大韓民国の裁判所に起訴された共犯者が,自らの意思で任意に供述できるよう手続的保障がされている同国の法令にのっとり,同国の裁判官,検察官及び弁護人が在廷する公開の法廷において,質問に対し陳述を拒否することができる旨告げられた上でした供述を記載した同国の公判調書は,刑訴法321条1項3号にいう「特に信用すべき情況」の下にされた供述を録取した書面に当たる。
大韓民国の裁判所に起訴された共犯者の公判廷における供述を記載した同国の公判調書と刑訴法321条1項3号にいう「特に信用すべき情況」
刑訴法321条1項3号
判旨
外国裁判所の公判調書について、当該国の法令に基づく適正な手続保障の下で作成され、内容が不可欠なものである場合には、刑訴法321条1項3号の「特に信用すべき情況」が認められ、証拠能力が肯定される。
問題の所在(論点)
日本国外にいる供述者の外国裁判所における供述録取書面について、刑訴法321条1項3号の伝聞例外要件(特信情況)を認めて証拠能力を付与することができるか。
規範
刑訴法321条1項3号にいう「特に信用すべき情況」(特信情況)とは、供述が外部的な付随的事情により虚偽の入り込む余地がなく、高度の蓋然性をもって信頼できる状態を指す。外国裁判所での供述については、①当該国の法令にのっとり、裁判官、検察官、弁護人が在廷する公開の法廷でなされたこと、②黙秘権の告知などの手続的保障がなされていること、③自らの意思で任意に供述できる状況であったこと等の事情を総合し、外部的状況から供述の信用性が高度に保障されている場合に、特信情況を認めることができる。
重要事実
被告人は覚せい剤密輸入の罪で起訴された。検察官は、共犯者Aが韓国のソウル地方法院(裁判所)の公判廷で行った供述を録取した公判調書の証拠採用を請求した。Aは日本国外に居住しており、日本の公判期日に出頭することが不可能であった。当該調書の内容は、密輸入の謀議内容を証明するために不可欠な証拠であった。Aの供述は、韓国の法令に従い、裁判官・検察官・弁護人の在廷する公開法廷において、陳述拒否権の告知を受けた上で、任意になされたものであった。
事件番号: 平成11(あ)400 / 裁判年月日: 平成12年10月31日 / 結論: 棄却
日本国からアメリカ合衆国に対する捜査共助の要請に基づき、同国に在住する者が、黙秘権の告知を受け、同国の捜査官及び日本の検察官の質問に対して任意に供述し、公証人の面前において、偽証罪の制裁の下で、記載された供述内容が真実であることを言明する旨を記載するなどして作成した供述書は、刑訴法三二一条一項三号にいう特に信用すべき情…
あてはめ
まず、供述者Aは日本国外に滞在しているため「公判期日において供述することができないとき」に該当する。また、本件調書は密輸入の謀議を証明する「不可欠な証拠」である(不可欠性)。次に特信情況についてみるに、当該供述は、適正な手続保障(裁判官・弁護人の立ち会い、公開法廷、黙秘権告知)が図られている韓国の裁判手続においてなされたものである。このような厳格な司法的規律の下で録取された供述は、虚偽が介入する危険が極めて低く、外部的状況によって信用性が高度に保障されているといえる。したがって、特信情況が認められる。
結論
本件外国裁判所の公判調書は、刑訴法321条1項3号の要件を満たすため、証拠能力が認められる。
実務上の射程
外国の刑事手続で作成された書面の証拠能力が問題となる事案(国際的な組織犯罪や密輸等)において、321条1項3号のあてはめの指針となる。日本の裁判官の前での供述ではないため、単に「法廷供述だから」とするのではなく、当該国の手続が日本の司法水準に照らして適正な保障(特に弁護人の立ち会いと黙秘権告知)を備えているかを事実から丁寧に拾って論じる必要がある。
事件番号: 平成24(あ)724 / 裁判年月日: 平成25年10月21日 / 結論: 棄却
密輸組織が関与する覚せい剤の密輸入事件について,被告人の覚せい剤に関する認識を否定して無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,この種事案に適用されるべき経験則等を示しつつ,被告人は覚せい剤が隠匿されたスーツケースを日本に運ぶよう指示又は依頼を受けて来日したと認定するなどした上,被告人の覚せい剤に関する認識を…
事件番号: 平成27(あ)416 / 裁判年月日: 平成28年12月9日 / 結論: 棄却
税関職員が,郵便物の輸出入の簡易手続として,輸入禁制品の有無等を確認するため,郵便物を開披し,その内容物を目視するなどした上,内容物を特定するため,必要最小限度の見本を採取して,これを鑑定に付すなどした本件郵便物検査(判文参照)を,裁判官の発する令状を得ずに,郵便物の発送人又は名宛人の承諾を得ることなく行うことが,関税…
事件番号: 平成23(あ)469 / 裁判年月日: 平成23年10月26日 / 結論: 棄却
1 訴訟条件である告発の存在は,上告審において,証拠調手続によることなく,適宜の方法で認定することができ,関税法140条所定の告発書の謄本が原判決後に原審に提出されて記録につづられ,その写しが上告審から弁護人に送付されている事情の下では,上告審は上記謄本により告発の事実を認定することができる。 2 1,2審が訴訟条件で…
事件番号: 昭和54(あ)2089 / 裁判年月日: 昭和55年6月11日 / 結論: 棄却
密輸入にかかる本件覚せい剤(判文参照)を没収するについては、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法二条二項に定める公告の方法は、検察庁の掲示場における掲示で足りる。