債務整理を依頼された認定司法書士(司法書士法3条2項各号のいずれにも該当する司法書士)は,当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が司法書士法3条1項7号に規定する額を超える場合には,その債権に係る裁判外の和解について代理することができない。
債務整理を依頼された認定司法書士が,当該債務整理の対象となる債権に係る裁判外の和解について,司法書士法3条1項7号に規定する額を超えるものとして代理することができないとされる場合
司法書士法3条1項6号イ,司法書士法3条1項7号,
判旨
認定司法書士が裁判外の和解を代理できる範囲は、債務者が受ける経済的利益や債権総額ではなく、対象となる個別の債権の価額(140万円以下)を基準に決まる。したがって、個別の債権額が140万円を超える場合には、当該債権に関する裁判外の和解を代理することはできない。
問題の所在(論点)
認定司法書士が裁判外の和解を代理できる範囲を画する「紛争の目的の価額」は、①債務者が受ける経済的利益の額か、②債務整理の対象となる債権の総額か、あるいは③個別の債権の価額か(司法書士法3条1項7号の解釈)。
規範
司法書士法3条1項7号に基づき、認定司法書士が裁判外の和解を代理できる範囲は、簡裁民事訴訟手続の代理権(同項6号イ)と同一の範囲、すなわち「紛争の目的の価額」が140万円を超えないものに限られる。この価額は、委任者・受任者・相手方の三者にとって客観的かつ明確な基準であるべきであり、和解成立後に判明する「債務者が受ける経済的利益の額」や、相手方が認識困難な「債権総額」ではなく、「個別の債権ごとの価額」を基準として判断すべきである。
重要事実
債務者らは認定司法書士である上告人に債務整理を依頼した。対象となった個別の債権の中には、利息制限法に基づく引き直し計算後の貸付金元本額や過払金額が140万円を超えるものが複数存在していた(本件各債権)。上告人は、債権額が517万円余りの債権について、債務者が将来利息を付して493万円を分割払いする内容の和解を成立させた。この和解により債務者が受ける経済的利益(弁済計画の変更による利益)は140万円以下であったため、上告人は代理権の範囲内であると主張した。
あてはめ
認定司法書士の代理権は簡裁民事訴訟手続の付随業務としての性質を持つため、その範囲は簡裁の管轄(個別の債権ごとの給付を求める訴訟)と合致すべきである。また、代理権の有無は業務開始時に客観的に判断できる必要があるが、「債務者が受ける経済的利益」は和解成立時まで判明せず、「債権総額」は相手方が容易に認識できない。本件では、個別の債権額がいずれも140万円を超えていたことから、上告人に代理権は認められず、これを行って報酬を受領したことは不法行為を構成する。
結論
認定司法書士が代理できるのは、個別の債権の価額が140万円以下のものに限られる。本件各債権の価額は140万円を超えており、上告人の行為は代理権の範囲を逸脱した違法なものである。
実務上の射程
司法書士の代理権の限界を「個別債権基準」で確定させた重要な判例。答案上は、弁護士法72条違反や公序良俗違反(民法90条)が問題となる場面で、司法書士の権限の有無を検討する際の解釈基準として活用する。特に多重債務事案における引き直し後の元本額や過払金請求額が基準となる点に留意する。
事件番号: 平成8(オ)2177 / 裁判年月日: 平成12年3月24日 / 結論: 破棄自判
建物の利用に関する契約に基づく甲請求権と同契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権である乙請求権とが同一建物の利用に関して同一当事者間に生じた一連の紛争に起因するものであるという事情の下においては、甲請求権について訴訟上の和解をすることの委任を受けた弁護士は、乙請求権について和解をすることの具体的委任を受けていなくても、…