信用保証協会と金融機関との間で保証契約が締結され融資が実行された後に主債務者が中小企業者の実体を有しないことが判明した場合において,上記保証契約の当事者がそれぞれの業務に照らし,上記の場合が生じ得ることを想定でき,その場合に信用保証協会が保証債務を履行しない旨をあらかじめ定めるなどの対応を採ることも可能であったにもかかわらず,上記当事者間の信用保証に関する基本契約及び上記保証契約等にその場合の取扱いについての定めが置かれていないなど判示の事情の下では,主債務者が中小企業者の実体を有することという信用保証協会の動機は,それが表示されていたとしても,当事者の意思解釈上,上記保証契約の内容となっていたとは認められず,信用保証協会の上記保証契約の意思表示に要素の錯誤はない。
信用保証協会と金融機関との間で保証契約が締結され融資が実行された後に主債務者が中小企業者の実体を有しないことが判明した場合において,信用保証協会の保証契約の意思表示に要素の錯誤がないとされた事例
民法95条,民法446条
判旨
信用保証協会が主債務者を中小企業者と誤信して保証契約を締結した場合でも、事後的にその実体がないと判明した際に契約を無効とする合意が当事者間に認められない限り、要素の錯誤には当たらない。金融機関の調査義務違反がある場合は、錯誤無効ではなく免責条項の問題として処理すべきである。
問題の所在(論点)
主債務者が保証対象となる中小企業者であるとの誤認(動機の錯誤)が、保証契約の「要素の錯誤」として無効原因となるか、その判断枠組みと意思解釈のあり方が問題となる。
規範
動機の錯誤が法律行為の要素の錯誤(民法95条:当時)となるには、動機が相手方に表示されて内容となり、かつ錯誤がなければ意思表示をしなかったといえる必要がある。もっとも、表示された動機が当事者の意思解釈上「法律行為の内容」と認められない限り、要素の錯誤とはならない。金融実務においては、事後的に誤認が判明した場合に契約の効力を否定することまでを双方が前提としていたかが判断の基準となる。
重要事実
銀行(上告人)は、中小企業(本件会社)から融資の申込みを受け、信用保証協会(被上告人)に保証を依頼した。本件会社は市長からセーフティネット保証の認定を受けていたが、保証契約締結の直前に事業を譲渡しており、実質的には中小企業としての実体を失っていた。銀行・協会双方がその事実を知らずに保証契約を締結し、融資が実行された。後に本件会社が倒産し、協会が代位弁済を行った後、協会は「主債務者が中小企業であることは契約の重要要素であり、錯誤無効である」として、銀行に対し代位弁済金の返還を求めた。
あてはめ
協会にとって主債務者が中小企業であることは動機であるが、金融機関が調査を尽くしても事後的に実体がないと判明する事態は避けられない。これを一律に無効とすれば、金融機関は融資を躊躇し、中小企業金融の円滑化という制度目的に反する。また、双方は融資・保証のプロであり、実体がない場合の効力否定をあらかじめ定めることも可能であったのに、基本契約等にその定めがない。したがって、実体の有無を契約の効力否定にまで結びつける意思(法律行為の内容とする意思)があったとは認められない。なお、銀行に調査義務違反がある場合は、錯誤無効ではなく免責条項による解決を図るべきである。
結論
本件会社が中小企業の実体を有するという動機は、表示されていたとしても法律行為の内容とはなっておらず、要素の錯誤には当たらない。したがって、保証契約は有効であり、不当利得返還請求は認められない。
実務上の射程
金融機関と保証協会の関係において、主債務者の属性に関する錯誤を制限的に解釈した。答案上は、動機の錯誤の一般論(表示+内容化)を論じた上で、本判例を参考に「契約の効力を否定するまでの合意」という高いハードルを設定し、さらに免責条項等の代替的救済手段の存在を考慮して、安易な無効化を否定する論理として活用する。
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