貸金業者が,貸付けに係る債務につき,借主が期限の利益を喪失した後に,借主に対して残元利金の一括支払を請求せず,借主から長期間多数回にわたって分割弁済を受けていた場合において,貸金業者が,債務の弁済を受けるたびに受領した金員を利息ではなく損害金へ充当した旨記載した領収書兼利用明細書を交付していたから,期限の利益の喪失を宥恕し,再度期限の利益を付与する意思はなかったと主張し,これに沿う証拠も提出していたにもかかわらず,上記主張について審理することなく,貸金業者が,借主に対し,期限の利益の喪失を宥恕し,再度期限の利益を付与したとした原審の判断には,違法がある。
貸金業者が,借主に対し,期限の利益の喪失を宥恕し,再度期限の利益を付与したとした原審の判断に違法があるとされた事例
民法136条
判旨
貸金業者が、利息制限法を上回る支払(いわゆる過払金)を債務者に返還した際、それまで利息制限法超過利息を受領し続けていた事実がある以上、特段の事情がない限り、貸金業者は「悪意の受益者」(民法703条、704条)に該当し、過払金に年5%の利息を付して返還すべきである。
問題の所在(論点)
利息制限法の制限を超える利息を受領した貸金業者が、民法704条にいう「悪意の受益者」にあたるか否か、およびその判断基準。
規範
不当利得返還義務における「悪意の受益者」(民法704条)とは、法律上の原因がないことを知りながら利得を受けた者を指す。貸金業者が制限超過利息を受領した場合、当該業者が利息制限法及び最高裁判例の趣旨を熟知している立場にあることに鑑みれば、原則として法律上の原因がないことを認識していたものと推認される。したがって、貸付時において法43条1項(みなし弁済)の適用要件を充足すると信ずるに足りる特段の事情がない限り、当該業者は悪意の受益者と解するのが相当である。
重要事実
事件番号: 平成18(受)1187 / 裁判年月日: 平成19年2月13日 / 結論: その他
1 貸主と借主との間で継続的に貸付けが繰り返されることを予定した基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し,その後,第2の貸付けに係る債務が発生したときには,特段の事情のない限り,第1…
貸金業者(上告人)は、債務者(被上告人)との間で約定利率年30%を超える貸付けを継続し、被上告人は約3年間にわたり支払を継続した。その結果、利息制限法所定の制限利息に基づき引き直し計算を行うと、元本は完済され、合計102万3,950円の過払金が発生していた。上告人は、受領した各支払が「みなし弁済」として有効であると信じていたため、法律上の原因がないことを知らなかった(善意の受益者である)と主張した。
あてはめ
上告人は長期間にわたり制限超過利息を受領し続けていた。貸金業を営む専門業者として、制限超過利息の受領に法律上の原因がないことは当然に認識し得る立場にある。本件において、上告人が「みなし弁済」の成立を信じるにつき、客観的に相当な根拠となる特段の事情は認められない。よって、上告人は支払を受けた各時点において法律上の原因がないことを知っていた、すなわち「悪意の受益者」であったといえる。
結論
貸金業者は悪意の受益者に該当するため、過払金の元本だけでなく、受領時からの法定利息(年5%)を付して返還しなければならない。
実務上の射程
本判決は、消費者金融等の過払金返還請求訴訟において、貸金業者の悪意性を原則として肯定する確立した規範を示したものである。実務上、貸金業者側が「特段の事情」を立証して利息支払を免れることは極めて困難となった。
事件番号: 平成18(受)1666 / 裁判年月日: 平成19年7月17日 / 結論: その他
貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,民法704条の「悪意の受…
事件番号: 平成18(受)276 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: 破棄差戻
利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,その預金口座への払込みを受けた際に貸金業の規制等に関する法律18条1項に規定する書面を債務者に交付していなかったために同法43条1項の適用を受けられない場合において,当該貸金業者が,事前に債務者に約定の各回の返済期日及び返済金額等を記載した償還表を交付してい…
事件番号: 平成19(受)1128 / 裁判年月日: 平成21年9月11日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者が,借主に対し,元利金の支払を怠ったときは当然に期限の利益を喪失する旨の特約の下に3回にわたり金銭の貸付けを行い,各貸付けにつき借主が期限の利益を喪失した後に,一部弁済を受領する都度,弁済金を遅延損害金のみ又は遅延損害金と元金の一部に充当した旨記載した領収書兼利用明細書を交付していた場合において,次の(1)〜(…
事件番号: 平成21(受)47 / 裁判年月日: 平成21年9月4日 / 結論: その他
貸金業者が借主に対し貸金の支払を請求し借主から弁済を受ける行為が不法行為を構成するのは,貸金業者が当該貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに,あえてその請求をしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られ,この理は…