1 貸主と借主との間で継続的に貸付けが繰り返されることを予定した基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し,その後,第2の貸付けに係る債務が発生したときには,特段の事情のない限り,第1の貸付けに係る過払金は,第1の貸付けに係る債務の各弁済が第2の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず,第2の貸付けに係る債務には充当されない。 2 商行為である貸付けに係る債務の弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において,悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は,民法所定の年5分である。
1 貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合に第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生しその後第2の貸付けに係る債務が発生したときにおける第1の貸付けに係る過払金の同債務への充当の可否 2 商行為である貸付けに係る債務の弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率
(1,2につき)利息制限法1条1項 (1につき)民法488条 (2につき)民法404条,民法704条,商法514条
判旨
貸金業者が利息制限法の制限速度を超える利息を受領した場合、特段の事情がない限り、民法704条の「悪意の受益者」と推定される。また、過払金返還債務は商行為によって生じた債務等ではないため、付すべき利息の利率は民法所定の年5分となる。
問題の所在(論点)
1. 制限超過利息を受領した貸金業者が民法704条の「悪意の受益者」にあたるか。 2. 過払金返還債務に付すべき利息の利率は、民法所定の年5分か、商法所定の年6分か。
規範
1. 貸金業者が利息制限法所定の制限を超える利息を利息として受領した場合、特段の事情がない限り、民法704条の「悪意の受益者」と推定される。2. 悪意の受益者が返還すべき利益に付すべき利息の利率は、民法404条所定の年5分(法定利率)である。これは、過払金返還債務が商行為等によって生じた債務ではないためである。
事件番号: 平成18(受)1666 / 裁判年月日: 平成19年7月17日 / 結論: その他
貸金業者が利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,民法704条の「悪意の受…
重要事実
上告人(貸金業者)は、被上告人(顧客)との間で継続的な金銭消費貸借契約を締結し、利息制限法を超える利息を受領していた。被上告人が支払った金額が制限利息に基づき計算した元本に完済後も超過して支払われていたため、過払金が発生。被上告人は、過払金の返還とともに、上告人が「悪意の受益者」にあたるとして、民法704条に基づき法定利息を付して支払うよう求めた。原審は、貸金業者は法律上の原因がないことを知っていたものと推認し、商事法定利率(年6分)の適用を認めたため、上告人が上告した。
あてはめ
1. 貸金業者は業として貸付けを行う者であり、利息制限法の規定を熟知しているべき立場にある。法律上の原因がないことを知らずに受領したといえる特段の事情(みなし弁済が成立すると信じるに足りる合理的理由等)がない限り、悪意の受益者と解するのが相当である。 2. 過払金返還義務は、不当利得という法の規定により発生する債務であり、商行為によって生じた債務(商法514条)や商行為を基礎とする付随的債務にはあたらない。したがって、商事利率ではなく民法404条の法定利率を適用すべきである。
結論
貸金業者は原則として悪意の受益者にあたり、過払金には民法所定の年5分の利息を付して返還しなければならない。商事利率を適用した原判決は破棄される。
実務上の射程
利息制限法超過の事案において、業者の悪意性を基礎づける強力な武器となる判例である。答案では、まず過払金の発生を指摘し、次に704条の「悪意」の検討において本判例の規範(特段の事情のない限りの推定)を用いる。利率については、商行為性の否定を論理の軸として、年5分の民事利率を導く。
事件番号: 平成19(受)996 / 裁判年月日: 平成21年4月14日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者が,貸付けに係る債務につき,借主が期限の利益を喪失した後に,借主に対して残元利金の一括支払を請求せず,借主から長期間多数回にわたって分割弁済を受けていた場合において,貸金業者が,債務の弁済を受けるたびに受領した金員を利息ではなく損害金へ充当した旨記載した領収書兼利用明細書を交付していたから,期限の利益の喪失を宥…
事件番号: 平成18(受)276 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: 破棄差戻
利息制限法1条1項所定の制限を超える利息を受領した貸金業者が,その預金口座への払込みを受けた際に貸金業の規制等に関する法律18条1項に規定する書面を債務者に交付していなかったために同法43条1項の適用を受けられない場合において,当該貸金業者が,事前に債務者に約定の各回の返済期日及び返済金額等を記載した償還表を交付してい…
事件番号: 平成21(受)47 / 裁判年月日: 平成21年9月4日 / 結論: その他
貸金業者が借主に対し貸金の支払を請求し借主から弁済を受ける行為が不法行為を構成するのは,貸金業者が当該貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに,あえてその請求をしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られ,この理は…
事件番号: 平成17(受)1970 / 裁判年月日: 平成19年7月13日 / 結論: その他
1 貸金業者が返済方式を元利均等方式とする貸付けをするに際し,貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に当たるものとして借用証書の写しを借主に交付した場合において,(1)当該借用証書写しの「各回の支払金額」欄に,一定額の元利金の記載と共に「別紙償還表記載のとおりとします。」との記載があり,償還表は借用証書写し…