飲食代金債務についてした保証契約は、ホステスにおいて自己独自の客としての当該顧客との関係の維持継続を図ることによりクラブから支給される報酬以外の特別の利益を得ることを目的として任意に締結したと認められるなど原判示のような事情がある場合には、公序良俗に反するものとはいえない。