死刑の量刑が維持された事例(山形東京連続放火殺人事件)
刑法11条,刑法108条,刑法199条,刑訴法411条2号
判旨
死刑制度は憲法31条および36条に違反しない。また、短期間に身勝手な動機から3名を殺害し、放火を伴う残虐な犯行を重ねた場合、未必の殺意や反省等の事情を考慮しても死刑の科刑は免れない。
問題の所在(論点)
死刑制度の憲法適合性、および身勝手な動機から生じた複数の殺人・放火事件において、未必の殺意や反省の情がある場合に死刑を選択することの可否。
規範
死刑の適用にあたっては、犯行の性質、動機、態様、特に殺意の強固さ、結果の重大性(殺害された被害者数)、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極めてやむを得ない場合にのみ、死刑が選択されるべきである(永山基準を前提とした総合判断)。
重要事実
被告人は、交際相手Aを連れ戻す目的で山形の実家に放火し、Aの両親2名を焼死させた(山形事件)。その後、別の交際相手Bの居所を知るため、Bの母Cを監禁。Cが命乞いをする中、たらいを被せて燃焼した炭を入れる残虐な方法で殺害し、証拠隠滅のため同宅に放火した(東京事件)。山形事件は未必の殺意、東京事件は計画的殺意に基づくものであった。わずか1年余の間に3名の命を奪い、放火を伴う重大犯罪を重ねた事案である。
あてはめ
本件各犯行は、交際相手を連れ戻したいという身勝手な動機に基づく人命軽視の態度が顕著である。特に東京事件は、周到な計画に基づき、必死に命乞いをする被害者を長時間かけて殺害したもので、態様は残忍極まりない。合計3名の生命を奪った結果は極めて重大であり、放火による公共の危険も大きい。山形事件が未必の殺意にとどまることや、被告人が反省を示している等の有利な事情を考慮しても、刑事責任は極めて重大である。
事件番号: 平成25(あ)1329 / 裁判年月日: 平成28年2月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法31条、36条に違反しない。また、精神障害(妄想)が犯行の動機形成に介在していても、それが限定的であり、犯行自体が一貫性のある合目的的な行動である場合には、死刑の選択は許容される。 第1 事案の概要:被告人は精神障害による妄想(嫌がらせを受けている等)を抱き、世間へ…
結論
被告人の刑事責任は極めて重大であり、第1審の死刑判決を維持した原判決は相当であって、死刑の科刑は是認せざるを得ない。
実務上の射程
死刑制度の合憲性を再確認するとともに、死刑選択の判断において被害者数が3名に達し、かつ犯行態様が残虐で放火等の併合罪がある場合には、一部に未必の殺意や反省等の減軽要素があっても、死刑回避は困難であることを示す事例である。
事件番号: 昭和61(あ)1427 / 裁判年月日: 平成5年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、絞首刑による執行も憲法36条に違反しない。量刑に際しては、罪質、動機、態様、結果等の情状に加え、被告人の地位・役割や公判での態度を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人らは、過激派組織「連合赤軍」の結成前後、昭和44年から47年にか…
事件番号: 平成16(あ)1687 / 裁判年月日: 平成19年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反しない。また、複数の被害者を殺傷した強盗致死等の事案において、殺意の有無、動機、犯行態様の残虐性、結果の重大性を総合考慮し、死刑の選択を是認した。 第1 事案の概要:暴力団関係の紛議等を契機として、被告人は共犯者と共謀し、(1)男性1名を河川に投げ込んで溺…
事件番号: 平成16(あ)727 / 裁判年月日: 平成19年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の刑事責任は極めて重大であり、死刑に処した原判決の維持を是認せざるを得ない。 第1 事案の概要:被告人はビル3階にある営業所にガソリンを用意して侵入し、店長らに通告した上で床に撒いて放火した。その結果、店舗を全焼させるとともに、店内にいた5名を死亡させ、他数名に重傷を負わせた。動機は理不尽な…