消費者契約法9条1号は,憲法29条に違反しない。
消費者契約法9条1号と憲法29条
憲法29条,消費者契約法9条
判旨
消費者契約法9条1号が事業者の財産権を制限することは、消費者と事業者の構造的格差に鑑みた消費者の不利益防止という正当な目的があり、手段も平均的な損害を超える部分に限定され合理的なため、憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
消費者契約法9条1号による、損害賠償額の予定等の効力制限が、憲法29条(財産権)に違反するか。
規範
財産権に対する規制が憲法29条2項にいう公共の福祉に適合するか否かは、規制の目的、必要性、内容、制限される財産権の種類・性質及び制限の程度等を比較考量して判断すべきである。具体的には、立法目的が正当であり、かつ、その目的を達成するための手段が必要かつ合理的であれば、当該規制は合憲である。
重要事実
消費者契約法9条1号は、消費者契約の解除に伴う損害賠償額の予定や違約金の定めについて、当該事業者に生ずべき「平均的な損害」の額を超える部分を無効と規定している。上告人は、同条項が事業者の契約の自由や財産権を不当に侵害するものであり、憲法29条に違反すると主張して争った。
事件番号: 平成26(受)1817 / 裁判年月日: 平成27年6月1日 / 結論: 破棄差戻
債務者が異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をした場合において,譲渡人に対抗することができた事由の存在を譲受人が知らなかったとしても,このことについて譲受人に過失があるときには,債務者は,当該事由をもって譲受人に対抗することができる。
あてはめ
まず、消費者と事業者の間には情報の質・量や交渉力の構造的格差があり、消費者の利益が不当に侵害されるおそれがある。同条項は高額な賠償請求による不当な出えんを防止し、消費者保護を図るもので、目的は正当である。次に、手段の相当性について、同条項は賠償予定条項を全面的に禁止するものではなく、平均的な損害を超える部分のみを無効とするにとどまる。したがって、目的達成のための手段として必要性や合理性を欠くものとはいえない。
結論
消費者契約法9条1号は、憲法29条に違反しない。
実務上の射程
本判決は、消費者保護を目的とした私法上の契約の自由に対する介入が、憲法29条2項の公共の福祉による正当な制限として認められることを明示したものである。答案上は、財産権の規制に関する二重の基準論等を踏まえた判断枠組み(目的・手段審査)を明示しつつ、消費者契約法の立法趣旨(格差是正)を手段の合理性根拠として活用する際に参照すべきである。
事件番号: 平成27(受)1394 / 裁判年月日: 平成28年12月19日 / 結論: 破棄自判
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