1 会社法782条1項所定の吸収合併等によりシナジー(組織再編による相乗効果)その他の企業価値の増加が生じない場合に,同項所定の消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,当該株式買取請求がされた日における,吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいう。 2 会社法782条1項所定の吸収合併等により企業価値が増加も毀損もしないため,当該吸収合併等が同項所定の消滅株式会社等の株式の価値に変動をもたらすものではなかった場合には,株式買取請求がされた日における吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格を算定するに当たって参照すべき市場株価として,同日における市場株価やこれに近接する一定期間の市場株価の平均値を用いることは,当該事案の事情を踏まえた裁判所の合理的な裁量の範囲内にある。 (1につき,補足意見及び意見がある。)
1 吸収合併等によりシナジーその他の企業価値の増加が生じない場合に消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」の意義 2 株式買取請求がされた日における吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したであろう価格を算定するに当たって参照すべき市場株価として,同日における市場株価やこれに近接する一定期間の市場株価の平均値を用いることが,裁判所の裁量の範囲内にあるとされる場合
(1,2につき)会社法785条1項,会社法786条2項
判旨
組織再編に反対する株主の株式買取請求における「公正な価格」は、原則として、反対株主が買取請求をした日を基準とし、同日における「組織再編がなかったならばその株式が有したであろう価格(ナカリセバ価格)」をいう。
問題の所在(論点)
1. 株式買取請求における「公正な価格」を算定するための基準日はいつか。2. シナジーが発生しない場合の算定方法、および市場株価の参照の可否が問題となる。
規範
1. 公正な価格とは、組織再編によりシナジーが生じない場合、原則として「株式買取請求がされた日」における「ナカリセバ価格」をいう。2. 上場株式の場合、市場株価が客観的価値を反映していない等の特段の事情がない限り、市場株価を算定の基礎とすることが合理的である。3. 吸収分割等が株式価値に変動をもたらさない場合には、買取請求日の市場株価や近接期間の平均値を用いることも裁判所の合理的な裁量の範囲内である。
事件番号: 平成22(許)47 / 裁判年月日: 平成23年4月26日 / 結論: 破棄差戻
会社法782条1項所定の吸収合併等によりシナジー(組織再編による相乗効果)その他の企業価値の増加が生じない場合に,同項所定の消滅株式会社等の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,当該株式買取請求がされた日における,吸収合併契約等を承認する旨の株主総会の決議がされることがなければその株式が有したで…
重要事実
上場会社である相手方は、認定放送持株会社への移行を目的として、全事業を完全子会社に承継させる吸収分割(本件吸収分割)を決定した。反対株主である抗告人は、会社法785条5項の買取請求期間の満了日に株式買取請求を行った。本件吸収分割は完全子会社への承継であり、シナジーは発生せず、企業価値や株主価値を毀損・変動させるものでもなかった。
あてはめ
1. 株式買取請求により法律上当然に売買契約と同様の関係が生じ、株主が退出意思を明示した時点であることから、買取請求日を基準日とするのが合理的である。2. 本件ではシナジーが生じず、企業価値の毀損も認められないため、買取請求日における市場価格がそのまま「ナカリセバ価格」を反映しているといえる。3. したがって、買取請求日(期間満了日と同日)の市場終値である1294円を公正な価格とした原審の判断は裁量の範囲内として是認される。
結論
本件株式の「公正な価格」は、株式買取請求がされた日の市場株価である1株1294円と定めるのが相当である。
実務上の射程
組織再編における反対株主の退出機会の保障と、再編の影響を排除した経済的価値の確保を目的とする。シナジーがある場合にはその分配も含むが、本件のような組織再編に伴う価値変動がないケースでは、請求時の市場価格が有力な指標となる。実務上は、基準日を「請求日」と特定した点に重要な意義がある。
事件番号: 平成23(許)21 / 裁判年月日: 平成24年2月29日 / 結論: 破棄差戻
1 株式移転完全子会社の反対株主がした株式買取請求に係る「公正な価格」は,原則として,株式移転により組織再編による相乗効果その他の企業価値の増加が生じない場合には,当該株式買取請求がされた日における,株式移転を承認する旨の株主総会決議がされることがなければその株式が有したであろう価格をいうが,それ以外の場合には,株式移…
事件番号: 平成26(許)39 / 裁判年月日: 平成27年3月26日 / 結論: 破棄自判
非上場会社において会社法785条1項に基づく株式買取請求がされ,裁判所が収益還元法を用いて株式の買取価格を決定する場合に,非流動性ディスカウント(当該会社の株式には市場性がないことを理由とする減価)を行うことはできない。
事件番号: 平成28(許)4 / 裁判年月日: 平成28年7月1日 / 結論: 破棄自判
株式会社の株式の相当数を保有する株主が当該株式会社の株式等の公開買付けを行い,その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど当該株主又は当該株式会社と少数株主との間の利益相反関係の存在により意思決定過程が恣意的になる…
事件番号: 平成23(許)7 / 裁判年月日: 平成24年3月28日 / 結論: 棄却
1 振替株式について会社法116条1項に基づく株式買取請求を受けた株式会社が,同法117条2項に基づく価格の決定の申立てに係る事件の審理において,同請求をした者が株主であることを争った場合には,その時点で既に当該株式について振替機関の取扱いが廃止されていたときであっても,その審理終結までの間に社債等振替法154条3項所…