死刑事件(埼玉の母子殺害事件)
判旨
強盗殺人、現住建造物放火等の事案において、犯行の計画性、態様の残虐性、結果の重大性、主導的役割、及び犯行後の再犯状況等を総合考慮し、死刑の選択を維持した一審判決を是認した。
問題の所在(論点)
強盗殺人、現住建造物放火、強盗致傷等の複数の重大犯罪を犯し、二名の命を奪った被告人に対し、死刑を適用することが刑罰の均衡および諸般の情状に照らして相当といえるか。
規範
死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等、諸般の事情を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の見地からもやむを得ない場合に認められる。
重要事実
被告人は実弟と共謀し、金員強取の目的で住居に侵入。発見された住居人女性を殺害して金庫を強取し、帰宅した別の住居人も殺害した上、証拠隠滅のため放火した(強盗殺人・放火)。さらにその10日後、別の住居で住居人に鉄パイプで暴行を加え負傷させた(強盗致傷)。被告人はこれら一連の犯行において主導的な役割を果たしていた。
あてはめ
本件では、あらかじめ下見を行うなど計画性が認められる。犯行態様は二人がかりで頸部を絞め殺害し、さらに証拠隠滅のため放火するなど凶悪・残忍である。2名の尊い命を奪った結果は極めて重大であり、生活費窮乏という動機に酌量の余地はない。加えて、犯行直後に再度の強盗致傷に及んでいることは、被告人の規範意識の著しい欠如を示している。被告人の年齢や生育歴等の有利な事情を考慮しても、主導的役割を果たした被告人の罪責は誠に重いといえる。
結論
事件番号: 平成11(あ)1115 / 裁判年月日: 平成16年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金員奪取を目的とした2件の強盗殺人等について、犯行態様の冷酷さや動機の身勝手さ、被害結果の重大性及び遺族の厳しい処罰感情を考慮し、死刑の量刑を維持した事例である。 第1 事案の概要:被告人は、所持金に窮し、5日の間に2件の強盗殺人を敢行した。第1事件では、タクシー運転手を果物ナイフで刺殺して金員を…
被告人を死刑に処した第一審判決の科刑を維持した原判決は、やむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
いわゆる「永山基準」を踏襲した死刑選択の判断枠組み。特に「殺害された被害者が2名」のケースにおいて、計画性、残虐性、再犯の有無、主導的役割といった要素が死刑維持の決定的な評価要因となることを示しており、量刑論の起案において各要素を網羅的に検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和58(あ)1768 / 裁判年月日: 平成元年12月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度および絞首による執行方法は憲法に違反せず、犯行態様の残虐性、結果の重大性、被害者感情および社会的影響を総合考慮して、死刑の選択がやむを得ないと認められる場合には、その科刑は正当として是認される。 第1 事案の概要:被告人は、金品強取の目的で包丁を隠し持って隣家に侵入し、被害少女2名を次々に…
事件番号: 平成14(あ)1550 / 裁判年月日: 平成18年9月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の刑事責任を肯定した一審・控訴審の判断を維持し、上告を棄却する。 第1 事案の概要:被告人は強奪の目的をもって、以前勤務していた店を訪れ、包丁を隠し持って侵入した。抵抗する被害者に対し、多数回にわたって執拗に突き刺すなど極めて残虐な方法で殺害した。犯行後には、罪を逃れるために灯油をまいて放火…
事件番号: 昭和59(あ)590 / 裁判年月日: 昭和63年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の感情、社会的影響等の諸要素を総合的に考慮し、刑事責任が極めて重大であってやむを得ない場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、会社資金の使い込みを隠蔽するため、証拠の焼却と逃走資金の入手を計画。その過程で、妨げとなった会社上司及び…