貸金業者が,貸金の弁済を受ける前に,その弁済があった場合の貸金業の規制等に関する法律18条1項所定の事項が記載されている書面で貸金業者の銀行口座への振込用紙と一体となったものを債務者に交付し,債務者がこの書面を利用して同銀行口座に対する払込みの方法によって利息の支払をしたとしても,同法43条1項の適用要件である同法18条1項所定の要件を具備した書面の交付があったということはできない。
債務者が貸金業者から交付された貸金業の規制等に関する法律18条1項所定の事項が記載されている書面で振込用紙と一体となったものを利用して貸金業者の銀行口座に対する払込みの方法によって利息の支払をした場合と同項所定の要件の具備
貸金業の規制等に関する法律18条1項,貸金業の規制等に関する法律43条1項,利息制限法1条1項
判旨
貸金業法18条1項に定める書面の交付義務は、債務者の保護を目的として厳格に解されるべきであり、弁済を受ける前に交付された書面は、たとえ振込用紙と一体であっても同条の要件を満たさない。
問題の所在(論点)
貸金業法18条1項において、弁済に先立って交付された将来の弁済内容を記載した書面(振込用紙一体型請求書)が、同条にいう「弁済を受けた場合」の書面交付として認められるか。また、それにより法43条1項のみなし弁済が適用されるか。
規範
貸金業法43条1項のみなし弁済規定は、貸金業者の業務規制遵守を前提とするものであり、その適用要件は厳格に解釈すべきである。同法18条1項の書面(18条書面)は、原則として「弁済を受けた都度、直ちに」交付しなければならない。したがって、貸金業者が弁済を受ける前に、将来の弁済内容を記載した書面を交付したとしても、法18条1項所定の要件を具備したことにはならず、特段の事情がない限り、みなし弁済は成立しない。
重要事実
事件番号: 平成15(オ)386 / 裁判年月日: 平成16年2月20日 / 結論: 破棄差戻
1 貸金業者との間の金銭消費貸借上の約定に基づき利息の天引きがされた場合における天引利息については,貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用はない。 2 貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に該当するためには,当該書面に同項所定の事項のすべてが記載されていなければならない。 3 貸金業者が貸金の弁済を受…
貸金業者である被上告人は、主債務者Dとの間で金銭消費貸借契約を締結し、代表取締役の上告人がこれを連帯保証した。被上告人は、利息制限法を超える利息を請求する際、返済期日の約10日前に、将来の利息額や充当関係を記載した振込用紙一体型の請求書を交付した。上告人(D)は、当該書面を用いて銀行振込により弁済を行った。被上告人は、振込後に別途書面を交付していなかったが、返済前の請求書交付をもって法18条1項の要件を満たすと主張した。
あてはめ
法18条1項の趣旨は、貸金業者の業務の適正化と資金需要者等の利益保護にある。本件において、被上告人が交付した書面は、あくまで返済期日前の請求段階で送付されたものであり、実際の弁済(振込)を受けた事実を確認して交付されたものではない。書面が振込用紙と一体であっても、弁済受領後に改めて書面が交付されない限り、法18条1項の義務を履行したとはいえない。また、法43条1項の適用要件を緩和すべき「特段の事情」も認められないため、制限超過利息の支払が有効な利息の弁済とみなされることはない。
結論
弁済前に交付された書面では法18条1項の要件を満たさず、本件各弁済について法43条1項の適用は否定される。したがって、利息制限法を超過する支払分は元本に充当され、過払金が生じる可能性がある。
実務上の射程
貸金業法(旧43条1項)に基づくみなし弁済の成否が争点となる事案において、書面交付の「同時性」の厳格さを論じる際のリーディングケースである。答案上は、法18条の規定(「弁済を受けた場合…直ちに」)の文言を重視し、事前交付の無効性を論理的に示すために用いる。
事件番号: 平成20(受)2114 / 裁判年月日: 平成22年6月4日 / 結論: その他
更生会社であった貸金業者において,届出期間内に届出がされなかった更生債権である過払金返還請求権につきその責めを免れる旨主張することは,(1)上記貸金業者の発行したカードは従前どおり使用することができる旨の社告が新聞に掲載された際に,上記貸金業者において,過払金返還請求権につき債権の届出をしないと更生会社がその責めを免れ…
事件番号: 平成16(受)424 / 裁判年月日: 平成18年1月24日 / 結論: 破棄差戻
1 利息制限法所定の制限を超える約定利息と共に元本を分割返済する約定の金銭消費貸借に,債務者が元本及び約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の約定が付されている場合,同約定中,債務者が約定利息のうち制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は,同法1条1項の趣旨に反して無効であ…
事件番号: 平成18(受)276 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: 破棄差戻
利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,その預金口座への払込みを受けた際に貸金業の規制等に関する法律18条1項に規定する書面を債務者に交付していなかったために同法43条1項の適用を受けられない場合において,当該貸金業者が,事前に債務者に約定の各回の返済期日及び返済金額等を記載した償還表を交付してい…
事件番号: 平成17(受)560 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 棄却
1 貸金業者は,貸付けに係る契約の性質上,貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に同項所定の事項について確定的な記載をすることが不可能な場合には,同書面に当該事項に準じた事項を記載すべきである。 2 貸金業者は,借主が借入限度額の範囲内であれば繰り返し借入れをすることができ,毎月定められた返済期日に最低返済…