1 貸金業者は,貸付けに係る契約の性質上,貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に同項所定の事項について確定的な記載をすることが不可能な場合には,同書面に当該事項に準じた事項を記載すべきである。 2 貸金業者は,借主が借入限度額の範囲内であれば繰り返し借入れをすることができ,毎月定められた返済期日に最低返済額以上の元金を経過利息と共に返済するという内容の金銭消費貸借基本契約に基づく貸付け(いわゆるリボルビング方式の貸付け)をしたときには,各貸付けごとに借主に交付すべき貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に,「返済期間及び返済回数」及び各回の「返済金額」として,当該貸付けを含めたその時点での全貸付けの残元利金について,毎月定められた返済期日に最低返済額及び経過利息を返済する場合の返済期間,返済回数及び各回の返済金額を記載すべきである。
1 貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に同項所定の事項について確定的な記載をすることが不可能な場合に同書面に記載すべき事項 2 いわゆるリボルビング方式の貸付けについて貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に「返済期間及び返済回数」及び各回の「返済金額」として記載すべき事項
貸金業の規制等に関する法律17条1項,貸金業の規制等に関する法律43条1項,利息制限法1条1項,貸金業の規制等に関する法律施行規則13条1項1号チ
判旨
リボルビング方式の貸付けにおいて、確定的な返済期間等の記載が不可能な場合であっても、貸金業者は17条書面への記載義務を免れない。この場合、最低返済額等の条件で返済を継続した場合の返済期間等を「準ずる事項」として記載する必要があり、その欠如はみなし弁済の適用を否定する理由となる。
問題の所在(論点)
リボルビング方式のように、将来の追加借入れや返済額の変動により確定的な「返済期間、返済金額等」の記載が困難な場合において、それらの記載を欠く書面の交付をもって法17条1項所定の書面の交付といえるか。法43条1項(みなし弁済)の適用の可否が問題となる。
規範
貸金業法(以下「法」)43条1項の適用要件は、資金需要者等の利益保護という法の趣旨に照らし、厳格に解釈すべきである。したがって、法17条1項所定の事項のうち確定的な記載が不可能な事項がある場合でも、貸金業者はその記載義務を免れず、当該事項に「準じた事項」を記載すべき義務を負う。当該事項に準じた事項の記載がないときは、17条書面の交付があったとは認められず、みなし弁済の規定は適用されない。
事件番号: 平成23(受)307 / 裁判年月日: 平成23年12月1日 / 結論: 破棄自判
いわゆるリボルビング方式の貸付けについて,貸金業者が貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第115号による改正前のもの。以下同じ。)17条1項に規定する書面として交付する書面に個々の貸付けの時点での残元利金につき最低返済額を毎月の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等の記載をしない場合は,当該貸金業者は,同項…
重要事実
貸金業者である上告人は、被上告人との間でリボルビング方式の金銭消費貸借契約を締結した。同契約では、借入限度額の範囲内で繰り返し借入れが可能であり、返済も最低返済額以上の任意の金額で行える仕組みであった。上告人は、貸付けの都度、書面(17条書面等)を交付していたが、それらには法17条1項6号等の「返済期間、返済回数、各回の返済金額」の記載がなかった。上告人は、契約の性質上これらを確定的に記載することは不可能であるから記載義務はないと主張し、制限超過利息の支払について法43条1項(みなし弁済)の適用を主張した。
あてはめ
本件貸付けはリボルビング方式であり、将来の追加借入れや返済行動に依存するため、確定的な返済期間等を記載することは不可能である。しかし、貸付け時点での残元利金について、最低返済額と経過利息のみを返済し続けた場合の返済期間等を記載することは可能である。このような記載があれば、借主は自己の債務の重さを認識し、漫然とした借入れを避けることができるため、確定的な記載に「準じた事項」としての意味を持つ。本件では、契約書や確認書にこのような準ずる事項の記載すら存在しない。したがって、17条書面の交付があったとは認められない。
結論
本件各貸付けについて法17条1項所定の書面の交付があったとは認められず、法43条1項(みなし弁済)の適用要件を欠く。したがって、制限超過利息部分は元本に充当され、過払金が発生する。
実務上の射程
現在は利息制限法および貸金業法の改正(みなし弁済規定の廃止)により、本判決の直接の結論が実務で争われることは少ないが、「確定的な記載が困難な場合でも趣旨に沿った準ずる記載を求める」という厳格な解釈手法は、法規制の形式的充足だけでなく実質的な情報提供を重視する姿勢として、他の消費者保護規制の解釈等において参照され得る。
事件番号: 平成17(受)1970 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: その他
1 貸金業者が返済方式を元利均等方式とする貸付けをするに際し,貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に当たるものとして借用証書の写しを借主に交付した場合において,(1)当該借用証書写しの「各回の支払金額」欄に,一定額の元利金の記載と共に「別紙償還表記載のとおりとします。」との記載があり,償還表は借用証書写し…
事件番号: 平成16(受)424 / 裁判年月日: 平成18年1月24日 / 結論: 破棄差戻
1 利息制限法所定の制限を超える約定利息と共に元本を分割返済する約定の金銭消費貸借に,債務者が元本及び約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の約定が付されている場合,同約定中,債務者が約定利息のうち制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は,同法1条1項の趣旨に反して無効であ…
事件番号: 平成15(オ)386 / 裁判年月日: 平成16年2月20日 / 結論: 破棄差戻
1 貸金業者との間の金銭消費貸借上の約定に基づき利息の天引きがされた場合における天引利息については,貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用はない。 2 貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に該当するためには,当該書面に同項所定の事項のすべてが記載されていなければならない。 3 貸金業者が貸金の弁済を受…
事件番号: 平成20(受)2114 / 裁判年月日: 平成22年6月4日 / 結論: その他
更生会社であった貸金業者において,届出期間内に届出がされなかった更生債権である過払金返還請求権につきその責めを免れる旨主張することは,(1)上記貸金業者の発行したカードは従前どおり使用することができる旨の社告が新聞に掲載された際に,上記貸金業者において,過払金返還請求権につき債権の届出をしないと更生会社がその責めを免れ…