1 利息制限法所定の制限を超える約定利息と共に元本を分割返済する約定の金銭消費貸借に,債務者が元本及び約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の約定が付されている場合,同約定中,債務者が約定利息のうち制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は,同法1条1項の趣旨に反して無効であり,債務者は,約定の元本及び同項所定の利息の制限額を支払いさえすれば,期限の利益を喪失することはない。 2 利息制限法所定の制限を超える約定利息と共に元本を分割返済する約定の金銭消費貸借において,債務者が,元本及び約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の約定の下で,利息として上記制限を超える額の金銭を支払った場合には,債務者において約定の元本と共に上記制限を超える約定利息を支払わない限り期限の利益を喪失するとの誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り,制限超過部分の支払は,貸金業の規制等に関する法律43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」ものということはできない。 (2につき意見がある。)
1 債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の特約の効力 2 債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の特約の下での制限超過部分の支払の任意性の有無
(1,2につき)利息制限法1条1項,民法136条 (2につき)貸金業の規制等に関する法律43条1項
判旨
貸金業法43条1項の「任意に支払った」とは、債務者が利息の支払に充当されると認識し、自由な意思で支払ったことをいう。制限超過利息の不払が期限の利益喪失に直結する旨の特約の下での支払は、特段の事情のない限り、自由な意思による支払とは認められない。
問題の所在(論点)
1. 17条書面・18条書面の記載が不正確・不明確な場合に、貸金業法43条1項の適用が認められるか。 2. 制限超過利息の不払を期限の利益喪失事由とする特約下での支払に「任意性」が認められるか。
規範
1. 貸金業法43条1項(みなし弁済)の適用要件は、資金需要者保護の観点から厳格に解釈すべきである。17条書面・18条書面は、法定事項が全て、かつ正確・明確に記載されていなければならない。 2. 「任意に支払った」とは、支払が利息充当されることを認識し、自己の自由な意思によって支払ったことをいう。債務者が事実上の強制を受けて制限超過部分を支払った場合には、自由な意思による支払とはいえない。 3. 制限超過利息の不払が期限の利益喪失に繋がる特約は、本来支払義務のない超過部分の支払を事実上強制するものであるから、同特約下での支払は、誤解が生じなかったといえるような特段の事情がない限り、任意性を欠く。
事件番号: 平成20(受)2114 / 裁判年月日: 平成22年6月4日 / 結論: その他
更生会社であった貸金業者において,届出期間内に届出がされなかった更生債権である過払金返還請求権につきその責めを免れる旨主張することは,(1)上記貸金業者の発行したカードは従前どおり使用することができる旨の社告が新聞に掲載された際に,上記貸金業者において,過払金返還請求権につき債権の届出をしないと更生会社がその責めを免れ…
重要事実
貸金業者である被上告人は、上告人らに対し、年利109.5%、1回でも支払を怠れば当然に期限の利益を喪失する旨の特約(本件特約)を付して貸付けを行った。交付された17条書面には、実際の交付額ではなく残元本合算額が記載され、集金休日も不正確であった。また、18条書面(領収書)にも受領金額の誤記があった。上告人らは制限超過利息を支払った後、過払金の返還を求めた。
あてはめ
1. 被上告人が交付した17条書面は、「貸付けの金額」が残元本との合算で不正確であり、集金休日も「慣習のある休日」などと不明確である。18条書面も受領額を誤記しており、正確・明確性を欠く。したがって、書面交付義務を遵守したとはいえず、みなし弁済は成立しない。 2. 本件特約は、制限超過部分の不払により残元本全額の即時支払を強いるものであり、債務者に超過部分の支払を事実上強制する。本件において、債務者がこのような不利益を回避するための誤解を有していなかった等の特段の事情は認められない。よって、支払の任意性は否定される。
結論
本件各弁済に貸金業法43条1項の適用はなく、制限超過部分は元本に充当される。任意性の判断を誤った原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
貸金業法におけるみなし弁済の「書面の厳格な記載義務」と「任意性の判断枠組み」を確立した重要判例である。答案上、期限の利益喪失条項がある事案では、原則として任意性が否定される(=みなし弁済が否定される)という論理構成に用いる。
事件番号: 平成15(オ)386 / 裁判年月日: 平成16年2月20日 / 結論: 破棄差戻
1 貸金業者との間の金銭消費貸借上の約定に基づき利息の天引きがされた場合における天引利息については,貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用はない。 2 貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に該当するためには,当該書面に同項所定の事項のすべてが記載されていなければならない。 3 貸金業者が貸金の弁済を受…
事件番号: 平成14(受)912 / 裁判年月日: 平成16年2月20日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者が,貸金の弁済を受ける前に,その弁済があった場合の貸金業の規制等に関する法律18条1項所定の事項が記載されている書面で貸金業者の銀行口座への振込用紙と一体となったものを債務者に交付し,債務者がこの書面を利用して同銀行口座に対する払込みの方法によって利息の支払をしたとしても,同法43条1項の適用要件である同法18…
事件番号: 平成18(受)276 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: 破棄差戻
利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,その預金口座への払込みを受けた際に貸金業の規制等に関する法律18条1項に規定する書面を債務者に交付していなかったために同法43条1項の適用を受けられない場合において,当該貸金業者が,事前に債務者に約定の各回の返済期日及び返済金額等を記載した償還表を交付してい…
事件番号: 平成17(受)560 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 棄却
1 貸金業者は,貸付けに係る契約の性質上,貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に同項所定の事項について確定的な記載をすることが不可能な場合には,同書面に当該事項に準じた事項を記載すべきである。 2 貸金業者は,借主が借入限度額の範囲内であれば繰り返し借入れをすることができ,毎月定められた返済期日に最低返済…