判旨
不法行為または債務不履行に基づく損害賠償請求において、請求される損害は当該違法行為と相当因果関係にあることが必要であり、単なる不当行為の例示や間接事実の主張のみでは因果関係の立証として不十分である。
問題の所在(論点)
不法行為または債務不履行に基づく損害賠償請求において、複数の不当な行為を例示しつつも、それらと請求する損害額との間に直接の対応関係を主張しない場合、相当因果関係の主張として適法か。
規範
債務不履行または不法行為による損害賠償を請求するためには、損害が債務不履行または不法行為に起因して生じ、かつ、これと相当因果関係に立つものであることを要する。また、違法行為を推断させるに止まる間接事実に係る主張・立証は、直接の請求原因事実との関連性が認められない限り、損害との因果関係を基礎付けるものではない。
重要事実
講の未取者である上告人らが、講元(被上告人の先代D)が私利を図り、引受人の資力を考慮せず薄弱な担保(幽霊担保)を取得するなどの不当な行為を行ったことにより損害を被ったと主張して損害賠償を求めた。上告人らはDの不当な行為を19項目にわたって例示したが、本訴で請求する損害金はこれらの行為から直接発生したものとして算定するものではないとも主張していた。
あてはめ
上告人らの主張は、Dの個別の不当行為を例示するに止まり、これらの行為と本訴請求に係る損害との間に相当因果関係があることを具体的に主張するものではない。したがって、これらの事実は債務不履行または不法行為の事実を推断させる一の間接事実に過ぎない。また、証拠(甲第3号証)についても、不当な貸付等の事実は推認し得るとしても、本訴請求の前提となる損害と直接関連するものではない。よって、故意・過失の立証も不十分であり、相当因果関係を認めることはできない。
結論
損害と違法行為との間の相当因果関係が主張・立証されていないため、不法行為等の責任は否定される。上告棄却。
実務上の射程
損害賠償請求の答案において、複数の違法事由がある場合に、個別の行為と損害額を切り離して「全体として不当」といった抽象的な主張を行うことは、因果関係の主張として不適当であることを示す。必ず各違法行為からどのようなプロセスで損害が発生したか(相当因果関係)を具体的に論述すべきである。
事件番号: 昭和43(オ)1044 / 裁判年月日: 昭和48年6月7日 / 結論: 棄却
不法行為による損害賠償についても、民法四一六条の規定が類推適用され、特別の事情によつて生じた損害については、加害者において右事情を予見しまたは予見することを得べかりしときにかぎり、これを賠償する責を負うものと解すべきである。