死刑の量刑が維持された事例(香川坂出3人殺害事件)
判旨
3名の生命を奪った結果が極めて重大であり、犯行態様の残虐性、強固な殺意、動機の身勝手さを考慮すれば、被告人の更生可能性や前科がない等の有利な事情を最大限考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。
問題の所在(論点)
3名を殺害した死刑相当事案において、被告人の前科のなさ、知能程度、反省の態度といった情状が、死刑の選択を回避すべき事情としてどの程度評価されるか(死刑選択の適否)。
規範
死刑の選択については、いわゆる永山基準に照らし、犯行の性質、動機、態様(特に殺害方法の執拗さ、残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考慮し、罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡、一般予防の観点からも極めてやむを得ない場合に認められる。
重要事実
被告人は、義姉への恨みから周到な準備(包丁の加工、雨合羽等の用意)に基づき義姉を多数回刺突して殺害した。さらに、現場に居合わせた5歳と3歳の幼い姉妹(義姉の孫)に対し、犯行発覚を防ぐためという身勝手な動機から、ためらうことなく多数回刺突して殺害し、3名の遺体全てを土中に遺棄した。被告人は前科がなく、知能程度がやや低いことが犯行の背景に影響した可能性があり、一部賠償も行っているが、遺族の処罰感情は峻烈である。
あてはめ
まず、犯行態様は周到な準備に基づく執拗かつ残虐なものであり、殺意も強固である。特に幼児2名の殺害動機は自己保身のみを目的とした冷酷非情なもので、酌量の余地は全くない。結果として3名の尊い生命が失われた事実は誠に重大である。被告人側の事情として、前科がなく犯罪性向が高いと言えないことや、知能程度の影響、賠償の支払い等の有利な事情が認められるものの、これらを十分に考慮したとしても、本件の刑事責任の重大さに照らせば、死刑を回避する理由としては不十分であるといえる。
事件番号: 平成21(あ)516 / 裁判年月日: 平成24年1月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の刑事責任が極めて重大であり、犯行の経緯・動機に酌量の余地がなく、態様が冷酷・残虐で結果が重大である場合、前科がないこと等の有利な事情を考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は金品強奪および強姦目的で、母娘2人が居住する住宅に侵入。帰宅した母親(当時52歳)および二…
結論
被告人の刑事責任は誠に重大であり、第一審の死刑判決を維持した原判決は相当であって、死刑の科刑は是認せざるを得ない。
実務上の射程
死刑選択の判断において、被害者数が複数(本件は3名)である場合の重みと、動機の身勝手さ、態様の残虐性が、被告人側の個人的な情状(前科なし、知的制約、反省)を凌駕し得ることを示した実務上の指針となる。
事件番号: 平成2(あ)1110 / 裁判年月日: 平成8年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重く、やむを得ない場合に認められる。自首や反省等の被告人に有利な事情を考慮しても、犯行の計画性や残虐性が著しい場合には死刑判決を是認できる。 第1 事案の概…
事件番号: 昭和63(あ)68 / 裁判年月日: 平成5年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、犯行の罪質、動機、態様、結果等の諸事情に照らして罪責が誠に重大である場合には、死刑の選択はやむを得ないものとして是認される。 第1 事案の概要:被告人は、離婚届を出して身を隠した妻の所在を隠匿したとして、妻の兄らに対して恨みを抱いた。被告人は恨みを晴らすとと…
事件番号: 平成22(あ)2073 / 裁判年月日: 平成25年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2名の殺害を当初から企図した計画的かつ残忍な強盗殺人等の事案において、被告人が犯行を立案・主導し、実行行為でも重要な役割を果たして多額の利益を得ている場合、反省の態度や前科がない等の事情を考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は多額の負債返済のため、資産家宅に押し入り2名…
事件番号: 平成26(あ)1160 / 裁判年月日: 平成28年7月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容される基準(永山基準)に基づき、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響等の諸事情を総合考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合には、死刑の選択が正当化される。 第1 事案の概要:被告人は、交際女性の家族らが同…