死刑の量刑が維持された事例(長崎ストーカー殺人事件)
刑法11条,刑法199条,刑訴法411条2号
判旨
死刑の選択が許容される基準(永山基準)に基づき、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響等の諸事情を総合考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合には、死刑の選択が正当化される。
問題の所在(論点)
死刑の量刑判断(刑法199条、刑事訴訟法411条)において、殺害された被害者が2名である本件において、犯行の動機、態様、計画性等の諸事情を照らし、死刑の選択がやむを得ないといえるか。
規範
死刑制度は憲法36条に違反しない(判例)。死刑の適用については、犯行の性質、動機、態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を併せて考察し、その責任が極めて重大であって、罪罰の均衡の失当や一般予防の観点からやむを得ないといえる場合に限り、許容される。
重要事実
被告人は、交際女性の家族らが同女を連れ戻したことを逆恨みし、家族らを含む8名に対し殺害予告等のメールを送信して脅迫した。その後、殺害を決意し、包丁の購入や住居の調査など周到な準備を経て、三重県から長崎県へ移動。祖母宅および父母宅に侵入し、無抵抗な祖母および母の胸腹部を、出刃包丁でそれぞれ4回および11回にわたり繰り返し突き刺して殺害した(長崎ストーカー殺人事件)。さらに逃走資金目的で財布を窃取した。
あてはめ
動機について、交際女性への極端な執着と家族への逆恨みによるものであり、身勝手で酌量の余地がない。態様について、事前の凶器準備や住居調査等から計画性が高く、殺傷能力の高い出刃包丁で多数回突き刺す行為は強固な殺意に基づく執拗かつ残忍なものであるといえる。結果について、落ち度のない2名の生命を奪った結果は重大であり、遺族の処罰感情も峻烈である。被告人に罰金前科しかない等の事情を考慮しても、刑事責任は極めて重大であると評価される。
事件番号: 平成21(あ)1903 / 裁判年月日: 平成24年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】3名の生命を奪った結果が極めて重大であり、犯行態様の残虐性、強固な殺意、動機の身勝手さを考慮すれば、被告人の更生可能性や前科がない等の有利な事情を最大限考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、義姉への恨みから周到な準備(包丁の加工、雨合羽等の用意)に基づき義姉を多数回刺…
結論
本件における死刑の科刑は、罪罰の均衡および一般予防の観点からやむを得ないものとして是認される(上告棄却)。
実務上の射程
被害者が2名の事案であっても、動機の身勝手さ、計画性の高さ、および態様の残虐性が顕著な場合には、死刑の選択が維持される判断枠組みを再確認したものといえる。
事件番号: 平成16(あ)1368 / 裁判年月日: 平成19年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が多額の保険金を取得する目的で、他人の生命を奪った事案において、犯行の計画性、残虐性、結果の重大性に鑑み、死刑判決を維持した一審・二審の判断を相当とした。 第1 事案の概要:被告人は、保険金を不正に取得する目的で、特定の人物(被害者2名)を殺害した。犯行は計画的かつ巧妙に行われ、多額の利益を…
事件番号: 昭和43(あ)2060 / 裁判年月日: 昭和44年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑判決の正当性について、諸般の事情を慎重に考慮した上であれば、第一審の死刑判決を是認した控訴審判決に職権破棄すべき事由はない。 第1 事案の概要:被告人が重大な罪を犯し、第一審において死刑を言い渡された事案。被告人本人は事実誤認および量刑不当を主張し、弁護人も法令違反、事実誤認、量刑不当を理由に…
事件番号: 平成10(あ)645 / 裁判年月日: 平成16年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法36条に違反しない。また、複数の強盗殺人等の事案において、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合考慮し、被告人の罪責が誠に重大である場合には、死刑の科刑は妥当である。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、約2か月間にわたり計4件の強…
事件番号: 昭和63(あ)68 / 裁判年月日: 平成5年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、犯行の罪質、動機、態様、結果等の諸事情に照らして罪責が誠に重大である場合には、死刑の選択はやむを得ないものとして是認される。 第1 事案の概要:被告人は、離婚届を出して身を隠した妻の所在を隠匿したとして、妻の兄らに対して恨みを抱いた。被告人は恨みを晴らすとと…