貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,民法704条の「悪意の受益者」であると推定される。
貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したことにつき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められない場合と民法704条の「悪意の受益者」
民法704条,貸金業の規制等に関する法律43条1項,利息制限法1条1項
判旨
貸金業者が制限超過部分を受領した場合、貸金業法43条1項の適用が認められない限り、原則として民法704条の「悪意の受益者」と推定される。この推定を覆すには、同項の適用があると認識し、かつそう認識したことにつきやむを得ないといえる特段の事情が必要である。
問題の所在(論点)
利息制限法を超える利息を受領した貸金業者が、不当利得返還請求における民法704条前段の「悪意の受益者」にあたるか否かの判断基準(推定の成否と覆滅事由)。
規範
貸金業者が利息制限法の制限利率を超える利息を受領した場合、貸金業法43条1項(みなし弁済)の適用がない限り、制限超過部分は元本に充当され、完済後の過払金は不当利得となる。貸金業者はこの仕組みを熟知しているはずであるから、同項の適用が認められないときは、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した「悪意の受益者」(民法704条)であると推定される。この推定を免れるには、貸金業者が同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情があることを要する。
重要事実
事件番号: 平成18(受)276 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: 破棄差戻
利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,その預金口座への払込みを受けた際に貸金業の規制等に関する法律18条1項に規定する書面を債務者に交付していなかったために同法43条1項の適用を受けられない場合において,当該貸金業者が,事前に債務者に約定の各回の返済期日及び返済金額等を記載した償還表を交付してい…
貸金業者である被上告人は、上告人とカードローン契約を締結し、制限利率を超える利息で貸付けを継続した。上告人は不当利得返還請求を行い、過払金に対する利息(民法704条)を求めた。被上告人は訴訟において、みなし弁済(法43条1項)の適用を主張立証せず、各貸付債権が別個独立であることを前提に充当計算を行えば債権が残存すると認識していたため、悪意の受益者ではないと反論した。原審は、被上告人の計算方法にも相当な理由があるとして悪意を否定したため、上告人が上告した。
あてはめ
被上告人は貸金業者であり、制限超過部分が原則として元本に充当され、過払金が不当利得となることを認識しているべき立場にある。本件において、被上告人はみなし弁済(法43条1項)の適用について主張立証すらしておらず、受領時点で同項が適用されると認識していたともいえない。したがって、個別の貸付債権が別個であると誤信して計算していたとしても、それは「悪意の受益者」との推定を覆す「特段の事情」にはあたらない。被上告人は、過払金が発生した時点から悪意の受益者として法定利息の付加義務を負うと解される。
結論
貸金業者がみなし弁済の適用を前提とする特段の事情を立証しない限り、悪意の受益者と推定される。原審が業者の充当計算の主観のみで悪意を否定した判断は違法であり、破棄を免れない。
実務上の射程
過払金返還請求訴訟における「利息(過払金利息)」の発生を基礎づけるリーディングケースである。答案上は、貸金業者のプロ性を根拠に、悪意の推定→特段の事情による反証という二段構えの判断枠組みを明示することが肝要である。実務上、この「特段の事情」は極めて厳格に解されており、事実上、貸金業者は過払金発生時から年5%(改正前)の利息を付して返還する義務を負うことが多い。
事件番号: 平成21(受)47 / 裁判年月日: 平成21年9月4日 / 結論: その他
貸金業者が借主に対し貸金の支払を請求し借主から弁済を受ける行為が不法行為を構成するのは,貸金業者が当該貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに,あえてその請求をしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られ,この理は…
事件番号: 平成17(受)1970 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: その他
1 貸金業者が返済方式を元利均等方式とする貸付けをするに際し,貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に当たるものとして借用証書の写しを借主に交付した場合において,(1)当該借用証書写しの「各回の支払金額」欄に,一定額の元利金の記載と共に「別紙償還表記載のとおりとします。」との記載があり,償還表は借用証書写し…
事件番号: 平成18(受)1187 / 裁判年月日: 平成19年2月13日 / 結論: その他
1 貸主と借主との間で継続的に貸付けが繰り返されることを予定した基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し,その後,第2の貸付けに係る債務が発生したときには,特段の事情のない限り,第1…
事件番号: 平成20(受)1729 / 裁判年月日: 平成21年7月14日 / 結論: その他
期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払の任意性を初めて否定した最高裁平成16年(受)第1518号同18年1月13日第二小法廷判決・民集60巻1号1頁の言渡し日以前にされた制限超過部分の支払について,貸金業者が同特約の下でこれを受領したことのみを理由として当該貸金業者を民法704条の「悪意の受益…