1 貸金業者が返済方式を元利均等方式とする貸付けをするに際し,貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に当たるものとして借用証書の写しを借主に交付した場合において,(1)当該借用証書写しの「各回の支払金額」欄に,一定額の元利金の記載と共に「別紙償還表記載のとおりとします。」との記載があり,償還表は借用証書写しと併せて一体の書面をなすものとされ,各回の返済金額はそれによって明らかにすることとされていること,(2)「各回の支払金額」欄に元利金として記載されている一定額と償還表に記載された最終回の返済金額が一致していないことなど判示の事実関係の下では,償還表の交付がなければ,同項の要求する各回の「返済金額」の記載がある書面の交付があったとはいえない。 2 貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,民法704条の「悪意の受益者」であると推定される。
1 各回の返済金額について一定額の元利金の記載と共に別紙償還表記載のとおりとの記載のある借用証書の写しが借主に交付された場合において,当該償還表の交付がなければ貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面の交付があったとはいえないとされた事例 2 貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したことにつき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められない場合と民法704条の「悪意の受益者」
(1,2につき)貸金業の規制等に関する法律43条1項,利息制限法1条1項 (1につき)貸金業の規制等に関する法律17条1項,貸金業の規制等に関する法律施行規則13条1項1号チ (2につき)民法704条
判旨
貸金業者が制限超過利息を受領し、貸金業法43条1項のみなし弁済が適用されない場合、当該業者は、同項の適用があると認識し、かつその認識につきやむを得ないといえる特段の事情がない限り、民法704条の「悪意の受益者」と推定される。
問題の所在(論点)
1. 貸金業法17条1項所定の「返済金額」の記載として、最終回のみ金額が異なる場合に、償還表を交付せず定額の支払額のみを記載した書面を交付することで、43条1項のみなし弁済が認められるか。 2. 利息制限法を超える利息を受領した貸金業者が、民法704条の「悪意の受益者」にあたるか否かの判断基準(推定の成否)。
規範
事件番号: 平成18(受)276 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: 破棄差戻
利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,その預金口座への払込みを受けた際に貸金業の規制等に関する法律18条1項に規定する書面を債務者に交付していなかったために同法43条1項の適用を受けられない場合において,当該貸金業者が,事前に債務者に約定の各回の返済期日及び返済金額等を記載した償還表を交付してい…
1. 貸金業法17条1項の書面交付義務の趣旨は、契約内容の書面化により業務の適正運営を確保し紛争を防止することにあるため、記載内容が不正確または不明確な場合は、同法43条1項の適用要件を欠く。 2. 貸金業者は、43条1項の適用がない限り制限超過部分が不当利得になることを十分認識しているべき立場にある。したがって、同項の適用が認められない場合、業者が「同項の適用があるとの認識を有し、かつその認識に至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情」があるときでない限り、民法704条の「悪意の受益者」と推定される。
重要事実
貸金業者である被上告人は、上告人に対し制限超過利率で貸付けを行い、契約書面を交付した。当該書面には各回の支払額が記載されていたが、「別紙償還表のとおり」との記載があり、最終回の返済額が他の回と異なっていたにもかかわらず、一部の貸付けにおいて償還表が交付されたか不明であった。原審は、業者が43条1項の適用の可能性があると認識していれば悪意の受益者には当たらないとして、訴状送達時まで悪意性を否定した。
あてはめ
1. 17条1項9号等は各回の返済金額の記載を求めている。本件契約書面は最終回の金額が他と相違しており、書面の記載のみでは各回の返済額が正確に表示されているとはいえない。そのため、償還表が交付されていない限り、書面交付義務を尽くしたとは認められず、43条1項は適用されない。 2. 被上告人は制限超過利息を受領しており、43条1項の適用が否定される以上、悪意の受益者と推定される。原審は、業者が適用の可能性を認識していれば悪意ではないとしたが、これは「特段の事情」の有無を検討しておらず、法の趣旨に反する。
結論
貸金業法43条1項の適用が否定される場合、貸金業者は原則として悪意の受益者と推定される。本件においても、償還表の交付がなく書面不備がある場合や、特段の事情が認められない場合には、悪意の受益者として過払金に利息を付して返還すべきである。
実務上の射程
過払金返還請求訴訟において、貸金業者の「悪意」に関する立証責任を事実上転換させた重要な判例である。答案上は、まず43条1項の要件(17条・18条書面の不備等)を検討し、同項の適用が否定されることを前提に、本判例の「特段の事情がない限りの悪意推定」の規範を提示し、業者側の反証の有無を論じる流れとなる。
事件番号: 平成18(受)1666 / 裁判年月日: 平成19年7月17日 / 結論: その他
貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,民法704条の「悪意の受…
事件番号: 平成23(受)307 / 裁判年月日: 平成23年12月1日 / 結論: 破棄自判
いわゆるリボルビング方式の貸付けについて,貸金業者が貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第115号による改正前のもの。以下同じ。)17条1項に規定する書面として交付する書面に個々の貸付けの時点での残元利金につき最低返済額を毎月の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等の記載をしない場合は,当該貸金業者は,同項…
事件番号: 平成21(受)47 / 裁判年月日: 平成21年9月4日 / 結論: その他
貸金業者が借主に対し貸金の支払を請求し借主から弁済を受ける行為が不法行為を構成するのは,貸金業者が当該貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに,あえてその請求をしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られ,この理は…
事件番号: 平成17(受)560 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 棄却
1 貸金業者は,貸付けに係る契約の性質上,貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に同項所定の事項について確定的な記載をすることが不可能な場合には,同書面に当該事項に準じた事項を記載すべきである。 2 貸金業者は,借主が借入限度額の範囲内であれば繰り返し借入れをすることができ,毎月定められた返済期日に最低返済…