宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意は,同法12条1項及び13条1項の趣旨に反するものとして,公序良俗に反し,無効である。
宅地建物取引業法3条1項の免許を受けない者が宅地建物取引業を営むために免許を受けて宅地建物取引業を営む者からその名義を借り,当該名義を借りてされた取引による利益を両者で分配する旨の合意の効力
宅地建物取引業法12条1項,宅地建物取引業法13条1項,民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)90条
判旨
宅地建物取引業法12条1項及び13条1項に違反して、無免許者が宅建業者の名義を借りて取引を行い、その利益を分配する旨の合意は、同法の免許制度を潜脱する反社会性の強いものであり、公序良俗に反し無効である。
問題の所在(論点)
無免許者が宅建業者の名義を借りて不動産取引を行い、その利益を分配する旨の合意(名義貸し合意及び利益分配合意)が、公序良俗に反し無効となるか。
規範
宅地建物取引業法が採用する免許制度(12条1項、13条1項)は、業務の適正な運営と取引の公正を確保し、購入者等の利益保護を図ることを目的とする。したがって、無免許者が宅地建物取引業を営むために宅建業者からその名義を借りる旨の合意、及びこれと一体としてなされた取引利益を分配する旨の合意は、同法の趣旨に反し、公序良俗(民法90条)に反して無効である。
重要事実
無免許者である被上告人は、不動産取引事業を計画し、宅建業者である上告人の名義を用いて本件不動産の売買を行う合意(本件合意)を上告人と締結した。本件合意の内容は、名義を上告人とするが、事務・責任は全て被上告人が負い、売却利益から名義貸し料300万円を差し引いた残額を被上告人が取得するというものであった。被上告人はこれに基づき、上告人に対し利益の残額等の支払を求めて提訴した。
事件番号: 平成22(受)1784 / 裁判年月日: 平成23年7月7日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合において,上記債権を譲渡した業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんにより,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に当然に移転する,あるいは,当該…
あてはめ
被上告人は無免許者でありながら、本件不動産の売却先の選定、契約書案の作成等の事務を主体的に行っており、実質的に宅地建物取引業を営んでいるといえる。本件合意は、被上告人が上告人の名義を借りて取引を行い、その利益を分配することを内容とするものであり、宅建業法12条1項(無免許営業の禁止)及び13条1項(名義貸しの禁止)に直接抵触する。このような合意は、同法が構築した免許制度を根底から潜脱するものであり、反社会性が顕著であると解される。したがって、名義貸し合意と一体である利益分配の合意も、公序良俗に反すると評価される。
結論
本件合意は公序良俗に反し無効である。したがって、被上告人は本件合意に基づく請求をなしえず、原判決は破棄・差戻しを免れない。
実務上の射程
行政取締法規に違反する合意の私法上の効力が問われる場面で活用する。単なる取締規定違反にとどまらず、法目的(免許制度の維持)を潜脱する反社会性が認められる場合には、民法90条により合意が無効となることを示す射程を持つ。答案では、契約の効力を否定し、不当利得返還請求等の可否を論じる際の前提として使用する。
事件番号: 令和2(受)763 / 裁判年月日: 令和3年3月2日 / 結論: 破棄自判
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律22条に基づくものとして各省各庁の長から権限の委任を受けた機関により補助事業者等に対してされた補助金相当額の納付を条件とする間接補助事業等により取得された財産の処分の承認は,次の⑴~⑶など判示の事情の下では,補助事業者等は間接補助事業者等に対し事業により取得した財産の処分につ…
事件番号: 令和5(受)2461 / 裁判年月日: 令和7年6月30日 / 結論: 破棄自判
不動産の管理業等を目的とする株式会社であるXは、甲別荘地内に土地を所有する者との間で個別に管理契約を締結し、甲別荘地において上記管理契約に基づく管理業務を行っており、Yは、甲別荘地内に土地を所有するものの、Xとの間で上記管理契約を締結せず、管理費を支払っていない場合において、次の⑴~⑸など判示の事情の下では、Yは、Xに…
事件番号: 令和4(行ヒ)317 / 裁判年月日: 令和5年12月12日 / 結論: 破棄自判
1 公職選挙法251条の規定により遡って大阪市の議会の議員の職を失った当選人は、同市に対し、当該当選人を唯一の所属議員とする会派の行った大阪市会政務活動費の交付に関する条例(平成13年大阪市条例第25号)5条所定の政務活動に関し、不当利得返還請求権を有することはない。 2 公職選挙法251条の規定により遡って大阪市の議…
事件番号: 令和6(受)1067 / 裁判年月日: 令和7年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】別荘地の管理業務が、別荘地の基本的な機能や質を確保するために必要であり、未契約の所有者のみを利益享受から排除することが困難な性質を有する場合、当該所有者は、たとえ土地を利用しておらず管理業務を望んでいなかったとしても、法律上の原因なく利益を受け、管理者に損失を与えたものとして、不当利得返還義務を負…