選択的に併合されている甲、乙両請求につき、甲請求の一部を認容しその余の請求を棄却した第一審判決に対し、被告が控訴し、原告が控訴、附帯控訴しなかつた場合において、控訴審は、第一審判決の右認容部分を取り消すべきであるとするときには、乙請求につき審理判断すべきであり、乙請求を全部理由がないと判断すべきときにのみ、原告の請求を全部棄却しうると解すべきである。
選択的に併合されている甲、乙両請求につき甲請求の一部を認容しその余の請求を棄却した第一審判決に対し被告が控訴し原告が控訴、附帯控訴しなかつた場合において控訴審が第一審判決の右認容部分を取り消すべきであるとするときと乙請求についての判断の要否
民訴法227条,民訴法385条,民訴法386条
判旨
選択的併合に係る請求の一方を認容した第一審判決に対し、被告のみが控訴した場合、控訴審が当該認容部分を取り消すときには、第一審で判断されなかった他方の請求についても審理判断すべきである。
問題の所在(論点)
選択的併合において、第一審が認容した一方の請求(請求B)を控訴審が取り消す場合、原告が控訴や附帯控訴を申し立てていなくとも、第一審で判断されなかった他方の請求(請求A)が控訴審の審判対象に含まれるか。
規範
選択的併合において、原告の意思は一請求が認容されれば他を撤回し、一請求が棄却されれば他についても審判を求めるというものであり、この意思は全審級を通じて維持される。したがって、第一審が認容した請求につき控訴審が理由なしと判断して取り消す場合、第一審で棄却(実質的には審判の必要なしとして判断不要)された他方の請求は、不服申立てがなくても当然に控訴審の審判対象となる。
重要事実
原告は被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求(請求A)と債務不履行に基づく損害賠償請求(請求B)を選択的併合として申し立てた。第一審は請求Bを一部認容し、請求Aを含むその余の請求を棄却した。これに対し、被告のみが控訴し、原告は附帯控訴をしなかった。控訴審は、請求Bには理由がないと判断して第一審の認容部分を取り消したが、請求Aについては原告から控訴等がないことを理由に審判対象外として判断を示さなかった。
あてはめ
選択的併合の性質上、一方の請求が認められない場合に他方の請求の審判を求める原告の意思は、併合形態を変更しない限り控訴審でも維持される。本件において、控訴審が第一審の認容した請求Bを理由なしとして取り消す以上、予備的に審判を求めていた請求Aの当否を判断しなければならない。原告が控訴等をしていないことは、不服申立ての対象となる「敗訴」が確定していない(選択的併合の一方が認容されたことで目的を達している)以上、他方の請求を審判対象から外す理由にはならない。
結論
控訴審は、第一審の認容部分を取り消す際には他方の請求についても審理判断すべきであり、これを判断せずに請求を全部棄却した原判決には法令の解釈適用の誤りがある。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
選択的併合における控訴審の審判対象の範囲を確定した重要判例である。答案上は、一方の請求のみが認容された場合の「一部敗訴」の有無、及び附帯控訴なしに他方の請求を審判できる「移審の範囲」と「申立限度(処分権主義)」の論理として構成する。なお、実質的には予備的併合と同様の処理がなされる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和43(オ)943 / 裁判年月日: 昭和48年4月5日 / 結論: 棄却
一、同一事故により生じた同一の身体傷害を理由として財産上の損害と精神上の損害との賠償を請求する場合における請求権および訴訟物は、一個である。 二、不法行為に基づく一個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたつては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないとき…
事件番号: 昭和26(オ)222 / 裁判年月日: 昭和26年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が原告の請求の全部を認容する判決を言い渡した場合、当該判決は請求の一部を認容する判決には該当せず、上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)に対し、金2万1900円およびこれに対する昭和24年6月25日からの年6分の遅延損害金の支払を求めた。第一審裁判所は、こ…