判旨
民法117条に基づく無権代理人の責任を追及する場合において、裁判所が当該契約を被告本人が売主として締結したものと認定したときは、無権代理を前提とする請求を排斥すべきである。裁判所は、当事者が主張していない事項について判断する義務を負わない。
問題の所在(論点)
民法117条に基づく責任追及において、裁判所が「被告は無権代理人ではなく契約の本人である」と認定した場合に、無権代理を前提とする請求を排斥することが許されるか。また、当事者が主張していない他の請求原因について裁判所が判断すべきか。
規範
裁判所は、当事者の主張しない事項について判断すべきではなく(処分権主義・弁論主義)、請求の前提となる法的性質の認定において、当事者の主張する無権代理の構成が否定され、本人自身の契約締結が認められる場合には、当該請求は理由がないものとして排斥される。
重要事実
上告人(買主)が、被上告人(被告)およびDを売主Eの無権代理人であると主張し、民法117条に基づき履行または損害賠償を求めて提訴した事案。上告人は原審の口頭弁論において、請求原因は同条に基づく責任追及のみであることを明言していた。しかし、原審は事実認定として、本件売買契約は被上告人およびDを売主本人として成立したものであると認定した。
あてはめ
上告人は原審において、民法117条に基づく責任のみを主張することを明示していた。これに対し、裁判所が証拠に基づき、被上告人らを「無権代理人」ではなく「売主本人」であると認定した以上、無権代理であることを要件とする同条の責任は成立し得ない。当事者が予備的にでも本人としての契約責任を主張していない以上、裁判所がこれについて判断しないことは正当であり、主張に反する事実認定に基づき請求を排斥した判断に違法はない。
結論
本件売買は被上告人らを売主本人として成立したものであり、無権代理を前提とする上告人の請求は排斥される。上告を棄却する。
実務上の射程
弁論主義の適用により、裁判所は当事者の主張する法律関係(無権代理)に拘束される。実務上、無権代理人の責任を追及する際は、相手方が本人と認定される可能性を考慮し、予備的に本人に対する契約履行請求等を併合して主張しておくべきであることを示唆する。
事件番号: 平成6(オ)535 / 裁判年月日: 平成7年2月24日 / 結論: 破棄自判
第一審及び控訴審の訴訟追行並びに上告の堤起が授権を欠く訴訟代理人により行われた場合において、本人が右各訴訟行為のうち上告の提起のみを追認して訴訟代理権の欠缺を理由に控訴審判決の破棄を求めているときは、上告審は、控訴審判決を破棄して第一審判決を取り消した上、訴えを却下すべきである。