死刑の量刑が維持された事例(館山の放火殺人等事件)
判旨
無差別に深夜の住宅街で連続放火を行い、未必的な殺意に基づき4名を死亡させた事案において、動機に酌むべき点がないこと、放火の危険性と結果の重大性、地域社会に与えた不安等を考慮すれば、死刑の科刑は免れない。
問題の所在(論点)
未必の殺意による殺人および現住建造物等放火が重なる無差別連続放火事件において、殺意の程度や自白・反省等の有利な事情を考慮してもなお死刑の選択が許容されるか。
規範
死刑の適用については、犯行の性質、動機、態様、特に殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性、特に殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極めてやむを得ないといえる場合に、これが許される(永山基準参照)。
重要事実
被告人は、経済的苦境等のうっぷんを晴らすため、放火のスリルと快感を求めて深夜の住宅街等で無差別の連続放火を敢行した。過去に1名を焼死させた認識がありながら犯行を継続し、本件の主要な犯行では強風下で民家に放火。就寝中の家人が逃げ遅れて焼死する高い可能性を認識しつつ(未必の殺意)、結果として4名を殺害し、多数の現住建造物を全焼させた。
あてはめ
動機は利己的で酌むべき点がない。深夜の密集地で強風下に放火した態様は極めて危険であり、死者4名という結果は極めて重大である。以前の放火で死者を出した経験から危険性を十分認識しながら敢行した点において生命軽視の姿勢が顕著である。殺意が未必的であることや、捜査段階での自発的な供述、真摯な反省、前科がないこと等の有利な事情を十分に考慮しても、地域社会に与えた不安や遺族の峻烈な被害感情に照らせば、刑事責任は極めて重大である。
結論
事件番号: 平成16(あ)727 / 裁判年月日: 平成19年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の刑事責任は極めて重大であり、死刑に処した原判決の維持を是認せざるを得ない。 第1 事案の概要:被告人はビル3階にある営業所にガソリンを用意して侵入し、店長らに通告した上で床に撒いて放火した。その結果、店舗を全焼させるとともに、店内にいた5名を死亡させ、他数名に重傷を負わせた。動機は理不尽な…
被告人に有利な事情を考慮しても、第一審の死刑判決を維持した原判決は是認せざるを得ない。
実務上の射程
未必の殺意にとどまる場合であっても、放火という公共危険罪の性質が加味され、被害者数が多数(本件では4名)に及ぶときは、永山基準に照らして死刑が選択される有力な指針となる。特に「過去の加害経験による危険性の認識」が非難可能性を高める要素として重要視される。
事件番号: 平成23(あ)1517 / 裁判年月日: 平成26年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】いわゆる個室ビデオ店放火事件(大阪個室ビデオ店放火事件)において、死者16名という未曾有の被害結果の重大性、避難困難な店舗構造を認識しながら放火に及んだ犯行態様の悪質性、動機の身勝手さを重視し、殺意が確定的でなかったことや前科がない等の事情を考慮しても、死刑の選択はやむを得ないとした。 第1 事案…
事件番号: 平成11(あ)1115 / 裁判年月日: 平成16年4月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金員奪取を目的とした2件の強盗殺人等について、犯行態様の冷酷さや動機の身勝手さ、被害結果の重大性及び遺族の厳しい処罰感情を考慮し、死刑の量刑を維持した事例である。 第1 事案の概要:被告人は、所持金に窮し、5日の間に2件の強盗殺人を敢行した。第1事件では、タクシー運転手を果物ナイフで刺殺して金員を…
事件番号: 平成15(あ)1120 / 裁判年月日: 平成19年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人・現住建造物等放火罪において、利欲目的による計画的かつ冷酷な犯行であり、6名という多数の生命を奪った結果が極めて重大である場合、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、高級宝飾品店を狙い、従業員らを殺害して商品を強取することを計画。従業員6名の手足を縛り休憩室に押し込めた上で、…
事件番号: 平成25(あ)1329 / 裁判年月日: 平成28年2月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法31条、36条に違反しない。また、精神障害(妄想)が犯行の動機形成に介在していても、それが限定的であり、犯行自体が一貫性のある合目的的な行動である場合には、死刑の選択は許容される。 第1 事案の概要:被告人は精神障害による妄想(嫌がらせを受けている等)を抱き、世間へ…