利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,その預金口座への払込みを受けた際に貸金業の規制等に関する法律18条1項に規定する書面を債務者に交付していなかったために同法43条1項の適用を受けられない場合において,当該貸金業者が,事前に債務者に約定の各回の返済期日及び返済金額等を記載した償還表を交付していれば上記書面を交付しなくても同項の適用があるとの認識を有していたとしても,当時既に存した判例(最高裁平成8年(オ)第250号同11年1月21日第一小法廷判決・民集53巻1号98頁)の説示によれば,同項の適用が認められるためには償還表が交付されていても上記書面が交付される必要があることは明らかであるなど判示の事情の下では,「上記書面の交付がなくても他の方法で貸付金の元金及び利息の内訳を債務者に了知させていたときには同項の適用が認められるとの見解が主張され,これに基づく貸金業者の取扱いも少なからず見られた」というだけで,上記認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるとはいえず,上記貸金業者は民法704条の「悪意の受益者」であるとする推定を覆すことはできない。
利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,判例の正しい理解に反して貸金業の規制等に関する法律18条1項に規定する書面の交付がなくても同法43条1項の適用があるとの認識を有していたとしても,民法704条の「悪意の受益者」であるとする推定を覆す特段の事情があるとはいえないとされた事例
民法704条,貸金業の規制等に関する法律18条1項,貸金業の規制等に関する法律43条1項,利息制限法1条1項
判旨
貸金業者が制限超過利息を受領し、貸金業法43条1項の適用が認められない場合、特段の事情がない限り、当該業者は民法704条の「悪意の受益者」と推定される。
問題の所在(論点)
制限超過利息を受領した貸金業者が、貸金業法43条1項(みなし弁済)の適用を信じていた場合、民法704条の「悪意の受益者」にあたるか、またその推定を覆すための「特段の事情」はどのように判断されるか。
規範
貸金業者が制限超過部分を利息として受領し、貸金業法43条1項(みなし弁済)の適用が認められない場合、業者が「同項の適用があるとの認識を有し、かつその認識を持つに至ったことにつき、やむを得ないといえる特段の事情」がない限り、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した「悪意の受益者」と推定される。この「特段の事情」を認めるには、業者の認識と一致する裁判例が相当数あるか学説が有力である等の合理的な根拠を要する。
事件番号: 平成18(受)1666 / 裁判年月日: 平成19年7月17日 / 結論: その他
貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,民法704条の「悪意の受…
重要事実
貸金業者(被上告人)は、借主(上告人)に対し制限利率を超える利息で貸し付け、銀行振込による弁済を受けた際に18条書面を交付しなかった。業者は、事前に「償還表」を交付しており、みなし弁済が成立すると信じていたため「悪意の受益者」ではないと主張した。原審は、先行判例(最判平16.2.20等)以前は、18条書面がなくても他の方法で内訳を了知させれば43条1項が適用されるとの見解もあったことを理由に悪意性を否定した。
あてはめ
貸金業者は制限超過部分が原則無効であることを十分認識している立場にある。振込による弁済時に18条書面を交付しなかった本件では、みなし弁済は適用されない。被上告人は「償還表」の交付を理由に適用を信じたとするが、平成11年判決により、償還表の有無にかかわらず振込の都度18条書面の交付が必要であることは明らかになっていた。単に「適用されるとの見解があった」という事実だけでは、認識に合理的な根拠があるとはいえず、推定を覆す「特段の事情」には該当しない。
結論
被上告人が「悪意の受益者」であることを否定した原審の判断には法令違反がある。特段の事情の有無を再審理させるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
過払金返還請求訴訟において、民法704条の利息を付すべき「悪意」の有無に関するリーディングケースである。貸金業者の主観的認識を広く「悪意」と推定し、それを覆すハードルを極めて高く設定した。実務上は、みなし弁済が否定される事案の多くで、過払金発生時点からの利息付加を認める根拠として援用される。
事件番号: 平成17(受)1970 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: その他
1 貸金業者が返済方式を元利均等方式とする貸付けをするに際し,貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に当たるものとして借用証書の写しを借主に交付した場合において,(1)当該借用証書写しの「各回の支払金額」欄に,一定額の元利金の記載と共に「別紙償還表記載のとおりとします。」との記載があり,償還表は借用証書写し…
事件番号: 平成21(受)47 / 裁判年月日: 平成21年9月4日 / 結論: その他
貸金業者が借主に対し貸金の支払を請求し借主から弁済を受ける行為が不法行為を構成するのは,貸金業者が当該貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに,あえてその請求をしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られ,この理は…
事件番号: 平成18(受)1187 / 裁判年月日: 平成19年2月13日 / 結論: その他
1 貸主と借主との間で継続的に貸付けが繰り返されることを予定した基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し,その後,第2の貸付けに係る債務が発生したときには,特段の事情のない限り,第1…
事件番号: 平成20(受)1729 / 裁判年月日: 平成21年7月14日 / 結論: その他
期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払の任意性を初めて否定した最高裁平成16年(受)第1518号同18年1月13日第二小法廷判決・民集60巻1号1頁の言渡し日以前にされた制限超過部分の支払について,貸金業者が同特約の下でこれを受領したことのみを理由として当該貸金業者を民法704条の「悪意の受益…