株式会社の株式の相当数を保有する株主が当該株式会社の株式等の公開買付けを行い,その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど当該株主又は当該株式会社と少数株主との間の利益相反関係の存在により意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置が講じられ,公開買付けに応募しなかった株主の保有する上記株式も公開買付けに係る買付け等の価格と同額で取得する旨が明示されているなど一般に公正と認められる手続により上記公開買付けが行われ,その後に当該株式会社が上記買付け等の価格と同額で全部取得条項付種類株式を取得した場合には,上記取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段の事情がない限り,裁判所は,上記株式の取得価格を上記公開買付けにおける買付け等の価格と同額とするのが相当である。 (補足意見がある。)
株式会社の株式の相当数を保有する株主が当該株式会社の株式等の公開買付けを行い,その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,上記公開買付けが一般に公正と認められる手続により行われた場合における会社法(平成26年法律第90号による改正前のもの)172条1項にいう「取得の価格」
会社法(平成26年法律第90号による改正前のもの)172条1項
判旨
多数株主による二段階買収において、公正な手続により公開買付価格が決定された場合、その後の特段の事情がない限り、裁判所は当該買付価格を取得価格とすべきである。
問題の所在(論点)
多数株主との利益相反がある二段階買収において、会社法172条1項に基づき裁判所が「取得の価格」を決定する際、公正な手続を経て定められた公開買付価格をどの程度尊重すべきか、また事後の市場変動を考慮すべきか。
規範
二段階買収における全部取得条項付種類株式の取得価格(会社法172条1項)は、以下の要件を満たす公正な手続により公開買付けが行われた場合、原則として当該買付価格と同額とするのが相当である。①独立した第三者委員会や専門家の意見聴取等、意思決定の恣意性を排除する措置が講じられていること、②非応募株主の株式も同額で取得する旨が明示されていること。この場合、買付価格は取得日までの一般的な市場変動を織り込んでいると解され、取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる「特段の事情」がない限り、事後の市場動向による補正は許されない。
事件番号: 平成23(許)21 / 裁判年月日: 平成24年2月29日 / 結論: 破棄差戻
1 株式移転完全子会社の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,株式移転により組織再編による相乗効果その他の企業価値の増加が生じない場合には,当該株式買取請求がされた日における,株式移転を承認する旨の株主総会決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいうが,それ以外の場合には,株式移…
重要事実
JASDAQ上場会社である抗告人に対し、親会社等(多数株主)が完全子会社化を目的として公開買付け(TOB)を実施した。抗告人は、利害関係のない取締役のみで意思決定し、法務・財務アドバイザーの助言及び第三者委員会の妥当だとの答申を得て、TOBへの応募を推奨した。TOB公表時には、非応募株主からも同額(12万3000円)で全部取得条項付種類株式を用いて取得する旨を明示していた。その後、TOB価格と同額で株式取得の決議がなされたが、反対株主(相手方ら)が価格決定の申立てをした。原審は、TOB後の株価指数上昇を理由に、買付価格を上回る価格を決定した。
あてはめ
本件では、抗告人は多数株主と関係の薄い取締役のみで意思決定を行い、外部専門家や第三者委員会の意見を得るなど、意思決定の恣意性を排除する措置を講じていた。また、TOBに応募しなかった株主に対しても同額で取得する旨が事前に明示されていた。このような「一般に公正と認められる手続」により形成された12万3000円という価格は、多数株主と少数株主の利害が適切に調整され、取得日までの予測可能な市場変動も織り込まれたものといえる。本件において、TOB後の市場全体の株価上昇は「予期しない変動」等の特段の事情には当たらないため、原審が恣意的に価格を補正したことは合理的な裁量を超え不当である。
結論
全部取得条項付種類株式の取得価格は、公開買付価格と同額の1株につき12万3000円とするのが相当である。
実務上の射程
キャッシュ・アウト(二段階買収)における価格決定において、M&A指針等に沿った公正な手続(MEBO指針準拠等)が履践されている場合の裁判所の介入を限定した重要な射程を持つ。反対株主による買取請求(117条、182条の4)にも類推適用される実務上の指針である。
事件番号: 平成22(許)30 / 裁判年月日: 平成23年4月19日 / 結論: 棄却
1 会社法782条1項所定の吸収合併等によりシナジー(組織再編による相乗効果)その他の企業価値の増加が生じない場合に,同項所定の消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,当該株式買取請求がされた日における,吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有し…
事件番号: 平成22(許)47 / 裁判年月日: 平成23年4月26日 / 結論: 破棄差戻
会社法782条1項所定の吸収合併等によりシナジー(組織再編による相乗効果)その他の企業価値の増加が生じない場合に,同項所定の消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,当該株式買取請求がされた日における,吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したで…
事件番号: 令和4(許)8 / 裁判年月日: 令和5年5月24日 / 結論: 棄却
会社法144条2項に基づく譲渡制限株式の売買価格の決定の手続において裁判所が上記売買価格を定める場合に、上記譲渡制限株式の評価額の算定過程において上記譲渡制限株式に市場性がないことが考慮されていることはうかがわれないなど判示の事情の下においては、DCF法によって算定された上記評価額から非流動性ディスカウント(非上場会社…
事件番号: 令和4(許)11 / 裁判年月日: 令和5年10月26日 / 結論: 破棄自判
吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って当該吸収合併に反対する旨の議決権の代理行使を第三者に委任することを内容とする委任状を上記会社に送付した場合において、次の⑴及び⑵の事実関係の下では、上記株主が上記会社に対して上記委任状を送付したことは、会社法785条2項1号イにいう、吸収合併等をするため…