建物の利用に関する契約に基づく甲請求権と同契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権である乙請求権とが同一建物の利用に関して同一当事者間に生じた一連の紛争に起因するものであるという事情の下においては、甲請求権について訴訟上の和解をすることの委任を受けた弁護士は、乙請求権について和解をすることの具体的委任を受けていなくても、右訴訟上の和解において、乙請求権を含めて和解をする権限を有する。
契約に基づく請求権について訴訟上の和解をすることの委任を受けた弁護士が同契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権について和解をすることの具体的委任を受けていなくても右訴訟上の和解において右損害賠償請求権を含めて和解をする権限を有するとされた事例
民訴法55条2項
判旨
訴訟代理人が和解の特別委任を受けている場合、和解の対象に訴訟物以外の権利が含まれていても、それが当該訴訟の対象たる権利と同一の紛争に起因するものである限り、代理権の範囲に含まれる。
問題の所在(論点)
和解の特別委任(民訴法55条2項1号)を受けた訴訟代理人の権限は、訴訟物以外の権利についての放棄や清算条項の合意にも及ぶか。特に、個別的な委任がない場合の判断基準が問題となる。
規範
民事訴訟法55条2項1号に基づく和解の特別委任を受けた訴訟代理人は、当該事件の訴訟物のみならず、訴訟物以外の権利であっても、それが当該訴訟事件の対象たる権利と同一の基礎から生じた一連の紛争に起因するものであれば、これを含めて和解(権利の放棄・清算条項の合意)をする権限を有する。
重要事実
一審被告と訴外会社は、保養所の管理運営及び費用負担に関する本件契約を締結したが、運営を巡り紛争が生じた。訴外会社は費用の水増し請求を理由に損害賠償を求め、一審被告は未払費用の支払を求めて各々提訴し、両事件は併合された(前訴)。訴外会社の訴訟代理人弁護士は、和解の特別委任を受け、「双方間に何らの権利義務がない」旨の放棄清算条項を含む和解を成立させた。その後、訴外会社は本件契約に起因する別個の損害賠償請求権(本件請求権)を被上告人に譲渡。被上告人は、前訴の訴訟代理人には本件請求権を放棄する権限はなかったとして、支払を求めた。
あてはめ
本件において、前訴で争われた各請求権と、後に譲渡された本件請求権は、いずれも本件保養所の利用に関して同一当事者間に生じた一連の紛争に起因するものであるといえる。このように紛争の基礎が同一である以上、訴訟代理人は、前訴において本件請求権について具体的に放棄の委任を受けていなかったとしても、客観的にみて当該請求権を含めて和解(清算)する権限を有していたと解される。
結論
訴訟代理人の和解権限は本件請求権にも及び、放棄条項は有効である。したがって、本件請求権は既に消滅しており、請求は棄却される。
実務上の射程
訴訟代理人の権限の範囲に関する重要判例。答案では、和解に清算条項を設ける際、訴訟物以外の周辺的な紛争についても代理権が及ぶ範囲を画定する基準(同一の基礎、一連の紛争)として活用する。包括的な解決を目指す実務的要請を考慮した判断といえる。
事件番号: 平成26(受)1813 / 裁判年月日: 平成28年6月27日 / 結論: 棄却
債務整理を依頼された認定司法書士(司法書士法3条2項各号のいずれにも該当する司法書士)は,当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が司法書士法3条1項7号に規定する額を超える場合には,その債権に係る裁判外の和解について代理することができない。