密輸入にかかる本件覚せい剤(判文参照)を没収するについては、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法二条二項に定める公告の方法は、検察庁の掲示場における掲示で足りる。
覚せい剤を没収するについて刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法二条二項に定める公告の方法が検察庁の掲示場における掲示で足りるとされた事例
刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法2条,覚せい剤取締法41条の6,関税法118条1項,関税法118条3項1号ロ
判旨
覚せい剤のように何人も合法的に所有できず、法的に容認された価額が形成され得ない物は、その価額がないものとみなせるため、第三者没収手続における公告は検察庁の掲示場への掲示のみで足りる。
問題の所在(論点)
第三者所有物である覚せい剤を没収する場合において、何人も合法的に所有できない性質を持つ物の「価額」をいかに解すべきか。また、その公告手続として検察庁の掲示場における掲示のみで足りるか。
規範
「刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法」2条2項に基づき、没収すべき物の価額が5000円に満たないことが明らかなときは、官報や新聞への掲載を要せず、検察庁の掲示場における掲示のみで公告手続として適法となる。この「価額」の判断にあたっては、当該物件の適法な所有の可否および法的容認性のある市場価格形成の可能性を基準とする。
重要事実
被告人は、韓国在住の密売人と思われる人物から依頼を受け、覚せい剤を日本国内へ密輸入した。第一審判決は、この第三者所有に属する本件覚せい剤の没収を言い渡した。この際、没収手続としての公告は検察庁の掲示場における掲示のみで行われたが、弁護人はこれが公告手続を定めた法律に反し、憲法31条(適正手続)等に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和53(あ)157 / 裁判年月日: 昭和54年5月10日 / 結論: 棄却
許可を受けないで覚せい剤を輸入した者に対し関税法一一一条の罪の成立を認めても、憲法三八条一項にいう「自己に不利益な供述」を強要したことにはならない。
あてはめ
本件没収対象である覚せい剤は、法令により所持・所有が厳格に禁止されており、何人もこれを合法的に所有することができない性質を有している。したがって、これについて法的に容認し得る価額が形成される余地はない。そうである以上、本件覚せい剤の価額は「ないもの(5000円未満)」と解するのが相当である。ゆえに、簡略化された公告方法である検察庁の掲示場における掲示のみで、同法2条2項所定の手続を充足しているといえる。
結論
本件覚せい剤の没収手続に違法はなく、検察庁の掲示場における掲示のみによる公告は適法である。
実務上の射程
禁制品の没収における第三者告知・公告手続の簡略化を認めた実務上重要な判断である。答案上では、第三者没収における適正手続(憲法31条、最判昭37・11・28)の具現化としての応急措置法の運用において、没収対象物の法的性質に着目して手続の要否・程度を判断する際の論理として活用できる。
事件番号: 昭和53(あ)11 / 裁判年月日: 昭和54年5月29日 / 結論: 棄却
一 覚せい剤について不正の行為により関税を免れた者に対し関税法一一〇条の罪の成立を認めても、憲法三八条一項にいう「自己に不利益な供述」を強要したことにはならない。 二 覚せい剤について不正の行為により関税を免れた者は、関税法一一〇条一項一号に掲げる者に該当する。
事件番号: 昭和49(あ)1185 / 裁判年月日: 昭和49年9月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未決の余罪を量刑の資料として考慮することは、実質的に当該余罪を処罰する趣旨でない限り、憲法31条に違反せず許容される。 第1 事案の概要:被告人の刑事裁判において、第一審裁判所が被告人の余罪を量刑の資料として用いた。弁護人は、これが実質的に余罪を処罰するものであるとして、憲法31条(適正手続)違反…
事件番号: 平成27(あ)416 / 裁判年月日: 平成28年12月9日 / 結論: 棄却
税関職員が,郵便物の輸出入の簡易手続として,輸入禁制品の有無等を確認するため,郵便物を開披し,その内容物を目視するなどした上,内容物を特定するため,必要最小限度の見本を採取して,これを鑑定に付すなどした本件郵便物検査(判文参照)を,裁判官の発する令状を得ずに,郵便物の発送人又は名宛人の承諾を得ることなく行うことが,関税…
事件番号: 平成13(あ)275 / 裁判年月日: 平成13年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚せい剤取締法41条1項の覚せい剤輸入罪は、船舶により領海外から搬入する場合、領土への陸揚げの時点で既遂に達する。公海上で覚せい剤を受け取り、これを本邦領海内に搬入したのみでは、いまだ既遂には至らない。 第1 事案の概要:被告人らは、運行を支配している小型船舶を用いて、公海上で他の船舶から覚せい剤…