死刑の量刑が維持された事例(武富士弘前支店放火強盗殺人事件)
判旨
被告人の刑事責任は極めて重大であり、死刑に処した原判決の維持を是認せざるを得ない。
問題の所在(論点)
刑法199条(殺人)および108条(現住建造物等放火)等の罪責を負う被告人に対し、死刑を適用することが量刑上の均衡を失わず、社会的に相当といえるか。
規範
死刑の適用については、犯行の性質、動機、態様、特に殺害された被害者の数、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考慮し、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極めて重大な罪責を免れないと認められる場合に限って、許容される。
重要事実
被告人はビル3階にある営業所にガソリンを用意して侵入し、店長らに通告した上で床に撒いて放火した。その結果、店舗を全焼させるとともに、店内にいた5名を死亡させ、他数名に重傷を負わせた。動機は理不尽な要求に応じなかったことへの逆恨みであり、極めて自己中心的である。被告人に前科はないが、殺意が未必的であったことを考慮しても、被害結果は極めて重大である。
あてはめ
まず、犯行態様について、ガソリンを撒いて放火するという手段は極めて危険かつ冷酷であり、殺害人数が5名に及んでいる事実に照らせば、結果は極めて重大といえる。動機においても、自己の不当な要求が通らなかったことを発端としており、酌量の余地はない。被告人側は、殺意が未必的なものであることや前科がないことを有利な事情として主張するが、これらを考慮したとしても、多数の尊い生命を奪った罪責は誠に重い。遺族の処罰感情も峻烈であり、犯罪の社会的影響も大きいことから、極刑を選択することはやむを得ないものと解される。
結論
事件番号: 平成15(あ)1120 / 裁判年月日: 平成19年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人・現住建造物等放火罪において、利欲目的による計画的かつ冷酷な犯行であり、6名という多数の生命を奪った結果が極めて重大である場合、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、高級宝飾品店を狙い、従業員らを殺害して商品を強取することを計画。従業員6名の手足を縛り休憩室に押し込めた上で、…
被告人を死刑に処した一審・二審判決を是認し、上告を棄却する。
実務上の射程
判決文からは不明(死刑選択における「永山基準」の枠組みを維持しつつ、放火殺人における未必の殺意であっても、結果が甚大であれば死刑が肯定されることを示した事案といえる)。
事件番号: 平成11(あ)1115 / 裁判年月日: 平成16年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金員奪取を目的とした2件の強盗殺人等について、犯行態様の冷酷さや動機の身勝手さ、被害結果の重大性及び遺族の厳しい処罰感情を考慮し、死刑の量刑を維持した事例である。 第1 事案の概要:被告人は、所持金に窮し、5日の間に2件の強盗殺人を敢行した。第1事件では、タクシー運転手を果物ナイフで刺殺して金員を…
事件番号: 昭和59(あ)590 / 裁判年月日: 昭和63年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の感情、社会的影響等の諸要素を総合的に考慮し、刑事責任が極めて重大であってやむを得ない場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、会社資金の使い込みを隠蔽するため、証拠の焼却と逃走資金の入手を計画。その過程で、妨げとなった会社上司及び…
事件番号: 平成18(あ)2151 / 裁判年月日: 平成22年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無差別に深夜の住宅街で連続放火を行い、未必的な殺意に基づき4名を死亡させた事案において、動機に酌むべき点がないこと、放火の危険性と結果の重大性、地域社会に与えた不安等を考慮すれば、死刑の科刑は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、経済的苦境等のうっぷんを晴らすため、放火のスリルと快感を求めて深夜…
事件番号: 平成23(あ)1517 / 裁判年月日: 平成26年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】いわゆる個室ビデオ店放火事件(大阪個室ビデオ店放火事件)において、死者16名という未曾有の被害結果の重大性、避難困難な店舗構造を認識しながら放火に及んだ犯行態様の悪質性、動機の身勝手さを重視し、殺意が確定的でなかったことや前科がない等の事情を考慮しても、死刑の選択はやむを得ないとした。 第1 事案…