死刑の量刑が維持された事例(小田原タクシー強盗殺人等事件)
判旨
金員奪取を目的とした2件の強盗殺人等について、犯行態様の冷酷さや動機の身勝手さ、被害結果の重大性及び遺族の厳しい処罰感情を考慮し、死刑の量刑を維持した事例である。
問題の所在(論点)
2件の強盗殺人(うち1件は未遂、1件は現住建造物等放火を伴う既遂)を犯した被告人に対し、死刑を適用することが量刑上不当(刑訴法411条2号)といえるか。
規範
死刑の選択にあたっては、永山基準(最判昭58.7.8)を踏まえ、犯行の罪質、動機、態様(殺害方法の執拗さ・残虐性)、結果の重大性(殺害人数等)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡や一般予防の見地からやむを得ない場合に限られる。
重要事実
被告人は、所持金に窮し、5日の間に2件の強盗殺人を敢行した。第1事件では、タクシー運転手を果物ナイフで刺殺して金員を強取しようとしたが、動転して未遂に終わった。第2事件では、かつての同僚から現金を強奪した後、失火を装うため、生存している被害者の傍に灯油を撒いて放火し、宿舎を全焼させるとともに被害者を焼死させた。
あてはめ
まず、動機は給料を飲酒やパチンコに浪費した末の金欲しさであり、酌量の余地がない。態様についても、確定的な殺意に基づき、特に第2事件では生きたまま焼死させるなど冷酷かつ残忍である。結果として2名の尊い生命が奪われており、遺族の処罰感情も極めて厳しい。犯行後も「3人組の犯行」とする虚偽の弁解を弄しており自責の念に乏しい。これらの事情を総合すると、被告人の罪責は誠に重大である。
結論
被告人のために酌むべき事情を最大限考慮しても、原判決の死刑の科刑は是認せざるを得ず、刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。
事件番号: 平成15(あ)1120 / 裁判年月日: 平成19年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人・現住建造物等放火罪において、利欲目的による計画的かつ冷酷な犯行であり、6名という多数の生命を奪った結果が極めて重大である場合、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、高級宝飾品店を狙い、従業員らを殺害して商品を強取することを計画。従業員6名の手足を縛り休憩室に押し込めた上で、…
実務上の射程
死刑選択の妥当性が争われる事案における量刑判断の枠組み(総合考慮)を示すものである。殺害人数が2名であっても、放火という態様の悪質さや動機の身勝手さが強い場合には、死刑が維持される可能性が高いことを示唆しており、答案上は犯行態様の「冷酷・残忍性」や「動機の不当性」を具体的事実から強調する際の指標となる。
事件番号: 平成16(あ)727 / 裁判年月日: 平成19年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の刑事責任は極めて重大であり、死刑に処した原判決の維持を是認せざるを得ない。 第1 事案の概要:被告人はビル3階にある営業所にガソリンを用意して侵入し、店長らに通告した上で床に撒いて放火した。その結果、店舗を全焼させるとともに、店内にいた5名を死亡させ、他数名に重傷を負わせた。動機は理不尽な…
事件番号: 平成4(あ)824 / 裁判年月日: 平成10年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人、現住建造物放火等の事案において、犯行の計画性、態様の残虐性、結果の重大性、主導的役割、及び犯行後の再犯状況等を総合考慮し、死刑の選択を維持した一審判決を是認した。 第1 事案の概要:被告人は実弟と共謀し、金員強取の目的で住居に侵入。発見された住居人女性を殺害して金庫を強取し、帰宅した別の…
事件番号: 昭和59(あ)590 / 裁判年月日: 昭和63年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の感情、社会的影響等の諸要素を総合的に考慮し、刑事責任が極めて重大であってやむを得ない場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、会社資金の使い込みを隠蔽するため、証拠の焼却と逃走資金の入手を計画。その過程で、妨げとなった会社上司及び…
事件番号: 昭和58(あ)1768 / 裁判年月日: 平成元年12月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度および絞首による執行方法は憲法に違反せず、犯行態様の残虐性、結果の重大性、被害者感情および社会的影響を総合考慮して、死刑の選択がやむを得ないと認められる場合には、その科刑は正当として是認される。 第1 事案の概要:被告人は、金品強取の目的で包丁を隠し持って隣家に侵入し、被害少女2名を次々に…