税関職員が,郵便物の輸出入の簡易手続として,輸入禁制品の有無等を確認するため,郵便物を開披し,その内容物を目視するなどした上,内容物を特定するため,必要最小限度の見本を採取して,これを鑑定に付すなどした本件郵便物検査(判文参照)を,裁判官の発する令状を得ずに,郵便物の発送人又は名宛人の承諾を得ることなく行うことが,関税法(平成24年法律第30号による改正前のもの)76条,関税法(平成23年法律第7号による改正前のもの)105条1項1号,3号により許容されていると解することは,憲法35条の法意に反しない。
郵便物の輸出入の簡易手続として税関職員が無令状で行った検査等について,関税法(平成24年法律第30号による改正前のもの)76条,関税法(平成23年法律第7号による改正前のもの)105条1項1号,3号によって許容されていると解することが憲法35条の法意に反しないとされた事例
憲法35条,関税法(平成24年法律第30号による改正前のもの)76条,関税法(平成23年法律第7号による改正前のもの)105条1項1号,関税法(平成23年法律第7号による改正前のもの)105条1項3号,関税法(平成23年法律第7号による改正前のもの)105条3項
判旨
国際郵便物に対する令状なき税関検査は、刑事責任追及を直接の目的とせず、行政上の目的達成のために必要かつ相当な限度で行われる限り、憲法35条に反しない。本件のような開披、目視、微量の見本採取および鑑定は、関税法上の検査として許容される。
問題の所在(論点)
関税法に基づく令状なき国際郵便物の検査(開披・内容物確認・見本採取・鑑定)が、憲法35条の令状主義に反し、証拠能力が否定されるか。
規範
1. 憲法35条の保障は行政手続にも及び得るが、刑事責任追及を直接の目的としない手続については、直ちに令状を要するものではない。 2. 国際郵便物の税関検査は、(1)行政上の目的達成のため不可欠であり、(2)国際的にも広く行われプライバシー等の期待が相対的に低く、(3)郵便事業者の占有下で行われ発送人等の占有を直接排除するものではない。 3. したがって、具体的な状況下で、目的の実効性確保のために必要かつ相当な限度と認められる検査方法は、令状や承諾がなくても許容され、憲法35条に反しない。
事件番号: 昭和53(あ)157 / 裁判年月日: 昭和54年5月10日 / 結論: 棄却
許可を受けないで覚せい剤を輸入した者に対し関税法一一一条の罪の成立を認めても、憲法三八条一項にいう「自己に不利益な供述」を強要したことにはならない。
重要事実
東京税関の職員が、イランから届いた宛先不明瞭な国際郵便物につき、輸入禁制品の有無を確認するため、外装箱を開披してプラスチック製ボトル2本を確認した。その後、TDS検査で覚せい剤反応が出たため、ボトルの内蓋を開け、内容物である白色固形物からごく微量を破砕して採取し、仮鑑定および本鑑定を実施した。一連の検査は令状なく、発送人・名宛人の承諾も得ずに行われたが、鑑定の結果覚せい剤と判明した後に差押許可状を得て差し押さえた。
あてはめ
本件検査は、関税の公平な賦課徴収等の行政目的のために行われ、刑事責任追及を直接の目的とするものではない。具体的手法についても、輸入禁制品の疑いが強まった段階で内容物特定のために必要最小限度の見本を採取しており、行政目的達成のために必要かつ相当な限度内といえる。また、国際郵便物の性質上、プライバシーへの期待は限定的であり、郵便事業者が提示した物品を検査しているに過ぎないため、権利侵害の程度も相対的に低い。したがって、本件検査は関税法上許容される適法なものであり、捜査目的の強制処分とは認められない。
結論
本件検査は憲法35条に違反せず、これによって得られた覚せい剤および鑑定書等の証拠能力は肯定される。
実務上の射程
行政調査と強制捜査の区別、および憲法35条の行政手続への適用範囲に関するリーディングケース。国際郵便物特有の事情(プライバシー期待の低さ等)が強調されているため、国内郵便物や一般の所持品検査にそのまま射程が及ぶわけではない点に注意が必要。答案では『必要かつ相当な限度』のあてはめで、検査の段階的進展(疑いの程度に応じた行為の態様)を論じる際に活用する。
事件番号: 平成14(あ)409 / 裁判年月日: 平成15年11月26日 / 結論: 棄却
大韓民国の裁判所に起訴された共犯者が,自らの意思で任意に供述できるよう手続的保障がされている同国の法令にのっとり,同国の裁判官,検察官及び弁護人が在廷する公開の法廷において,質問に対し陳述を拒否することができる旨告げられた上でした供述を記載した同国の公判調書は,刑訴法321条1項3号にいう「特に信用すべき情況」の下にさ…
事件番号: 昭和54(あ)2089 / 裁判年月日: 昭和55年6月11日 / 結論: 棄却
密輸入にかかる本件覚せい剤(判文参照)を没収するについては、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法二条二項に定める公告の方法は、検察庁の掲示場における掲示で足りる。
事件番号: 昭和53(あ)11 / 裁判年月日: 昭和54年5月29日 / 結論: 棄却
一 覚せい剤について不正の行為により関税を免れた者に対し関税法一一〇条の罪の成立を認めても、憲法三八条一項にいう「自己に不利益な供述」を強要したことにはならない。 二 覚せい剤について不正の行為により関税を免れた者は、関税法一一〇条一項一号に掲げる者に該当する。
事件番号: 平成23(あ)469 / 裁判年月日: 平成23年10月26日 / 結論: 棄却
1 訴訟条件である告発の存在は,上告審において,証拠調手続によることなく,適宜の方法で認定することができ,関税法140条所定の告発書の謄本が原判決後に原審に提出されて記録につづられ,その写しが上告審から弁護人に送付されている事情の下では,上告審は上記謄本により告発の事実を認定することができる。 2 1,2審が訴訟条件で…