死刑事件(神田サンミック通商強殺放火事件)
判旨
死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の感情、社会的影響等の諸要素を総合的に考慮し、刑事責任が極めて重大であってやむを得ない場合に許容される。
問題の所在(論点)
死刑の選択が認められるための判断枠組み、及び本件のような複数の重大犯罪(強盗殺人・放火)が重なる事案において、被告人の有利な事情を考慮してもなお死刑を科すことが許されるか。
規範
死刑の科刑が許容されるか否かの判断に当たっては、(1)犯行の罪質、(2)犯行の動機、(3)態様(特に殺害方法の残虐性)、(4)結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、(5)遺族の被害感情、(6)社会的影響、(7)犯人の年齢、前科、犯行後の情状など、諸般の事情を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の見地からもやむを得ないといえる場合に、死刑の選択が許される(いわゆる永山基準)。
重要事実
被告人は、会社資金の使い込みを隠蔽するため、証拠の焼却と逃走資金の入手を計画。その過程で、妨げとなった会社上司及びビル管理人の計2名を殺害し、現金約252万円を強取した上、ビルの一部を焼燬した。被告人は当初から殺害を企図していたわけではなく、前科もなく反省の態度を示していたが、強盗殺人2件及び現住建造物等放火という極めて重い罪を犯した。
あてはめ
まず、強盗殺人2件に放火を伴う罪質は誠に重く、2名の生命を奪った結果は極めて重大である。動機は自己の不正隠蔽と逃走資金確保であり酌量の余地はない。殺害の手段方法は甚だ残忍な態様といえる。また、遺族の感情や社会的影響も深刻である。これらに対し、殺害が当初からの計画ではないこと、前科がなく反省していること等の有利な事情を十分に考慮しても、罪責の重大性に照らせば、死刑の科刑はやむを得ない。
事件番号: 平成15(あ)1120 / 裁判年月日: 平成19年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人・現住建造物等放火罪において、利欲目的による計画的かつ冷酷な犯行であり、6名という多数の生命を奪った結果が極めて重大である場合、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、高級宝飾品店を狙い、従業員らを殺害して商品を強取することを計画。従業員6名の手足を縛り休憩室に押し込めた上で、…
結論
本件における死刑の科刑は、被告人の罪責の重さに照らし、当裁判所もこれを是認せざるを得ないため、適法である。
実務上の射程
死刑選択の基準を示した昭和58年最高裁判決(永山判決)を再確認し、実務上、特に強盗殺人が複数件に及ぶ場合の量刑判断のメルクマールとして機能する。答案上は、死刑の違憲性を否定する際の論拠や、罪刑均衡の観点からのあてはめのモデルとして活用できる。
事件番号: 昭和58(あ)1768 / 裁判年月日: 平成元年12月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度および絞首による執行方法は憲法に違反せず、犯行態様の残虐性、結果の重大性、被害者感情および社会的影響を総合考慮して、死刑の選択がやむを得ないと認められる場合には、その科刑は正当として是認される。 第1 事案の概要:被告人は、金品強取の目的で包丁を隠し持って隣家に侵入し、被害少女2名を次々に…
事件番号: 平成11(あ)1115 / 裁判年月日: 平成16年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金員奪取を目的とした2件の強盗殺人等について、犯行態様の冷酷さや動機の身勝手さ、被害結果の重大性及び遺族の厳しい処罰感情を考慮し、死刑の量刑を維持した事例である。 第1 事案の概要:被告人は、所持金に窮し、5日の間に2件の強盗殺人を敢行した。第1事件では、タクシー運転手を果物ナイフで刺殺して金員を…
事件番号: 平成4(あ)824 / 裁判年月日: 平成10年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人、現住建造物放火等の事案において、犯行の計画性、態様の残虐性、結果の重大性、主導的役割、及び犯行後の再犯状況等を総合考慮し、死刑の選択を維持した一審判決を是認した。 第1 事案の概要:被告人は実弟と共謀し、金員強取の目的で住居に侵入。発見された住居人女性を殺害して金庫を強取し、帰宅した別の…
事件番号: 平成16(あ)727 / 裁判年月日: 平成19年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の刑事責任は極めて重大であり、死刑に処した原判決の維持を是認せざるを得ない。 第1 事案の概要:被告人はビル3階にある営業所にガソリンを用意して侵入し、店長らに通告した上で床に撒いて放火した。その結果、店舗を全焼させるとともに、店内にいた5名を死亡させ、他数名に重傷を負わせた。動機は理不尽な…