期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払の任意性を初めて否定した最高裁平成16年(受)第1518号同18年1月13日第二小法廷判決・民集60巻1号1頁の言渡し日以前にされた制限超過部分の支払について,貸金業者が同特約の下でこれを受領したことのみを理由として当該貸金業者を民法704条の「悪意の受益者」と推定することはできない。
期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払の任意性を否定した最高裁判所の判決の言渡し日以前にされた制限超過部分の支払について,貸金業者が同特約の下でこれを受領したことのみを理由として当該貸金業者を民法704条の「悪意の受益者」と推定することの可否
民法136条,民法704条,貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第115号による改正前のもの)43条1項,利息制限法1条1項
判旨
期限の利益喪失特約の下での制限超過利息の支払につき、平成18年判決以前に貸金業者がみなし弁済(旧貸金業法43条1項)の適用を信じていたとしても、特段の事情がない限り、直ちに民法704条の「悪意の受益者」と推定することはできない。
問題の所在(論点)
期限の利益喪失特約が存在する状況で制限超過利息を受領した場合、平成18年判決以前の受領分についても、貸金業者は直ちに民法704条の「悪意の受益者」と推定されるか。
規範
貸金業者が受領した制限超過利息について貸金業法43条1項の適用が認められない場合、原則として「悪意の受益者」(民法704条)と推定される。しかし、平成18年1月13日の最高裁判決(平成18年判決)より前においては、期限の利益喪失特約があることのみをもって直ちに任意性が否定されるわけではないとの認識が一般的であった。したがって、同判決以前の支払については、特約下の支払であることを理由に直ちに悪意の受益者と推定することはできず、他の要件の充足性等を個別に検討する必要がある。
重要事実
事件番号: 平成20(受)1728 / 裁判年月日: 平成21年7月10日 / 結論: その他
期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払の任意性を初めて否定した最高裁平成16年(受)第1518号同18年1月13日第二小法廷判決・民集60巻1号1頁の言渡し日以前にされた制限超過部分の支払について,貸金業者が同特約の下でこれを受領したことのみを理由として当該貸金業者を民法704条の「悪意の受益…
貸金業者である上告人は、被上告人らに対し、元利均等分割返済方式で貸付けを行った。契約には、分割金の支払を1回でも怠れば当然に期限の利益を失う旨の特約(本件特約)が付されていた。被上告人らは利息制限法を超える利息を支払ったが、平成18年判決によって、このような特約下での支払は「任意」の支払とはいえず、みなし弁済の適用がないことが確定した。被上告人らは、過払金の返還とともに、上告人が悪意の受益者であることを前提に利息の支払を求めた。
あてはめ
平成18年判決が出るまでは、期限の利益喪失特約下の支払について任意性を否定する最高裁判例はなく、学説や下級審の多数も肯定的な見解であった。このような状況下では、貸金業者がみなし弁済の適用を信じていたことには「やむを得ないといえる特段の事情」がある。したがって、単に本件特約が存在することをもって、上告人が法律上の原因を欠くことを知っていた(悪意)と断定することはできない。原審は、他の要件(書面交付義務等)の充足状況を検討せずに、特約の存在のみから悪意を認めており、審理不尽である。
結論
平成18年判決前の支払分について、期限の利益喪失特約の存在のみを理由に上告人を悪意の受益者と断ずることはできず、差し戻しを要する。
実務上の射程
不当利得返還請求における「悪意」の判断基準に関する射程を示す。平成18年1月13日を画期として、それ以前の取引については「特約の存在」以外の要素(領収書交付等の手続的要件の不備を認識していたか等)を個別に主張・立証する必要があることを示唆する判例である。
事件番号: 平成18(受)276 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: 破棄差戻
利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,その預金口座への払込みを受けた際に貸金業の規制等に関する法律18条1項に規定する書面を債務者に交付していなかったために同法43条1項の適用を受けられない場合において,当該貸金業者が,事前に債務者に約定の各回の返済期日及び返済金額等を記載した償還表を交付してい…
事件番号: 平成18(受)1666 / 裁判年月日: 平成19年7月17日 / 結論: その他
貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,民法704条の「悪意の受…
事件番号: 平成16(受)424 / 裁判年月日: 平成18年1月24日 / 結論: 破棄差戻
1 利息制限法所定の制限を超える約定利息と共に元本を分割返済する約定の金銭消費貸借に,債務者が元本及び約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の約定が付されている場合,同約定中,債務者が約定利息のうち制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は,同法1条1項の趣旨に反して無効であ…
事件番号: 平成20(受)2114 / 裁判年月日: 平成22年6月4日 / 結論: その他
更生会社であった貸金業者において,届出期間内に届出がされなかった更生債権である過払金返還請求権につきその責めを免れる旨主張することは,(1)上記貸金業者の発行したカードは従前どおり使用することができる旨の社告が新聞に掲載された際に,上記貸金業者において,過払金返還請求権につき債権の届出をしないと更生会社がその責めを免れ…