死刑の量刑が維持された事例(岩手の2女性強盗殺人等事件)
判旨
被告人の刑事責任が極めて重大であり、犯行の経緯・動機に酌量の余地がなく、態様が冷酷・残虐で結果が重大である場合、前科がないこと等の有利な事情を考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。
問題の所在(論点)
強盗殺人、強盗強姦未遂等の罪に問われた被告人に対し、前科がないことや当初からの殺害計画の不在といった有利な事情を考慮した上でも、死刑を選択することが刑罰の均衡および一般予防の観点から許容されるか(死刑選択の許容性)。
規範
死刑の選択に当たっては、犯行の性質、動機、態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考慮し、罪責が誠に重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の見地からもやむを得ない場合に認められる(永山基準参照)。
重要事実
被告人は金品強奪および強姦目的で、母娘2人が居住する住宅に侵入。帰宅した母親(当時52歳)および二女(当時24歳)を順次すりこぎで殴打、頸部圧迫等により殺害し、金品を強取したほか、犯跡隠蔽のため死体を山林に遺棄した。被告人は事前に目出し帽やロープを用意し、待ち伏せするなど計画性が高い。一方で、当初から殺害を計画していたわけではない点、被害品の一部返還、前科前歴がないこと、捜査段階での反省の態度は被告人に有利な事情として存在する。
あてはめ
まず、犯行の動機は利欲および性欲を満たすためで酌量の余地がない。態様についても、激しく抵抗する被害者らを順次確定的殺意をもって殺害し、死体を投棄しており、生命の尊厳を顧みない冷酷かつ残虐なものである。結果として2名の尊い生命が奪われた事実は極めて重大であり、遺族の処罰感情も峻烈である。被告人に有利な事情(計画の端緒、前科なし、反省等)を十分に考慮しても、本件の刑事責任は極めて重大であり、罪罰の均衡を著しく失するものとはいえない。
事件番号: 平成22(あ)2073 / 裁判年月日: 平成25年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2名の殺害を当初から企図した計画的かつ残忍な強盗殺人等の事案において、被告人が犯行を立案・主導し、実行行為でも重要な役割を果たして多額の利益を得ている場合、反省の態度や前科がない等の事情を考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は多額の負債返済のため、資産家宅に押し入り2名…
結論
第一審の死刑判決を維持した原判決は、諸般の事情を照らし合わせてやむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
死刑制度自体の合憲性については、憲法12条、13条、31条、36条に違反しないとした累次の大法廷判決(昭和23年、30年、36年等)を再確認している。
事件番号: 平成21(あ)1903 / 裁判年月日: 平成24年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】3名の生命を奪った結果が極めて重大であり、犯行態様の残虐性、強固な殺意、動機の身勝手さを考慮すれば、被告人の更生可能性や前科がない等の有利な事情を最大限考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、義姉への恨みから周到な準備(包丁の加工、雨合羽等の用意)に基づき義姉を多数回刺…
事件番号: 平成19(あ)97 / 裁判年月日: 平成22年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が強盗の目的で二人の被害者の住宅に侵入し、それぞれに対し頸部を圧迫するなどの暴行を加えて殺害し、現金を強取した事案において、死刑の選択がやむを得ないとされた事例。 第1 事案の概要:被告人は、金員を強取する目的で二度にわたり住宅に侵入した。第一の事件では、被害者の頸部を両手で強く絞めて殺害し…
事件番号: 昭和58(あ)140 / 裁判年月日: 平成元年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の態様、動機、結果の重大性、遺族の被害感情等の罪質及び情状を総合的に考慮し、その罪責がまことに重大であって、死刑の科刑がやむをえないと認められる場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、機会を異にして、手向かう術のない婦女2名を殺害した。各犯行は冷酷無情かつ残忍な態…
事件番号: 平成16(あ)2170 / 裁判年月日: 平成19年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗強姦・強盗殺人等の事案において、周到な準備に基づく確定的犯意、冷酷な殺害方法、遺族の峻烈な処罰感情、及び常習性を考慮し、第一審の死刑判決を是認した。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀し、3週間のうちに2名の女性を強姦または強姦未遂の上、ベルトでの絞殺や水没による窒息死という凄惨な方法で殺…