1 訴訟条件である告発の存在は,上告審において,証拠調手続によることなく,適宜の方法で認定することができ,関税法140条所定の告発書の謄本が原判決後に原審に提出されて記録につづられ,その写しが上告審から弁護人に送付されている事情の下では,上告審は上記謄本により告発の事実を認定することができる。 2 1,2審が訴訟条件である関税法140条所定の告発について調査を怠った法令違反は,上告審において告発の事実を認定することができる場合には,判決に影響を及ぼすべきものとはいえない。
1 訴訟条件である告発の事実を上告審において認定する方法 2 訴訟条件である告発の調査を怠った1,2審の法令違反と上告審において告発の事実を認定することができる場合の判決への影響の有無
(1,2につき)関税法140条 (1につき)刑訴法393条1項,刑訴法414条 (2につき)刑訴法411条1号
判旨
親告罪や関税法違反等の罪における訴訟条件である告発の存在については、上告審においても証拠調手続によることなく適宜の方法で認定することが可能であり、事実上の告発が存在した以上、一・二審での調査懈怠は判決に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
訴訟条件である告発の存在について、上告審において証拠調手続を経ずに認定することができるか。また、下級審において告発の存在を調査しなかったことが、直ちに判決を破棄すべき事由(判決に影響を及ぼすべき法令違反)となるか。
規範
訴訟条件である告発の存在については、証拠調手続によることなく、適宜の方法で認定することができる。上告審において記録中の資料等に基づき適法な告発があったことが認められる場合には、下級審において告発の存在を確認しないまま審理・判決した手続上の違法があったとしても、判決に影響を及ぼすべきものとはいえない。
重要事実
事件番号: 平成19(あ)2081 / 裁判年月日: 平成20年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】覚せい剤を海上に投下し、これを小型船舶で回収して陸揚げする計画において、投下した覚せい剤を回収できず、その実力的支配下に置く可能性も乏しい段階では、輸入罪の実行の着手は認められない。 第1 事案の概要:被告人らは共犯者と共謀し、外国で覚せい剤を密輸船に積み込み、日本近海まで航行させ、海上に投下した…
被告人は覚せい剤取締法違反及び関税法違反(輸入未遂)の罪で起訴され、一・二審ともに有罪判決を受けた。しかし、関税法違反の罪は同法140条により告発を待って論ずべきものとされているところ、一・二審では告発の存在に関する証拠が提出されず、調査も行われなかった。上告審に至り、検察官から原審に提出された告発書の謄本等を含む記録が送付され、上告審裁判所において内容が確認された。
あてはめ
本件関税法違反の罪について、記録によれば原判決後に告発書の謄本を含む関係証拠が提出され、当審(最高裁)に送付された記録に綴られている。この謄本によれば、訴因追加に先立って適法な告発があった事実が認められる。訴訟条件の存否は適宜の調査による認定が可能であるため、上告審において告発の存在が確認された以上、一・二審がその調査を怠った法令違反は、結果として判決に影響を及ぼさない。
結論
上告棄却。訴訟条件である告発は上告審における適宜の調査で認定可能であり、実体として告発が存在した以上、一・二審の不備は判決に影響を及ぼさない。
実務上の射程
訴訟条件(親告罪の告訴や関税法等の告発)の欠如が争点となった際、上告審であっても「適宜の取調べ」により事後的にその存在を確認して救済できることを示した。実務上は、厳格な証明が不要な「訴訟事実」の立証手法としての意味を持つ。
事件番号: 平成23(あ)757 / 裁判年月日: 平成24年2月13日 / 結論: 破棄自判
1 刑訴法382条の事実誤認とは,第1審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることをいう。 2 控訴審が第1審判決に事実誤認があるというためには,第1審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に示す必要がある。 3 覚せい剤を密輸入した事件について覚せい剤を輸入する認識がなかっ…
事件番号: 平成24(あ)724 / 裁判年月日: 平成25年10月21日 / 結論: 棄却
密輸組織が関与する覚せい剤の密輸入事件について,被告人の覚せい剤に関する認識を否定して無罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,この種事案に適用されるべき経験則等を示しつつ,被告人は覚せい剤が隠匿されたスーツケースを日本に運ぶよう指示又は依頼を受けて来日したと認定するなどした上,被告人の覚せい剤に関する認識を…
事件番号: 平成14(あ)409 / 裁判年月日: 平成15年11月26日 / 結論: 棄却
大韓民国の裁判所に起訴された共犯者が,自らの意思で任意に供述できるよう手続的保障がされている同国の法令にのっとり,同国の裁判官,検察官及び弁護人が在廷する公開の法廷において,質問に対し陳述を拒否することができる旨告げられた上でした供述を記載した同国の公判調書は,刑訴法321条1項3号にいう「特に信用すべき情況」の下にさ…
事件番号: 平成27(あ)416 / 裁判年月日: 平成28年12月9日 / 結論: 棄却
税関職員が,郵便物の輸出入の簡易手続として,輸入禁制品の有無等を確認するため,郵便物を開披し,その内容物を目視するなどした上,内容物を特定するため,必要最小限度の見本を採取して,これを鑑定に付すなどした本件郵便物検査(判文参照)を,裁判官の発する令状を得ずに,郵便物の発送人又は名宛人の承諾を得ることなく行うことが,関税…