死刑の量刑が維持された事例(栃木の老夫婦強盗殺人等事件)
判旨
被告人の刑事責任を肯定した一審・控訴審の判断を維持し、上告を棄却する。
問題の所在(論点)
強盗殺人、非現住建造物等放火等の罪に問われた被告人に対し、死刑を選択することが罪刑の均衡および一般予防の観点から許容されるか。いわゆる永山基準(最高裁昭和58年7月8日判決)に照らした死刑適用要件の充足性が問題となる。
規範
死刑の適用が検討される重大事案(特に強盗殺人等の死刑選択の可能性がある罪)においては、犯行の性質、動機、態様、特に殺害の手段方法の執拗さ・残虐性、結果の重大性(殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡、一般予防の見地から死刑の適用がやむを得ないと認められる場合に限り、死刑を選択することができる。
重要事実
被告人は強奪の目的をもって、以前勤務していた店を訪れ、包丁を隠し持って侵入した。抵抗する被害者に対し、多数回にわたって執拗に突き刺すなど極めて残虐な方法で殺害した。犯行後には、罪を逃れるために灯油をまいて放火し、証拠滅滅を図った。被告人には前科が認められるとともに、計画性が高く、強欲な動機に基づいている。一方で、公判においては反省の態度を示しているという事情も存在した。
あてはめ
まず、犯行態様は包丁で多数回刺すという執拗かつ残虐なものであり、殺害の確実性を期す強固な犯意が認められる。動機についても、金銭欲のためにかつての雇用主を狙うという卑劣なものであり、酌量の余地はない。放火による証拠隠滅という犯行後の情状も悪質である。遺族の処罰感情も厳しく、社会的影響も無視できない。被告人の更生可能性や反省の情を考慮しても、殺害された被害者が1名であるという点を除けば、極めて重い刑事責任を免れず、死刑の選択を是認した原判決に不合理な点はないといえる。
事件番号: 平成4(あ)824 / 裁判年月日: 平成10年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人、現住建造物放火等の事案において、犯行の計画性、態様の残虐性、結果の重大性、主導的役割、及び犯行後の再犯状況等を総合考慮し、死刑の選択を維持した一審判決を是認した。 第1 事案の概要:被告人は実弟と共謀し、金員強取の目的で住居に侵入。発見された住居人女性を殺害して金庫を強取し、帰宅した別の…
結論
本件における被告人の刑事責任は極めて重大であり、死刑を選択した原判決を維持することは正当である。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
最高裁昭和58年7月8日判決(永山事件判決)が示した9つの要素に基づく死刑選択の判断枠組みを再確認し、被害者が1名であっても、犯行の残虐性や計画性、動機の悪質さが顕著であれば、死刑の選択が許容されることを示した事例。
事件番号: 昭和59(あ)590 / 裁判年月日: 昭和63年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の感情、社会的影響等の諸要素を総合的に考慮し、刑事責任が極めて重大であってやむを得ない場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、会社資金の使い込みを隠蔽するため、証拠の焼却と逃走資金の入手を計画。その過程で、妨げとなった会社上司及び…
事件番号: 昭和58(あ)1768 / 裁判年月日: 平成元年12月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度および絞首による執行方法は憲法に違反せず、犯行態様の残虐性、結果の重大性、被害者感情および社会的影響を総合考慮して、死刑の選択がやむを得ないと認められる場合には、その科刑は正当として是認される。 第1 事案の概要:被告人は、金品強取の目的で包丁を隠し持って隣家に侵入し、被害少女2名を次々に…
事件番号: 平成15(あ)1120 / 裁判年月日: 平成19年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人・現住建造物等放火罪において、利欲目的による計画的かつ冷酷な犯行であり、6名という多数の生命を奪った結果が極めて重大である場合、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、高級宝飾品店を狙い、従業員らを殺害して商品を強取することを計画。従業員6名の手足を縛り休憩室に押し込めた上で、…
事件番号: 平成18(あ)746 / 裁判年月日: 平成20年11月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等1件、強盗殺人未遂1件、現住建造物等放火1件、窃盗等14件を犯した事案において、犯行の態様が極めて執拗かつ残虐であり、1名死亡という結果も重大であるが、被告人が若年で前科がなく反省の情を示している等の事情を考慮し、死刑の選択を回避して無期懲役とした原判決を維持した。 第1 事案の概要:中…