飛行場において離着陸する航空機の発する騒音等により周辺住民らが精神 的又は身体的被害等を被っていることを理由とする損害賠償請求権のうち 事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は,将来の給付の訴えを提起す ることのできる請求権としての適格を有しない。 (補足意見がある。)
将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しない ものとされた事例
民訴法135条
判旨
航空機騒音による将来の損害賠償請求は、損害の成否及び額を一義的に明確に認定できず、その成立要件の立証責任を債権者が負うべき性質のものであるため、将来の給付の訴えとしての適格を有しない。また、人格権に基づく差止め等の請求権は一身専属的な権利であり、原告の死亡により当然に訴訟は終了する。
問題の所在(論点)
1. 航空機騒音による将来の損害賠償請求について、将来の給付の訴えとしての適格(民訴法135条)が認められるか。 2. 人格権に基づく差止請求権の相続性が認められるか、及び原告死亡時の訴訟の帰趨。
規範
継続的不法行為に基づく将来の損害賠償請求が「将来の給付の訴え」として適格を有するためには、①同一態様の行為が継続されることが予測されるだけでなく、②損害の成否及び額をあらかじめ一義的に明確に認定することができ、かつ、③債務者に事情変動の立証負担を課しても不当ではないことが必要である。航空機騒音被害については、成立時点の事実関係に基づき判断されるべき性質のものであり、立証責任も請求者が負うべきであるため、上記適格を欠く。また、人格権に基づく差止請求権は一身専属性を有し、相続の対象とならない。
重要事実
厚木海軍飛行場周辺の住民が、米海軍及び海上自衛隊の航空機騒音により精神的・身体的被害を受けたとして、国に対し、人格権に基づく将来の離着陸等の差止め、音量規制、及び将来(事実審口頭弁論終結後)の損害賠償を請求した。原審は、約1年8か月間の期間限定であれば事情変動の蓋然性が低く、将来の給付の訴えとして適格を認め、一部認容した。また、訴訟継続中に一部の原告が死亡した。
事件番号: 平成18(受)882 / 裁判年月日: 平成19年5月29日 / 結論: 破棄自判
飛行場において離着陸する航空機の発する騒音等により周辺住民らが精神的又は身体的被害等を被っていることを理由とする損害賠償請求権のうち事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は,判決言渡日までの分についても,将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しない。 (補足意見及び反対意見がある。)
あてはめ
1. 航空機騒音の状況は内外の情勢や配備態勢に応じ常に変動し得る。たとえ短期間に限定しても、損害の成否や額を一義的に明確に認定することは困難である。不動産の不法占有による賃料相当額の損害金等とは異なり、将来の成立要件の具備については依然として請求者が立証責任を負うべき性質のものであり、不法行為の継続予測のみをもって適格を認めることはできない。 2. 差止請求は人格権という個人の尊厳に直結する権利に基づき、当該個人に帰属するものである。したがって、権利者の一身に専属し、相続により承継されない。原告の死亡により、その権利行使の主体が消滅したといえる。
結論
1. 事実審口頭弁論終結後の損害賠償請求は不適法であり、却下されるべきである。 2. 原告が死亡した差止請求・音量規制に関する訴訟部分は、当然に終了する。
実務上の射程
騒音被害等の生活妨害(公害)訴訟において、将来の損害賠償請求を否定する従前の判例法理を再確認したものである。答案作成上は、将来の給付の訴えの要件として「請求権の基礎となる事実関係・法律関係の存在」に加え、「成否・内容の明確な予測可能性」と「債務者の立証負担の相当性」を論じる際の規範として活用する。また、差止請求の原告死亡時には受継の問題ではなく訴訟終了として処理する根拠となる。
事件番号: 昭和38(オ)1265 / 裁判年月日: 昭和39年7月7日 / 結論: 棄却
具体的事件と離れて、抽象的に法律命令等の憲法に適合するかどうかを争うことは、許されない。